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最近のヘイトスピーチまとめ 毎日新聞記事から

▼最近のヘイトスピーチの実態をまとめた記事が、2019年2月5日付の毎日新聞夕刊に載っていた。(井田純記者)

この日本社会で、「匿名」でどんな暴力が行われているのか、という視点でまとめてあった。適宜改行。見出しは〈匿名ヘイトスピーチと戦うには/野放しのネット空間/侮辱罪適用ハードル高く「法整備急げ」

▼たとえば埼玉県済生会川口総合病院の男性麻酔科医。「反日野郎は死んでしまえ」「韓国は犬」→院長名の謝罪文。

たとえばニッカウヰスキー関連会社、北海道ニッカサービスの営業部長。野党の国会議員を「国賊」「朝鮮人」「日本人全て韓国に対して嫌悪感を感じている」→ホームページに謝罪文。

たとえば高野山真言宗総本山金剛峯寺の僧侶。「韓国人3人寄ればドクズかな」→寺が謝罪。

▼社会的な立場のある人が、「匿名」で目も当てられない暴言を垂れ流している実態が明らかになってきた。日本には「プロバイダー責任制限法に基づく発信者情報開示請求」という仕組みがあり、今年になってようやく〈この制度を利用してネット上のヘイトスピーチが刑事犯罪として認められた〉。

〈川崎市の在日コリアンの少年を匿名ブログで侮辱した大分市在住の男(66)に対し、川崎簡裁が侮辱罪で科料9000円の略式命令を出し、同月確定した。少年の代理人によると、ネット上のヘイトスピーチに侮辱罪が適用されたケースはきわめて珍しい。〉

▼この〈ネット上のヘイトスピーチに侮辱罪が適用されるケースはきわめて珍しい〉という現状が、この記事の肝(きも)である。

〈この男は昨年1月、「如何にもバカ丸出しで、面構えももろチョーセン人面」などと少年の実名を挙げて侮辱。代理人は、ブログ管理会社やプロバイダーに発信者情報開示を求めてブログ主を特定。男が「侮辱する意図」を否定したことを受け、神奈川県警川崎署に侮辱罪にあたるとして告訴した。略式起訴されたのは昨年12月だった。〉

▼これは大きな出来事だった。じつは、時間的にギリギリの案件だったのだ。

〈代理人の神原元弁護士は「侮辱罪の公訴時効は1年で、複数の弁護士が動いてぎりぎり間に合った形だ。この裏では、ネット上のヘイト被害者の多くが泣き寝入りを余儀なくされている」と、現行法で刑事罰に至るまでの「ハードルの高さ」を指摘する。

同じく代理人の師岡康子弁護士は会見で「人としてあり得ない侮辱を受けた被害の大きさに比べて、科料9000円という刑罰は軽すぎる」と訴えた。さらに「侮辱罪は親告罪で、国が負うべきヘイトスピーチ解消の義務が被害者に丸投げされているようなもの。法的整備が必要なのは明らか」と強調した。〉

▼罵倒された少年の気持ちを想像するといたたまれない。インターネットは「便利な道具」だと、つくづく思う。インターネットに触れると、いとも簡単に人の心が劣化して、醜く変わってしまう法則、メカニズム、力学が、これからもっと明らかにされていくだろう。インターネットは、それらの知恵を共有する「便利な道具」にもなりうる。

朝刊と夕刊を出しているどの新聞社にもいえることだが、こうした記事を、「やわらかい」夕刊だけでなく、「かたい」朝刊でも載せてほしいものだ。

(2019年3月6日)

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