億を売る妻 No.1 目的を最短で実行しようとする
私(otto)がまだサラリーマン時代、
仕事の関係で田舎の町で営業まわりをしていた頃です。
妻に言うと怒られますが、
想像よりも遥かに田舎で、
こんなへんぴな所で独身の私はこの先どうなってしまうのか初めは不安でした。
でも地元の小さな会社の外まわり営業でまわるうちに、
田舎の温かさに触れ少しずつ知り合いが出来てきました。
その中にいつもお世話になっていて、
話を聞いてくれるある会社の事務のおばちゃんがいました。
特に用は無かった時でも、
私が事務所の入り口で「おはようございます!」と言うと、
そのおばちゃんは
「コーヒー出したるし奥座っときー!」
と
いつも当たり前のように私を迎えてくれました。
そんなある日、
おばちゃんといつものように話していると、
おばちゃんが突然誰かを指差しながらこう切り出しました。
「あんた彼女おらんって言うてたやろ?この人の娘さん紹介してあげよか?」
とおばちゃんが指差した先にはそのお母さんと思しき人が立っていました。
そしてそのお母さんは大きく手を左右に振りながら、
「ウチの娘は辞めといた方がいいよ」
と申し訳なさそうに言っていました。
でも私はこの町でプライベートな友達が欲しかったこともあり、
「是非紹介してほしいです!」
といいながら
そのお母さんに汚い字でケータイ番号を書いて名刺を渡しました。
後日、それほど期待せずに待っていた所、
その娘さんから電話が掛かってきました。
電話口で彼女はとてもテンション高くこう切り出しました。
「あんたの生まれた場所私行ったことあるんよ!
めっちゃいい所やなあ 大好きやねん!
でもこの町もめっちゃいい所があるから連れていってあげるし遊ぼう!」
と言ってくれ、
次回に会う約束をしました。
この町で初めてプライベートの友達が出来るかもと、
私も少し胸を躍らせていました。
はじめて会った日、
その瞬間の事は今でもはっきりと覚えています。
私が待ち合わせ場所に到着すると、
女性がこちらへすたすたと駆け足で向かってきて、
私の車のドアを開けいきなり
「ジュースいる?」
と聞いてきたのです。
「えっジュース?あっうん..」
と突然のことに理解できませんでした。
この人は初めて会った私に対して、
いきなり私のジュースの心配をしてきたのです。
はじめまして◯◯です。
と言うつもりだった私からするととても不思議でした。
ただそれが返って彼女との距離がスッと近くなったような気がしました。
そして私のジュースをコンビニに買いに行き私の車の助手席に乗り込んできました。
その後は「これいいだろ!ここいい場所だろ!」とゴリゴリに自分が好きな場所と、
自分の住む町の素晴らしさを満面の笑みで推し進めてきてくれました。
その日私は今までになかったほどにずっと笑い続ける事しか出来ませんでした。
ジュースいる?と聞いたことも、
今になって思うのは、
おそらく彼女は出会いの前から、
とにかく早く自分の好きな所に連れていき、
良さをわかってもらう為に会う前から
のだと。
彼女は
のだろうと思います。