論文を集めた本を読むときに気をつけるべきこと ータイトルが何を指しているのかー
本を読んでいて注意しないといけないことというのに最近一つ気がついた。当然のことだと自然にこなしている方も大勢おられると思うが、整理するために一度文章にしてみたので共有する。要するに全編書き下ろしでない場合、別々の場面で書かれた論文がただ並べられているということも多いので、章ごとの関係性を理解していないと混乱するというだけのことである。
『火山列島の思想』という本は、益田勝実の論文集であったが、タイトルは一つの論文のものを本のタイトルにもあてがっており、本全体の意匠にあったタイトルを筆者は別に考案していたとあとがきにも書いてあった。このように、本のタイトルとの結びつきを考えながら読んでいると、その所為で意味がわからなくなるようなことがある。また、柳田國男の『地名の研究』も別々の時期に別々の出版先に出された論考の集まりで、根底のテーマは一貫しているが、同じ内容が繰り返し出てくるところがあり、もし本の構造を理解していなければ、また主旨を見失うことになりかねない。複数の著者による論文集などは、一章読み終わるごとに読む側も一区切り入れて、一旦頭を整理するなどすると思うが、単一の著者による複数の論考を集めたものの場合、それらの論文同士の関係性、ほんのタイトルが全体の意味合いに相応しいものなのか、その一つの論考のタイトルだけを指すのかという点に注意しなければならない。
読者として気をつけるべき点は、やはり一章から読み始める前に、まえがき、あとがき、ネットでの検索などを通して、その本の書かれた背景や、どのような意図で一冊にまとめられて出版されているのかを確認する作業をこなすべきである。また、その章のはじめかさいごかに書かれているどのような媒体で最初に出版されたのか、その年月日がいつなのかを見ることも欠かせない。
出版側への要望としては、小説の場合、短編集のタイトルには『〇〇、ほか』などとしていることがあるが、そのように読者にわかりやすく表記してくれると良いのかもしれない。しかしそうしていない理由があるのかもしれないが、それは私は知らないのであまり深入りしないことにする。