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前十字靭帯損傷とスポーツ復帰ー

前十字靭帯は、スポーツ時などに起こりやすい怪我です。実際にどのような期間でスポーツ復帰を目指すことが重要でしょうか。


ACL損傷とスポーツ復帰

スポーツ復帰の時期

スポーツ復帰の時期に関しては、今も議論されている領域です。
「理学療法ガイドライン 第13章 前十字靱帯障害理学療法ガイドライン
https://cms.jspt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/2nd edition/p745-780_13.pdf
では、文献がなくスポーツ復帰に関する判断材料がないと記載があります。



スポーツ復帰までの期間と差

復帰の時期(術後6ヶ月、9ヶ月)での機能の差について記載された文献がありました。

Kristen W, et al. Anterior Cruciate Ligament Rehabilitation and Return to Sport: How Fast Is Too Fast?. Arthrosc Sports Med Rehabil. 2022 Jan 28;4(1):e175-e179.doi: 10.1016/j.asmr.2021.10.027.eCollection 2022 Jan.

・早期リハビリテーションと従来のリハビリテーションを比較し、早期プログラムでは、患者が早期に筋力を回復できる
・大腿四頭筋の筋力と大腿四頭筋の四肢対称性指標について検討し、早期リハビリテーションの方が両指標とも高い傾向を示したが、4ヵ月、6ヵ月、8ヵ月、12ヵ月、24ヵ月時点では、早期群と従来群との間に臨床的に有意差は認められなかった。
・加速プロトコルと標準プロトコルの間で、膝関節弛緩、IKDCスコア、膝関節損傷・変形性関節症アウトカムスコア(KOOS)、片脚ホップテストについて検討し、膝関節の弛緩、活動レベル、患者の満足度、機能的パフォーマンスについては、2つのプロトコールの間に差は認められなかったが、IKDCとKOOSについては、3ヵ月後と6ヵ月後に統計学的に有意な差が認められた。


これらのことから
・保存的アプローチの利点としては、治癒時間の延長、リハビリの初期段階での負担軽減、スポーツ復帰に伴う傷害や再傷害のリスクの減少などが考えられる。
・保存的アプローチの限界としては、リハビリの早期段階での筋力向上の減少、リハビリプログラムとタイムラインの遵守不足の可能性、スポーツ復帰 の長期化(経済、精神面での影響)、医療費の増加などが挙げられる。
・早期アプローチの利点は、筋力向上が早いこと、スポーツ復帰が早いことであり、精神的健康、職業上の機会、医療費に影響を与える可能性がある。
・早期アプローチの欠点は、再断裂の可能性が高くなること、移植腱の成熟と治癒に十分な時間がかからない可能性があること、スポーツ復帰を急ぐあまり他のケガをする可能性があること、コンディショニング、筋力、神経筋のコントロールなど、以前のレベルのパフォーマンスに戻る時間が短くなることである。


スポーツ復帰の目安

また、同文献では
スポーツ復帰にはROMの正常化、痛みがないこと、腫脹・熱感がないことだけでなく、検査バッテリー、患者報告によるアウトカム指標をリハビリテーションの過程を通して追跡し、患者の信念、心理的な準備、運動恐怖症などをモニターする必要がある
と記載されています。


より高い負荷の練習を行ってくアスリートは

・膝関節のROM制限なし
・疼痛や腫脹がない
・大腿四頭筋、ハムストリングス、大殿筋、および中殿筋のハンドヘルドダイナモメータ、アイソキネティックテスト、または10回反復最大値テスト(使用可能な機器によって異なる)等による四肢の対称性が75%~85%
・60°ROMを通した片脚スクワットの10反復
・片脚(コウノトリ)バランステスト(対側の90%以上)
・Y字バランステスト(対側の90%以上)

をクリアする必要があると記載されています。

また、これらの決まった方法だけでなくアジリティなどのチェック、対人との接触への練習などスポーツ特性に合わせた練習を随時行い、状態を検査していく必要があります。


スッポーツ復帰までの道のりは長く険しいと思いますが、再断裂の予防なども含めた慎重な判断が必要ですね。明確な基準がないため、各動作の正確性などを加味しつつ、復帰時期を検討していく必要がありますね。

ではでは。


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