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雪月 音弥
2014年5月17日 14:37
「ねぇ、雪やこんこって歌、あるじゃない? あれって本当かしら?」 妻の泰子が突然そんなことを話し始めた。「うん?」「犬は喜び庭駈けまわりって歌。うちのモモは、いつも寒くてブルブル震えてるじゃない。雪が積もってるところを走り回ったりするとはとても思えないわ」「ああ、そうだね……」 確かに我が家の飼い犬は、冬になると寒さでブルブル震えている。顔もなんだか情けない顔をして、見ていると哀
2014年5月6日 11:34
おはようございます。雪月音弥です。私が所属しているmixiコミュニティ「創作が好きだ!」で、GW特別企画として、桜をモチーフにした創作をしようという企画が、本日締め切りでして。そのために創作した短編をUPいたします。どうぞ宜しくお願いいたします。画像は、同じくmixiコミュニティ「創作が好きだ!」で活動されている、しちみ黒猫さんからお借りいたしました。この場を借りてお礼申し上げます。
2014年5月1日 23:45
青空に向かって手を伸ばす。 太陽はとても眩しくて、遠い。 この手は、届かない。 あの人と同じ。 「……また、ここにいたのか」 不意をついて聞こえてきた、呆れたような優しい声。慌てて私は体を起こす。「……なぁんだ。先生か」 「なぁんだ、じゃないよ。屋上は立入禁止。何回目だよ。ったく……」 先生はブツブツこぼしながら、面倒臭そうに右手で頭をかいた。その様子がなんだかおかしくて、
2014年5月1日 23:42
「雨降りそうですよ」 三上圭子が窓の外を眺めながら言った。確かにどんよりとした雲が広がり、薄暗くなっている。「洗濯物干して来ちゃったのに」 彼女の顔も、どんより曇っている。「木下さん、これから出かけるんですよね? 傘は?」 持って来てません、と木下良美は首を左右に振った。 通行人が手のひらを上に向けて立ち止まっている。ポツポツと降り出したようだ。「この曇り方だと、結構降りそう。持ち主