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otoshimon2000
2020年8月16日 17:29
一人、ボーっと海を眺めていると、どこからともなく悪魔が現れ、「よお」と馴れ馴れしく話しかけてきた。黒のタキシード、ノリのきいた白シャツ、几帳面なまでに整えられた髪型、高級そうな革靴、そして端正な顔立ち。外見だけで考えるならば、金持ちで育ちのいい英国紳士のようだ。多くの人がそう思うだろう。しかし実際は違う。彼は悪魔なのだ。長い付き合いだから、どんな格好をしていようが、僕には分かる。悪魔は、何
2020年8月13日 10:57
今 僕の近くを蚊が飛んでいる。耳元で、「フィ~ン」だか「プーン」だか「ブーン」だか知らないが、羽音を鳴らしながら飛んでいる。蚊の存在を感じると、反射的に体のどこかがムズ痒くなる。「蚊=痒い」という回路が脳に出来上がるほど、産まれてからこの歳になるまで、数えきれないくらい蚊に刺されてきた。刺される度、いつも思う。なぜだ?と。なぜ「痒み」を残していくのだ?と。こちらは蚊に血
2020年8月18日 11:04
「で、何か質問はあるか?」男は、タバコをふかしながら、そう尋ねてきた。サングラス越しだが、こちらを野獣のような目つきで睨んでいるのを感じる。ヒューッ、と甲高い音を立て、上空で大きな花火が開いた。学生時代の頃から、先生に「何か質問はありますか?」と訊かれる度、「ああ!早く何か質問しなきゃ!」と一人アタフタしていたのを思い出す。「質問もできないなんて,,,」と相手を失望させるのではない