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とりあえず、かき玉汁
人生を裏切らないものといえば、努力・お金・筋トレである。(諸説あり)
努力もお金も筋トレも、確かに私たちの人生をより豊かに、より強固に支えてくれる。
しかし、付け焼き刃ではいけない。数ヶ月〜数年単位での積み重ねが効いてくるものばかりだから、ハードルはそこそこ高いと言えよう。
正直「もうちょっとお手軽なやつないの……?」って思いませんか。
思ってる人がいたら、こっそり手を挙げてみてほしい。
だよね、わかる。
ううん、全然、恥ずかしいことじゃない。
裏切らない存在、もうちょっと簡単に手に入らないかな〜って思うとき、あるよね。
ふと心が不安定になったり、恋人にフラれたり、仕事がうまくいかなかったり、イヤイヤ期の子どもと向き合う元気がなかったり……
そんなとき、
今から始めて間に合うかーーーー!!今私を支えてくれよ!!今!!って思うこと、あるよね。
秒で寄り添ってくれる、裏切らない純度500%ぐらいのやつ、欲しいよね。
あなただけじゃない。言わないだけで、み〜んな思ってる。私もそう。
……あるよ。
身近でお手軽なやつ。
![](https://assets.st-note.com/img/1719920017444-Yw1nJrIlIS.jpg?width=1200)
とりあえず出汁温めて、好きな野菜くたっと煮て、そこに溶き卵入れてみて。
いちいち出汁なんてとっていられない?
いいのいいの、出汁パックでもいいの。前の日昆布を水につけとくだけでもいいの。難しく考えなくていいの。
野菜切るのが面倒?
いいのいいの、適当に手でバリバリってちぎったり、キッチンバサミでちょきちょきすればいいの。
野菜がくたっとするまで待てない?
オーケー、野菜にこだわる必要なんてない。もずくとか豆腐とか、そのまま入れるだけでもいい。生でも食べられるものなら、秒で準備整うよ。
味噌は好みのもので大丈夫。
特別なものなんて必要ない。思い立ったらすぐできる。
あなたが気をつけなきゃいけないことはただ一つ。
「卵を均一になるまでよくかき混ぜる」、これだけ!!
適度に沸いた鍋の中にさ、完全に溶きほぐした卵を、ゆっくり流し込んでみて。
菜箸を伝わらせて、丁寧に、丁寧に。
天女の羽衣のような、柔らかくしなやかなレモンイエローの曲線、できた?
そしたらそれ、器に盛って、食べてみて。
最高じゃない……?
即時寄り添い力&裏切らない率、ぶっちぎり500%じゃない?
かき玉汁、それは心を照らしてくれる太陽。
それは幸福。
それは希望。
ふんわり柔らかな卵は、完璧に優しく寄り添ってくれる天使そのものだ。心身が弱ったあなたを、決して裏切らない。
くたくたになった野菜(あるいは具材)も、ぜひ味わってほしい。
卵の優しいベールをまとった素材そのもの味わいは、ありのままのあなたを丸ごと肯定してくれる。噛むたびに、活力を与えてくれる。
かきたま汁を食べ終わったころ、あなたは心も体も温まり、人生捨てたもんじゃないなと思えているはずである。
ビタミンとミネラルとタンパク質の最強タッグ。
ヘルシーでどんな具材も受け入れてくれる深すぎる懐汁。
安価で手軽かつ日常的な味わいなのに、おいしくて栄養あるとか、もう……もう……
最&高 !!!!
ちなみに我が家では、人生詰んでるってわけじゃなくても、おいしくて手軽にタンパク質も足せるので、朝食でのかき玉汁登場頻度が異常に高い。つい、卵入れたくなっちゃうんだよな。
朝は極力おかずを作りたくない関係で、汁物に野菜担当をお願いしている。
(つまり、鍋にぎゅうぎゅう野菜を詰め込んでいる。もはや汁っぽい煮物レベル。)
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キャベツ適当すぎて恥ず。
卵サイドからすると「いやもうちょっと自由に泳ぎ回れる空間くれよ」と文句のひとつも言いたくなるだろうけど、悪条件下でもきちんと自らの役割をこなしてくれる。ほんと卵って、しごできすぎるんよ……
コンビニエンスかつカインドネスに寄り添ってくれるだけではなく、長期的に見ても普通に心身にGOODな存在、それがかき玉汁なのだ。
===
一度、卵を適当にチャチャっと溶いただけの、黄身と白身が分離した状態でかき玉汁を作ったことがある。
卵は、鍋にサラサラ落ちるはずもなく、塊のままドボン! と鍋底に沈んだ。
後悔したけれど、時すでに遅し。箸でかき回しても、理想的なかき玉汁とは程遠く、卵は豆腐と見間違うような白い塊と化してしまった。
ほんの少しの罪悪感と、ズボラに作ってしまった自分への憤りで、胸が痛んだ。しかし、自己肯定感を下げたそのかき玉汁を待ち受けていたのは、意外な反応だったのだ。
「イェーイ! 俺の卵、超でかい〜!」
「ずるいーーーーーー!!!」
子、歓喜。
白い塊を巡り、奪い合いが繰り広げられたのである。
え……?
そういう感じ?
なーんだ。
子どもたちの反応に、思わず拍子抜けして、笑ってしまった。
ふわんふわんでなければダメ、なんてことは、これっぽっちもなかった。もっとラフに、自由に向き合ってよかったんだ。
かき玉汁は、私の思い込み、あるいは呪いを解いてくれた。
そう、かき玉汁の懐の深さは、多方面で発揮されるのである。
「卵を均一になるまでよくかき混ぜる」
先ほど唯一の注意点として挙げたこの工程は、確かにふんわりとした完成度の高いかき玉汁を作るコツではあるけれど、正直あまり気にしなくていい。
そうなると、もはや注意点ゼロ。気が楽!!!
片栗粉を加えると、ふんわり卵の成功率も上がるらしいが、私は面倒なので特に加えない。ベースはあくまでも、普通の味噌汁である。
人生とりあえず、かき玉汁。
心が少しギュッとなっているときは、ぜひ試してみてください。
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#1 秋の始まりと、ドラゴンフルーツ
#2 希望のピザトースト