好きな季節

冬

もこもこのニット
マフラーで隠れる口元
寒さで赤くなる手と頬
空気を飲み凍てつく肺
呼吸の見える白い水蒸気
渡し合いのカイロ
保湿のたびに香るハンドクリーム
抗えない痒みと痛みの霜焼け
静かな寂しさと睡眠

雪で無音の街
そこに響かせる足音
ふとタイムスリップしたように投げ合う雪玉
一面に咲く子どもみたいな笑顔

ゆりかごみたいに暖かな電車
行き着く先は
大きくうねって砂を飲み込む海
まるで世界の全てを知ったように
また初めて世界に触れたように
今
今この瞬間
確かに自分は生きているのだと
凍る涙にそっと触れ
抱きしめたくなる

冬