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人工膝関節置換術ー術後合併症ー

TKA後の合併症予防は、関節の機能のみでなく全身状態にも関わる重要な要素です。
文献をもとにまとめました。



参考文献

島田昇. 人工膝関節置換術後患者に対する理学療法管理. Journal of Physical Therapy Practice and Research, 2019(28).

術後の合併症

術後の代表的な合併症として
・深部静脈血栓症
・膝蓋骨脱臼
が挙げられます。


深部静脈血栓症(DVT)

DVT は その発生頻度は 44 ~80%と報告されているほど、頻度の高い合併症です。血栓が心臓や肺などに飛ぶことで、肺塞栓症などの重篤な疾患につながることがあるため、その予防や早期発見が重要です。

Homans徴候は、DVTの簡易的な評価です。
膝を軽く押さえ足関節を背屈させ、腓腹部に疼痛が生じれば陽性となります。
簡易的な評価であり、リハ職でも簡単にできますね。
ただ、最近では感度・特異度ともにあまり高くないらしく、重要視されていないようです。

血液検査の D ダイマー(正常値:1.0 μ g/ml 以下)は感度が高いと報告されており、その経過を追うことは非常に重要です。特にある時急上昇した際は疑わしいと考えられます。

その他、把持痛、色調変化、下肢静脈怒張を含む所見と総合的に評価する必要があります。介入した際に、疑われる際には主治医へ静脈エコー検査や静脈㐀影検査を依頼することが望ましいでしょう。初回の介入から、全身の状態を評価しておくことが重要となります。

静脈血栓症に関してはこちらもどうぞ。

Katsunobu Sugihara, et al. Diagnostic Methods for Deep Venous Thrombosis,Symptom・Ultrasound・Phlebography・Contrast
CT・D-dimer. Jpn J Rehabil Med 2021;58:765-770


膝蓋骨脱臼

TKA 後の膝蓋骨脱臼も起きやすいとされている合併症です。
・コンポーネントの内旋設置
・転倒などに伴う膝関節の捻転
・外反膝の既往
が要因として挙げられます。
外側支帯を含む大腿外側の軟部組織による外側牽引力が加わることで脱臼することが多いため、膝関節屈曲可動域運動は外側への牽引力が高くなり外側脱臼を誘発しやすいです。
屈曲可動域拡大を目的とした介入時には、屈曲運動よりもむしろ、大腿外側軟部組織の柔軟性改善のための介入が必要です。


術後の合併症に関しては、全身の状態やその変化などをリハ職が確認していく必要はあります。医師や看護師さんとも密に情報を交換しておくことが重要です。
そういった意味では、初回の介入から膝や動作の評価のみでなく、全身状態の確認をしっかり行なっていく必要がありますね。

ではでは。

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