【東大】受験の学力と研究の才能は別物である
大学院生になってから、国内外の学会に参加する機会が何度かあった。他大学の研究者や学生と交流して気づいたことだが、受験学力が高いからといって、必ずしも研究でも成果を挙げているとは限らない。もちろん最低限(早慶くらい?)の受験学力は求められるが、それ以上であれば必ずしも偏差値には比例しないのだ。
例えば学会では、優秀学生発表賞や優秀学生論文賞を受賞するのが東大生ばかりというわけではなかった。むしろ、北海道大や名古屋大といった地方旧帝の学生ほうが多いような印象も受ける。また優秀とされる40代、50代の研究者も東大出身とは限らない。逆に自分の周りの東大院生であっても、研究に苦手意識を持っていたり、苦痛でしょうがないといった感じの人も多い。
さすがにノーベル賞クラスになると、大半が東大京大出身者であるものの、長崎大(下村脩)や神戸大(山中伸弥)、徳島大(中村修二)、埼玉大(埼玉大)といった旧帝未満の大学出身者も一定いる。また東大出身のノーベル賞受賞者であっても、その大半が地方公立出身であり、超進学校出身者は少ない。このことからも、「受験エリート」が必ずしも研究の才能があるとは限らないのだと分かる。
東大生だからといって仕事ができるとは限らないとは世間でよく言われがちな言説であるが、東大生だからといって研究ができるとは限らないというのまた事実である。
この記事では、受験学力と研究の才能にどうして差異が生じるのか、その理由をいくつか考えてみる。
理由①受験は抽象思考が必要だが、研究は具体的な作業が求められるから
受験勉強は抽象的な思考力が求められる。数学や物理がまさにその典型であり、問題を解く際には、自分の頭の中で複雑な概念や論理を組み立てたり、見えない構造をイメージしながら進める必要がある。
一方で研究は具体的な作業が中心である。自分が工学部に所属しているからというのもあるが、やっていることはプログラミングを組んでシミュレーションをしたり、特定の自治体でケーススタディを行ったり、培養実験をしたりなど、具体的に手を動かす作業である。手を動かす前に準備としての思考は必要であるが、先行研究を引っ張ってきて実験計画をたてたり、実験に必要なプログラミングを勉強したりと、割と具体的な思考をしている気がする。
このように研究では、具体的な思考が求められるため、東大生の得意な抽象思考は活きにくいのかもしれない(理学部で物理や数学をやっている人はまた違うかもしれないが)。
理由②受験は広く浅くが求めらるが、研究は狭く深くであるから
東大理系に合格するためには5科目すべてで高いレベルになる必要がある。したがって東大生は、自分が興味がない科目であっても、割り切って勉強できる人が多い。
一方で研究は狭く深くが求められる。深めるためにはその狭い分野に対する興味がないと続かない。逆に言えば、その分野のことさえ分かっていれば、別に古文漢文ができなくても、難しい数学の問題が解けなくても構わないのである。
東大生は幅広い勉強をする過程で要領よく効率的に勉強する手法を身に着けがちだ。一方で研究では地道にやり続けることが求められており、必要な能力が異なるのだ。
理由③研究室や教授のこれまでの実績に依存するから
研究室や教授には2パターンある。放任して学生がやりたいようにやらせるタイプと、学生の研究計画をある程度決めてしまうタイプだ。
優秀な東大生であっても、前者のような研究室に入ってしまうと何をしたらいいのか分からなくなる人も多い。一から自分でやる必要があるため、ある意味で力はつくが、研究レベルは高くならない。パワハラなど問題のある研究室に入ってしまう場合も、研究どころではなくなるだろう。
一方で後者の場合、教授や研究室として代々やってきた研究があり、その延長上で学生のやることが決まっている。そのため実績が出しやすかったり、教授や先輩のノウハウをもとに丁寧に指導を受けられる。東大京大など超難関大学以外にも、優秀な教授や研究室は存在する。受験学力はそこまでの学生でも、そのような研究室に所属した場合は、成果を上げやすいと思う。
このように、院生レベルで成果を出せるかは、研究室や教授の性質による部分も大きいと思う。さらにその後研究者になっても、院生時代の研究内容や教授とのつながりに立脚するので、どの研究室に所属するかが大事である。
おわりに
本記事では、受験学力と研究の才能が別であることを、3つの理由から考察した。工学分野でこのような傾向が見られる以上、文学や社会科学ではさらに受験学力との関連性は薄いだろう。
しかも、研究で成果を出すような「非」東大生は、東大生ほど受験勉強に打ち込んできたわけではないため、中高時代から部活や趣味・恋愛も満喫してきており、リア充なタイプも多いのが特徴である。
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