ネガティブな感情に嫌気がさしたので“シロクマ”を受け入れてみた
喜怒哀楽は巡りめぐる。
そして、負の感情との鉢合わせを完全に避けるのはまあ無理だ。
上司に理不尽案件をぶん投げられてムッとするのだって、マウント取ってくる同期に愛想笑い浮かべて何くそぼけ、と内心悪態つくのだって、当たり前の現象だ。何くそぼけまではいかなくともうんざりすることはあると思う。
せっかくの人生なんだ、悲しみや苦しみよりも楽しさを味わいたい。そらもうめいっぱい。
だけど残念ながらそう上手くはいかない。
気分がダダ下がる瞬間は何の前触れもなくやってくる。いくら予防しようったって防ぎようはない。両手をあげて全面降伏。ライフでダメージを受ける。
だからといって怒ったり、当たり散らすのもなんだかな〜って思うくらいに、僕は大人になった。パッションを失っただけかもしれないけど。
社会性を身に纏う。心臓を裏っかえしにして怒りの棘を引っ込める。努めて笑顔で頭を下げる。
怒りとか悲しみとか、引きずりやすい人は、この傷がしばらく残り続ける。意識しないようにしても鮮明にフラッシュバックする。
強い言葉、悪罵が頭ん中で何度も再生されて、仕事に手がつかなくなる。
そうなると負のスパイラルで、どんどん自己嫌悪に陥っていく。
僕も同じようなことを何度も繰り返した。過去の恋愛は年単位で引きずるし、一度の強い言葉で相手の発する一言ひと言を勘ぐるようになってしまう。我ながら面倒臭い性格だと思う。
そんな私は先日「シロクマ実験」と出会った。
心理士とのカウンセリングでの出来事だ。
シロクマ実験、というのは心理学の実験。
『シロクマのことを考えるな、と言い聞かせた人ほど、シロクマのことを強く考えてしまう』という、いわゆるカリギュラ効果を立証する実験の一つだ。
心理士さんは紙の上にシロクマの絵を描きながら教えてくれた。クマというよりはイヌに近いクマだったけれど。
要はネガティブな感情が発露したとき、それらを考えないようにすればするほど、より強く感じてしまうってことだ。もちろん普通に意識してれば普通に意識はしてしまう。
じゃあどうすればいいんだよって、僕を含め引きずりがち人間は思うわけだ。
そんな問いに対し、心理士さんは、
『辛さや苦しさを感じる自分をただ認めてあげればいいんです』と答えてくれた。
なるほど。そういうことか。
いやどういうことだ?
聞いた直後はイマイチピンとこなかった。
ここはひとまず実践ということで、心理士さんの教えに基づいて生活をしてみる。
なるほど。今度は実感した。
怒りや悲しみって、実は長くは続かないってことを、だ。
そりゃそうだ、泣いた後や怒鳴ったあとって基本疲れるわけで、同じように悲しみや怒りを抱いた後ってへとへとだ。体力使う、マジ使う。
なので通常は体力に上限があるおかげでネガティブな感情は一時的なものにとどまる。
それが引きずる人だとどうなるか。
度々、怒られ萎縮した記憶や悲しみ明け暮れた過去が思い出される。
寝て起きて体力が満タンになっても、定期的な引きずられのせいで常時HPが削られる。
ポケモンなら『状態異常:どく』がしばらく続くイメージ。もちろんきのみやどくけし、なんでもなおしでもどうにもならない。
そら疲れるわけで。
僕はこの気づきを境に『シロクマ』のことを思い出すことにした。
怒りや悲しみは受け止めてみる。怒ってる自分、悲しんでる自分がいる。そういう自分を認めてみる。客観視。どんな自分も自分で、決して恥ずべきことはない。
そうするとだいぶ楽になった。
感情に支配されて視野が狭くなってると分かりづらいが一歩引いて見てみると、感情の昂りが落ち着く。「なんだちっぽけな悩みじゃあないか」って少しだけ思たら、あとは蜘蛛の糸に引っ張られていくだけ。
糸を引っ張ってくれるのはきっとシロクマ。
白い毛並みが受け止めてくれる。