2024年に聴いた古楽を振り返って、
2024年に聴いた古楽、25タイトル。改めて、その25タイトルを振り返れば、ヴァラエティに富んでいるなと... というか、これは福袋では?なんて思ってしまう。いわゆる「古楽」の、"バロック以前"、というだけの大雑把な括りがもたらす、何でもアリで、何が出てくるかわからない感じ、刺激的なんじゃない?そういう視点を持つと、普段、脇にやられがちなカテゴリーが、俄然、おもしろくなってくる?いや、おもしろいのです、古楽!ということで、特に魅了されたタイトル、3つ選んでみた!
💿 オワイン・パーク+ジェズアルド・シックスが、ルネサンス期、天の女王と俗世の女王/王妃たちに捧げられたモテットとシャンソンを歌う、"QUEEN OF HEARTS"。ルネサンスの巨匠たちによる美しいモテットにシャンソンで構成、となると、ちょっと総花的なイメージが生まれそうだけれど、クイーンというテーマで結び、いつものルネサンスとはひと味違うエモさを引き出すパーク... いや、当時の、時代に翻弄された女王/王妃たちに寄り添う音楽から流れ出す情感を、ジェズアルド・シックスの澄んだハーモニーが丁寧にすくい上げれば、女王/王妃たちはもちろん、現代を生きる我々(もまた時代に翻弄されていて... )の心まで浄化されるよう。美しい+心が籠められたルネサンス・ポリフォニー、響きます。
💿 フィリップ・ヘレヴェッヘ+コレギウム・ヴォカーレ・ヘントの、ジェズアルドのマドリガーレ集、第4巻。いや、もう、巨匠×老舗の圧倒的な上質の極み!その突き抜けたクウォリティーから見つめるジェズアルドの音楽の興味深さ... ルネサンスからバロックへの転換期の徒花的存在、ジェズアルド(ca.1566-1613)の、その過渡期にあたるマドリガーレ集、第4巻(1596)という、凄い瞬間を、一点の曇りなく歌い上げ、詳らかにされる、ジェズアルドの模索の軌跡... で、模索までも美しさに昇華し、全てを超越してゆくヘレヴェッヘ+コレギウム・ヴォカーレ・ヘント、圧巻。
💿 アドリアン・ロドリゲス・ファン・デル・スプール+ムジカ・テンプラーニャが、15世紀から16世紀に掛けての激動のイベリア半島における移動を余儀なくされた人々の望郷を歌う作品を取り上げる、"IN TERRA ALIENA"。それは、中世の終わりの音楽で... 多文化であった中世イベリア半島が育む独特なトーンに彩られ... それが失われてゆく様子を歌い奏でて広がる諦念... いやー、何か現代に刺さるのです。で、それを織り成す、ファン・デル・スプール+ムジカ・テンプラーニャの歌と演奏の、得も言えぬ澄んだ佇まいが耳を捉えるのです!哀しみを湛えた美しさ、吸い込まれそう...
ヴァラエティに富んでいた古楽、まだまだ印象に残るものいろいろありまして... かのジェズアルドも影響を受けた、16世紀末、フェッラーラの宮廷で活躍した伝説のヴォーカル・ユニット、コンチェルト・デッレ・ドンネを蘇らせる、"LUZZASCHI: IL CONCERTO SEGRETO"、ヴェネツィア楽派を生み出したフランドル楽派の巨匠、ヴィラールトの、その教え子たちの師へのオマージュ作品を集めた、"ADRIANO 5"。なかなか興味深いポルトガルのルネサンス、マガリャンイスのミサ。ルネサンス・ポリフォニーでも好パフォーマンス!マクラウド+リ・アンジェリ・ジュネーヴのジョスカンのミサ「不運が私を打ち」。そして、不思議と懐かしく、思い掛けなくスペイシー、中世のトルヴェールの歌、"AU DOUZ TENS NOUVEL"。いや、キリがないのでこの辺で... しかし、古楽、楽しかった!で、2025年は、どんなものが出てくるのか、今から楽しみ!