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東大教授の出身属性を調べる【地方公立が多いのか?】

東大生は首都圏出身や進学校出身者の割合が高く、人材の多様性に乏しいといわれがちだ。では、東大の教員にはどのような特徴があるのだろうか。

以前こちらの記事で、ノーベル賞受賞者には超進学校や東京出身者が少ないことから、研究の才能と受験学力は必ずしも一致しない可能性を指摘した。

同様に、なんとなくではあるが、東大の教員に関しても地方公立出身者が多いイメージがある。逆に、首都圏出身や超進学校出身者は、官僚や民間の一流企業に就職してそうである。

そこで今回は、自分が所属する学科の教員(あまりの人気がない理系の学科。教授、准教授、助教、講師など全教員を考慮)の出身地や出身高校といった属性を調べ、東大合格者の属性と比較することで、東大教員に見られる特徴を探った。

(本来なら有意差検定をする必要があるが、この記事では省略している。よって統計的には正しくないことを言っているかもしれない)

1.出身地

まず図1は、東大教員の出身地と出身高校の種類ごとの割合である。出身地は東京、神奈川・千葉・埼玉、その他という3分類、出身高校の種類は私立・国立、公立という2分類の、計6分類で示している。図2、図3は東大合格者全員の出身地と出身高校の種類を示している。

東京出身者はどちらも34%程度と大きな割合を占めており、東大合格者と東大教員の違いは見られない。地方出身者の占める割合は、東大合格者が44.4%に対して、東大教員が51.7%なので、少し東大教員のほうが多いといえる。

また私立・国立(基本的に中高一貫)出身者は、東大教員では58.5%、東大合格者60.5%とこちらもほとんど差が見られなかった。

図1:東大教員の出身地・出身高校の種類(2024年)
図2:東大合格者の出身地(2024年)
図3:東大合格者の出身高校比率(東京大学新聞社2020年新入生アンケートよりhttps://www.todaishimbun.org/enquate2020_1_20200504/)

2.出身高校のレベル

続いて出身高校のレベルである。高校のレベルを分類する基準として偏差値があるが、

①「首都圏の中学受験」や「高校受験向けの駿台模試」など、対象を限定した偏差値ランキングは信頼性がある。一方で、全国の高校を同じ基準で比較するような偏差値ランキングはほとんどない(一部存在するが、灘高校の偏差値を78、膳所高校を76とするなど、実感と合わない)。
②東大教員が卒業した30年~40年前と今とで、偏差値が変動しているが、昔の偏差値を追うことができない。

以上の理由から偏差値ではなく、高校を卒業した年の「東大合格者数」で高校をレベル分けした。これだと北野高校など、東大より京大に強い高校を過小評価しているが、「どれだけ東大が身近な環境にあるか」を知るという意味では、これで良いだろう。80人以上受かっている高校は超進学校と見なしてよい。

結果は図4、図5のようになった。東大教員は東大合格者に比べて、東大合格者数が4人以下、5人~9人、80人以上の高校出身者の割合が高い。逆に、20~79人の間の高校出身者の割合は顕著に少ない。

80人以上の合格者を輩出する超進学校から東大に進学した者には、科学オリンピックのメダリストなど、際立った「天才」がいると考えられる。彼らは研究への適性や興味が高く、アカデミアに進む傾向が強い。逆に、東大合格者数が10人以下の高校(往々にして地方の公立校など)から来た者も、地元で「天才」として扱われてきたことで、アカデミアでやっていく自信を得やすいのかもしれない。身近に高学歴の人物が少ないため、就職活動に関する情報を十分に得られない場合もあるだろう。

これに対して、合格者数が中間的な進学校の出身者は、常に二番手という立ち位置になりやすい。そのため、アカデミアへ進むよりも就職という道を選ぶ傾向があるのかもしれない。

図4:出身高校の東大合格者数別の東大教員の割合(2024年)
図5:出身高校の東大合格者数別の東大合格者の割合(2021年)


まとめ

東大教員は、地方出身者や有名進学校ではない高校の出身者が多いのではないかというイメージがあったが、東大合格者と大きな差はなさそうだということが分かった。

これは私の学科の教員(理系の傍流学科)に限定した結果であるため、学科や学部による違いもあるかもしれない。これもなんとなくのイメージだが、法学部・経済学部といった文系の学部の教員は、東京の超進学校出身者が多そうな気がする。


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