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〈公開保育レポート①〉12/23 別海くるみ幼稚園(北海道野付郡)

スマートエデュケーション大澤です。
12/23 に北海道野付郡の別海くるみ幼稚園にて公開保育を実施しました。
今回の玉川大学 大豆生田先生をお迎えしての公開保育は、前園長の加藤泰和先生が企画されたものです。9月8日に泰和先生が急逝され、中止も検討しました。しかし、いつも前進してきた泰和先生の意志を継承していこう、という先生方の強い思いから、予定通り開催することになりました。

講師の大豆生田先生も含め、皆さまいろいろな思いを持って参加されたと思いますが、くるみ幼稚園の子どもたちや先生にとっては、普段通りの1日。そのなかにたくさんの素敵ポイントが詰まっていました。大豆生田先生のご講演も含め、当日の様子をレポートします!

オープンルームの進化:「コーナー」から「拠点」へ

別海くるみ幼稚園さんは毎年公開保育を実施しています。毎年参加するたびに変化を感じるのですが、今回は室内・屋外ともに、これまでになく環境が大きく変化していました!

最も印象的だったのがオープンルームの進化です。くるみ幼稚園では、朝のお集まりをした後、好きな場所で自由に遊ぶことができます。
外遊びをする子もいれば、オープンルームやホールで遊ぶ子もいます。これまでこのオープンルームには、折り紙・ごっこ遊び・ブロック・絵本・お絵描き・製作など、いろいろな「コーナー」が用意されていました。

★ 2023年9月の様子:いろいろな興味関心を持つ子が、それぞれの場所で遊んでいました。

(左)マクドナルトごっこの後ろでは小学校ごっこをしている子が。
その横にはアイスクリーム屋さんの環境も見えます。

そしてここからが2024年12月23日のオープンルームの様子です。

オープンルームは主に2つのテーマに絞って遊びの環境が用意されていました。一つは「佐渡ヶ島」。もう一つは「アイドルごっこ」です。
「なんでテーマが2つに減ってしまったの?」「遊びの選択肢が減って、環境が貧弱になってしまったのでは?」という疑問には後ほどご回答するとして、まずは遊びの様子を見てみましょう。

佐渡ヶ島プロジェクト

佐渡ヶ島系YouTuber「けえ」の動画を見て佐渡ヶ島に興味を持った子どもたちから生まれたプロジェクト。
佐渡ヶ島をテーマにした遊びがたくさん生まれ、佐渡金山、佐渡ヶ島の特産品、名物のたらい舟、佐渡の伝統芸能「鬼太鼓」の太鼓など佐渡にまつわるありとあらゆるものが作られていました。
12月の生活発表会では、子どもたちの作品を使って佐渡ヶ島の紹介をしたり、佐渡ヶ島クイズやオリジナル手遊び歌などを披露したそうです。

佐渡ヶ島への興味から生まれた作品、そして生活発表会で使用した作品が展示されていました。
佐渡ヶ島のジオラマ。
窓枠に貼られているのは「佐渡ヶ島」の形を折り紙で作ったもの。

生活発表会後も佐渡ヶ島への愛は収まることなく、新しい遊びが次々と生まれています。この日は、ペープサートを作って佐渡ヶ島の映像に合わせて物語を作る遊びを楽しんでいました。
オープンルームにはプロジェクターコーナーが常設されており、好きな映像をいつでも自由に投影することができます。この環境があることで、光や影の遊びに興味を持ち、そこからペープサートの遊びが生まれたようです。
環境が子どもたちの遊びにどれほど大きな影響を与えているかがよくわかるエピソードです。

アイドルごっこ

歌と踊りが大好きな子どもたちを中心に、アイドルごっこが盛り上がっています。
12月の生活発表会で年少さんがダンスを披露。そこからアイドルごっこは他の学年にも広がり、現在は異年齢のグループで衣装作りやステージ発表を楽しんでいます!オープンルームでは、子ども達が衣装作りに夢中になっていました。

衣装作り。自分のイメージするものをゼロから作り上げています!

衣装ができたので、早速ステージ発表へ!園内には「ステージが始まるので、ホールに来てください!」というアナウンスが。自分のデザインした衣装で、みんなアイドルになりきっています!

お客さんもノリノリで見ていました!

ステージを降りたら、観客一人ひとりにファンサービス!子ども達の自信たっぷりの表情を目にして、「憧れ」の気持ちが子どもの心が育つ原動力になることを強く感じました。

実は子どもたちの心に火をつけたのは、先生たちでした。子ども達に本気で遊んでもらうために、大人の本気を見せよう!!そんな思いから、先生が「KURUMI FRUITS ZIPPER」というアイドルグループを結成。本気の衣装と本気のダンスを子ども達に披露。そこから子ども達の遊びがグッと広がっていったそうです。 
子どものワクワクに大人もワクワクし、一緒に好きな世界を探求していく。本当に素敵です。

実は、佐渡ヶ島プロジェクトで行われていたプロジェクターとペープサートの遊びは、元はこのアイドルごっこから生まれたものでした。自分もアイドルになりたい。でも踊るのは恥ずかしい・・・。そんな思いを持っていたA君がペープサートでアイドルになることを思いつき、自分が心地よいと感じる方法で表現を楽しみ始めたそうです。表現手段を自由に選ぶことができる環境も素晴らしいなと思いました。

結局くるみ幼稚園のオープンルームはどう変わったのか?


冒頭でも紹介した通り、昨年まではオープンルームにいろいろな「コーナー」が用意されていました。もちろん子ども達の興味関心がベースになっていますが、基本的には大人が設定したもので、子ども達はその「場所」で遊ぶという形式でした。
いろいろな遊びのコーナーを用意することで、子ども達は自分で遊びを選び、いろいろなものと出会うことができます。大人が設定したコーナーも、もちろんとても大切です。おそらくこのような形で「コーナー」を作られている園さんが多いのではないかと思います。

今年、くるみ幼稚園ではその「コーナー」から「拠点」へと進化しました。
「拠点」とは、子どもたちが自由に遊びを展開し、変化を生み出すことができるベース(基地)となる場所です。「コーナー」は大人が想定した範囲での遊びに限定されますが(ブロック・折り紙・お店やさんごっこなど)、「拠点」では子どもの興味やニーズによって、遊びがどんどん変化していきます。
例えば佐渡ヶ島プロジェクトでは、製作を楽しんだかと思えば、ペープサートで物語を作ったり、外に出かけていって自然物を使って佐渡ヶ島を表現したりすることもあります。アイドルごっこでも、オープンルームで衣装を作ったりアイドル会議をしたり、ホールのステージで踊りを発表したりと、「拠点」をベースにしながらもいろいろな遊びが生まれ、展開していきます。「コーナー」よりも自由度が高く、その都度、用意すべき素材や道具、環境が変わっていくのが「拠点」の特徴です。大人の想定外の遊びが見られることも多くあります。

つまりオープンルームは「コーナー遊び」のスペースとしてではなく、佐渡ヶ島プロジェクトとアイドルごっこの「拠点」として活用されるようになったため、昨年とは大きく環境が変化したのです。おそらくしばらく経ったら、オープンルームの使い方はまた変化しているのではないかと思います。

ちなみに製作遊びのコーナーやごっこ遊びのコーナーは、別の教室へと移動となりました。コーナー遊びの環境がなくなったわけではありません。好きな遊びにより没頭できる環境になり、また園庭環境も大きく変化したことで、外でできる遊びも増えました。

「コーナー遊び」の時代よりも、子どもの主体性や創造性がより強く発揮される環境に進化したことで、先生の役割も変わりました。アイドルごっこでも、先生は衣装作りの支援、ステージ発表の準備、ステージで踊るアイドル達を手拍子で全力応援するなど、短時間でいろいろな役割を担っていました。時には支援し、時には子どもと一緒に盛り上がりと大忙しですが、子ども達の創造力や表現力、探究心などが昨年とは比にならないくらい爆発している様子を見ると、「子ども主体の保育」をまさに体現されていると感じました。

グラウンド型の園庭から自然あふれるASOBIOへ

もう一つ、大きく変わったのが園庭です。
こちらが2024年9月の園庭。

あえて遊具はおかず、子ども達は目一杯身体を動かしたり、砂遊びや水遊びを楽しんでいました。

その園庭がこんなにデコボコな園庭に大変身しました!季節柄、緑はありませんが築山ができ、植物が増え、大きな丸太なども置かれています。この日は雪がたくさん降ったので、子ども達は雪遊びに夢中になっていました。

植物が増えたことで、夏は虫などの生き物が多く集まるように。
凸凹が増えたことで、遊びがより面白くなりました。
昨年できたばかりで、まだ使われていなかった「坂エリア」。
今年はすごい勢いで子ども達が滑り降りていました。

園庭にもいくつかの「拠点」が見られました。秘密基地を作ったり、雪で造形遊びをしたり。園庭にいろいろな素材が溢れることで、子ども達の遊びはより自由に、創造的になりました。

「子どもの声を聞く」ことを何よりも大切にしているくるみ幼稚園。子どもが話す言葉を聞くことはもちろん、子どもの行動や表情から子どもの思いを感じとり、子どもにとって最善の環境を作る。そういった思いがあるからこそ、常に環境が進化し続けているのです。

子どもたちの遊び・学びの道具としてのICT導入

自然が溢れ、いろいろな素材もたくさん用意されているくるみ幼稚園でですが、そういった素材や図鑑・絵本と同じように、ICTも子どもたちの遊びや学びの「道具」として用意されています。

公開保育当日もいろいろな場所でタブレットを使う様子を目にしました。しかし、よく見ないと、どこでタブレットが使われているかがわかりません。アナログの素材がたくさんあるなか、本当に目立たないところでICTが活用されていました。
タブレットを使うことが目的ではなく、表現したいことがあるから使う、紙で作りたいものがあるから使う、というように、ハサミやノリと同じ「道具」として子どもの遊びの環境に馴染んでいました。

当日のICT活用の詳細については、下の画像をタップしてドキュメンテーションをご覧ください!

子ども達のICT活用の様子は↑の画像をタップ!

カフェテリア形式の給食

くるみ幼稚園では食事も大切なコミュニケーションの場です。以前はホールがカフェテリアになっていましたが、新しくランチルーム専用のお部屋ができました。子ども達は11:30〜12:30の間の好きなタイミングでランチルームに行き、食事をとります。給食の先生とお話をしながら、自分の食べられるものを食べられるだけ盛り付け、好きな場所に座る。楽しみながら食事をすることを大切にしています。

昼食をとったかどうかは、顔写真付きのマグネットで把握。
ランチルームが満員の時は、廊下に並んで席が空くのを待ちます。社会としっかり接続していますね。

給食の先生もしっかりと子ども達と向き合う

今回、私たち参加者は本堂で子ども達と同じ給食をいただきました。くるみ幼稚園の栄養士さんや調理師さんは、食事を作るだけの存在ではなく、他の先生と同じように保育に関わっています。子どもたちと日々コミュニケーションをとりながら、その成長を見つめつつ、食に関する子ども達の興味関心・探究心を支えています

今回は給食メニューの納豆そぼろ丼から始まった「大豆」の探究活動のエピソードをご紹介くださいました。くるみ幼稚園では、園にいるすべての人が子ども達の学びの環境となって活躍しています。

くるみ幼稚園では、給食の先生もしっかりと保育を語ることができます!

見どころ盛りだくさんの午前の部!
午後はホールで、当日の保育の振り返りと大豆生田先生の講演会、パネルディスカッションなどがありました。

午後の様子は、次回のレポートをお楽しみに!!


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