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チャレンジをしないチャレンジをしようと心に決めた 恥の多い人生でした

恥の多い人生でした。「できるかもしれない!」と思ったら最後、無謀なチャレンジを繰り返してきたからだ。ゆえに、私の部屋にはその残滓ともいえるガラクタが散逸している。

例えば、押し入れのなかにはあるのは、カシオ製のフルキーボード。「論理設計屋」としてライター業をやっているとおぼしき側面があるのでフィーリングに浸ることのできる趣味を持ったらどうだと思ったのだ。

結局、「エリーゼのために」を楽譜を見ながら弾けるようになっただけで終わった。半年かけて遊ぶことはできたけどそれっきり押し入れのなかにある。

例えば、本棚には、中小企業診断士試験の二次試験問題集が7教科すべてそろっている。だいたい3万円ぐらいだっただろうか。これは中小企業の経営者インタビューが仕事の軸になりはじめたころ、付加価値を高めるために模索していたときの名残だ。

中小企業診断士の二次試験とは、論述形式である。ケーススタディを与えられて、しかるべき施策を経営学等の一般論にもとづいて講じるというわけだ。マーク式の一次試験とは異なるやっかいさがある。二次試験に答えられるなら、一次試験もクリアできるだろうと思ったから、一足飛ばしの勉強を試みていた。

結果、まるでなにも進んでいない。ケーススタディとして描写された中小企業の悲喜交交に「そうですか。それはさぞ大変だったんでしょう」と共感するばかりだった。

例えば、私の背後には、腹筋をするためのジムにあるようなベンチがある。いわゆるシットアップベンチというやつだ。これは中国製のよくわからないメーカーで、おしゃれもへったくれもないデザインだが、安定感はしっかりしているから中々よかった。

腹筋を鍛えれば呼吸が楽になるだろう、そうすれば作業効率が向上するほか、ストレスが低減されるため、収入アップ!体重減少!モテる!儲かる!QOL!と思っていたわけだ・・・・・・妙なテンションだが、挑戦するときはだいたいこういうお祭り状態になる。

畢竟、思いついたらすぐ腹筋を鍛えられる環境を私は求めていなかったのだ。ちょっと不便な洗濯物置き場として今日まで活用してきた。年度が改まる前に処分する段取りをとった。2000円ぐらいを払って引き取ってもらうことになった。

チャレンジには、直視したくない現在の問題から視線をそらさせるという即効性の効能がある。未来に視線をやるようになるのだ。

効能は、ドラスティックなチャレンジであるほどいい。強めの刺激が、垢のようにこびりついた無念をそぎ落としてくれるような気がする。まるでスクラブ入りの洗顔石けんのように。

しかし、チャレンジがメンタルに及ぼす効能は、いわゆるリラクゼーションに過ぎない。一時的だ。やがてチャレンジが趣味になる。チャレンジでは「効能」ではなく「成果」を得たいものである。

だから、この春、チャレンジをしないチャレンジをしようと心に決めた。

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