ともだち、クモ太
ある朝の通勤電車。
おもに黒い色で埋め尽くされた空間。
目の端に、ツツーっと点が下りてきた。
3mmほどの小さな細いクモが、吊革あたりから糸をひいてるところだった。
あ。クモ太だ。
クモは、クモ太。
スズメは、チュン子。
セキレイは、セキ子。
そして、トビ夫とトビ子。
トンビは中学生の頃に名付けた。
実家の川にまたがる電線の上に
いつもトビ夫が、とまっていて。
トビ子をずっと待っているんだと
勝手に話を作っていた。
ネーミングセンスは
いつまでたっても変わらない。
* * *
家のクモ太は5mm位で
ピョンピョコ跳ねる。
家グモは殺生するものではないというし
小さめならそんなに圧が無いので
見かけてもそのままにしている。
むしろ声を掛ける。
おはよう、クモ太。
今日はそんなとこにいるの?
だめだめそっちは、ぬれちゃうよ(お風呂)。
ああ上れなくなったのね(マグカップ)。
唐突に出会うとビクっと驚く時もある。
向こうはなんとも思ってないだろう。
でもピョンピョコ自由に生きる気配は
ささやかな安らぎになっている。
* * *
電車で会った、あのクモ太。
じっと横目で追ったけれど
黒に馴染んで消えてしまった。
あれからどこに行ったのか。
クモ太も出勤中だったりして。
うわ!混んでるわーとか言って。
鞄や肩を乗り継いで
遠くに旅に出たのかな。
海が見たい…とか言って。
画像は、昔100円ショップで見つけたハロウィンの飾りです。何個かセットのもの。
飾りとクモ太の共演があったはず、と
写真を探したら4年前でした。
(小さいですが虫が苦手な方はお気を付けください↓)
次に会うのはいつだろう。
気まぐれで、冒険好きの
小さなともだち。