見出し画像

<公開保育レポート>11/22 認定向山こども園

スマートエデュケーションの尾高です。
2024年11月22日(金)に仙台市の向山こども園にて公開保育を実施しました。
仙台駅から車で約15分というアクセスの良さでありながら、2万平方メートルという広大な敷地をもつ向山こども園。子どもたちは四季折々の豊かな自然のなかで、さまざまなことを体験しています。

季節によって変化する園庭や、子どもの興味関心に合わせて多様な道具や素材が用意されている保育室。先生方は子ども達の遊びを見守り、子ども達と毎日語り合いながら、質の高い遊びができる環境作りや仕組み作りに取り組まれています。

現在園舎建築中につき園庭はいつもより狭めですが、
走ったり、上ったり、くぐったり、滑り降りたりとダイナミックな遊びが展開されています。


保育室には子どもたちの作品や多様な素材があふれています。「自分の手で作って遊ぶ」ことを大切にしていることがよくわかります。


年少の保育室。3歳児もとにかく作る!!電車の世界が広がっていました。

素晴らしい保育環境や地域社会とのつながりなどのユニークな取り組みにより、雑誌や書籍などで取り上げられることの多い向山こども園ですが、今回の公開保育はスマートエデュケーションとの共催ということで「『こどもの道具』としてのICT」をテーマとして掲げ、午前は保育環境や子どもたちの遊びの様子の見学、午後は保育におけるICT・AI活用についての講演会を実施しました。

【午前の部】

⚫︎子ども達の拠点

子ども達がそれぞれ過ごしやすい『拠点』を作って遊んでいる」とおっしゃっていた副園長の木村先生。
「拠点」とは、子どもたちが自由に遊びを展開し、変化を生み出すことができるベース(基地)となる場所です。よく似た言葉に「コーナー」があります。いわゆる「コーナー遊び」の環境を用意している園さんは多いと思いますが、「コーナー」と「拠点」は異なるものです。「拠点」は子どもたちの興味やニーズに応じて、遊びが次々と変化します。「コーナー」よりも大人のコントロールが効かないので、大変なところもありますが、子どもたち主体の面白い遊びがどんどん生まれる良さがあります(「拠点」についての考え方は、ぜひ木村先生のこちらのブログをご覧ください!

【アイドルごっこの拠点】
この日もいろいろな場所に子どもたちの遊びの拠点があったのですが、ひとつ遊びのなかでのICT活用がよくわかる拠点があったので、ご紹介します。

年長クラスでアイドルグループを結成した子どもたちがいました。アイドルごっこの拠点には、衣装作りができるさまざまな素材や道具が用意されています。

そこにはiPadも置かれています。子どもたちは「チョキペタ」というコラージュができるアプリを使って、推しメンバーのうちわを製作していました!「チョキペタ」では写真を撮って取り込み、指でトリミングをしたり、大きさを自由に変えたりすることができます。また好きな模様で写真を飾ることもできます。簡単に、しかし何度も試行錯誤しながらデザインできて、思いを叶えることができるのがICTの利点です。子どもたちは自由に推し活グッズを作って、楽しんでいました。

ステージも開催されていました。この時に使われていた曲は、なんとこのアイドルグループのオリジナル楽曲。子どもたちのイメージやキーワードをもとにAIに歌詞を作ってもらい、さらにその歌詞を音楽生成ができるAIツールに先生が取り込み、音源を作ったそうです

なぜ既存の曲を使わないのかを質問したところ、
「既存の曲だと既に完成されているため、子ども達の遊びを発展させていくことが難しく、枠にはまってしまう。この子達の歌詞に合う曲を作りたかったから」
と担任の先生がおっしゃっており、ここでAIを利用できるのかと感心しました。

「コーナー」遊びでは、塗り絵やブロックなど遊びが限定的な印象がありますが、アイドルごっこの拠点では、推し活グッズ作りあり、振り付けの練習あり、ステージ発表あり、と子どもたちの活動は実にさまざま。衣装や推し活グッズの場所をベースとしながらも、いろいろな場所に出かけていって遊ぶ姿もありました。
そんな姿を見て「拠点」とは子ども達にとって居心地の良い場であり、遊びを発展していける場所だということがよくわかりました。さらに先生方の支援やICT・AIの手を借りて、遊びを発展させていくことで、よりクリエイティブな活動やより良い循環が生まれていると感じました。

【iPadもあるけど、トンカチもある!】

本当にたくさんの遊びがあって紹介しきれませんが、もう一つ印象的だった遊びの姿をご紹介します。

トンカチを使ってクリスマスのオーナメントづくりをしている子どもたちがいました。

「子ども達がトンカチを使って危なくないですか?」という声が聞こえてきそうな場面ですね。

子ども達が勝手に使っていれば危ない場面かもしれませんが、先生が使い方を丁寧に説明し、見守りながら活動をしていました。
遠ざけることは簡単ですが、それが本当に子ども達のためになるのか、遊びの幅や経験の幅を狭めることにならないのか、先生方も日々考え、試行錯誤されているとのことでした
それだけにとどまらず、明日はもっと木の材料が必要になるだろうと予測し、翌日の準備も!

向山こども園には環境チームがあり、子どもたちの遊びや興味関心に応じて必要な環境を整えています。この日は保育補助のスタッフさんがオーナメント用の素材を用意されていました。必要なものをすぐに差し出すことができる環境の豊かさに感動しました。

【こどもの道具としてのICT】
最後に、もう少しだけこどもの遊びの中でのICT活用をご紹介します!

音への興味から、楽器の音を録音し編集して楽しむ子どもたち。音の高低や再生速度を変えて、お気に入りの音を作っています。ICTを使えば編集も簡単!
※ 使用アプリ:おとねんど

自分たちが作ったピタゴラスイッチを、アニメーションで再現したい!先生やお友達と試行錯誤しながら工夫して作っていました。
※使用アプリ:mobie (モビー)


ジュース屋さんごっこでも、iPadを使ってメニュー表などを作っていました。子どもたちの中で、ここはアナログ!ここはデジタル!とこだわりがあるようです。
※使用アプリ:おとえ

【午後の部】

講演会に入る前に、ランチタイムです。
園内にあるカフェで美味しいお弁当を用意してくださいました!園内のカフェには地域の方も気軽に訪れているそうです。地域に開かれた園を目指す向山さんらしい取り組みです。

牛タンカレー!本当に美味しかったです!!

ここから午後の部のご紹介です。
今回は宮崎県にある社会福祉法人  協愛福祉会の理事長  横山和明先生をゲストスピーカーにお招きし、講演をしていただきました。宮城県の学校法人と宮崎県の社会福祉法人。なかなか交わる機会のない組み合わせとなりましたが、スマートエデュケーションが公開保育やセミナーなどを企画するうえで「越境」は重要なキーワード。興味深いトピックがたくさん生まれ、学び多き時間となりました。

【向山こども園でのICT活用:向山こども園 副園長 木村創先生】

向山こども園では「先生の仕事の道具として」また「こどもの遊びや学びの道具として」のICT活用を積極的に進めています。
とはいえ決してICTを使うことが目的ではなく、先生にとっては子どもたちと向き合う時間をより充実させるため、子どもたちにとっては体験がより豊かになり、よりクリエイティブな遊びが生まれる環境の一要素としてICTを導入しています。

使用しているツール

(先生の道具として)
・Googleカレンダー:先生方のスケジュールや日々の動きを共有
・Googleフォーム:記録の共有・保護者アンケート
・ChatGPT:アイディア出し、配布物の文章の作成や修正など

(こどもの道具として)
・カメラなどiPadの標準アプリ
スマートエデュケーション「KitS(きっつ)」
また、最近ではこどもたちのアイデアをChatGPTに投げて、劇のイメージを共有するための画像生成や音源生成などに活用しているそうです
(※音源の作成は、Suno AIのアプリを使用→https://suno.com/

子どもたちの間でイメージを共有し、話し合いを進めるためにAIで生成した画像


【向山こども園でのICT活用: 協愛福祉会 理事長  横山和明先生】

協愛福祉会さんは宮崎・福岡・東京で認定こども園を運営されています。今回はそのなかで最もICT活用の進んでいる宮崎県 中央ヴィラこども園の事例をご紹介いただきました。

まずは自己紹介。趣味のお料理はプロ級の腕前!!会場がどよめいていました。

子どもの主体性を大切にしている中央ヴィラこども園。2022年の夏から子どもの遊び・学びの道具としてスマートエデュケーションのKitS(ICTツール)を導入しています。iPadの使い方を一通り説明したら、あとは子ども達に任せ、使いたいときに自由に使える環境を作っています。(2023年7月に開催した中央ヴィラこども園の公開保育の様子はこちら

ガソリンスタンドごっご(3歳児)
「しんごうきピコリ」の絵本や車のエンブレムが大好きな子どもをきっかけに、クラスの子どもたちの興味がガソリンスタンドに広がっていきました。

実際にガソリンスタンドに足を運び、お仕事を少しだけ体験させてもらったところ、園に帰ってガソリンスタンドごっこが始まりました。

クラス環境にガソリンスタンド設置

ガソリンスタンドを始めるも、お客さんが誰も来ず……。そこで子どもたちは、コラージュができる「チョキペタ」でチラシを作って配ったり、アニメーション作成アプリ「moboie(モビー)」を使ってガソリンスタンドのCMを作ったり。

画面をタップすると「心を満タンにします!」という音声が流れます。

CM効果で少しずつお客さんが増え、しばらくするとガソリンスタンドは大繁盛だったそうです。

向山こども園でも中央ヴィラこども園でも同じアプリが使われていましたが、子どもたちの活用方法は全然違います。なぜ同じアプリで異なる使い方が生まれているかというと、それはiPadの周辺に、それぞれの子どもの興味関心に基づいた豊かなアナログ環境があるからです。
ハサミで多種多様なものを作ることができるように、iPadも上手に導入すれことで、多種多様なものを作り出すことができます。
今回2園さんの取り組みを見聞きして、改めて道具としてのICTの意義や可能性を実感しました。

【パネルディスカッション】
最後はスマートエデュケーション代表の池谷、KitS開発責任者 ニフュユスも含めてパネルディスカッションを行いました。参加者の皆様からたくさんのご質問をいただきましたが、木村先生がnoteでご回答くださっています。ぜひこちらをご覧ください。
公開保育で寄せられた質問に答えて:改革を進めるためには?
公開保育で寄せられた質問に答えて:子どもの主体性を発揮する保育とは?
公開保育で寄せられた質問に答えて:AI活用の可能性と課題

【木村先生の公開保育レポート】
木村先生も開催園のお立場から公開保育レポートを書いてくださっています。ぜひご覧ください!!
スマートエデュケーションさん主催 公開保育レポート
スマートエデュケーション 公開保育の振り返りシンポジウムを振り返って:「子どもの道具としてのICT」を考える

最後に、今回の公開保育では向山こども園の環境の素晴らしさ、保育の質の高さを改めて感じる1日となりました。
向山こども園の先生方、当日ご参加いただきました先生方、レポートをご覧いただきました皆様、ありがとうございました!














いいなと思ったら応援しよう!