見出し画像

アニメ版『アクロトリップ』辛め感想と、りぼんのアニメ化について


もうないと思ったよ、『りぼん』の漫画がテレビアニメ化

 探してみると、最後が2009年~2010年放送の『夢色パティシエール』になるっぽいのですが、そもそも『夢色パティシエール』は元々タイアップ系の漫画らしくて、純粋に『りぼん』の漫画のテレビアニメ化というのはどれだけ古い話になってしまうのやらであります。

 で、上記のあたりの原作コミックはかなり売れたそうなのですが(伝聞)、テレビ番組の「おはスタ」で間借りするように放送されたショートアニメぐらいしか作られることはありませんでした。

 「ハニレモ」なんて2022年11月に「1,000万部突破!」と言ってたのに、テレビアニメは2025年開始という腰の重さ…! もはやアニメ業界が手を付けたくなくて避けてるの、丸出しです。

 一体どうして『りぼん』の漫画はアニメ化されなくなったのでしょうか。これはかなり前に「子どもがテレビを見なくなって視聴率が取れなくなった」といったような噂話をどっかで見たことがありますが、実際のところはよくわかりません。メインターゲット層が自由に使えるお金をあまり持っていないという事情があるといえばあるのでしょう。

 2024年の11月に『りぼん』の人気連載である『初×婚』が大人向けのくじをやっていましたが、こういう例は現状でかなりの異例です。


『アクロトリップ』のアニメ化も異例に包まれていた

 『アクロトリップ』のアニメ化が発表された時、『りぼん』の読者は誰もが驚いたでしょう。何故なら、『アクロトリップ』は1年前に連載終了が予告され、最終回と同時にアニメ化が発表されたのです。しかも、『アクロトリップ』は『りぼん』内でトップクラスの人気という扱いでもなく、けっこうな期間で中堅人気ぐらいの扱いだったのです。

 作者の人自身も連載終了発表後に来た話ということを明かしており、これを不思議に思うなというのは無理がある話です。

 古いところを探すと「意外なところから大反響」などと書いてあり、この意外なところがどこの話なのか私にはよくわからないのですが、少なくとも連載序盤はかなり好調だったことが伺えます。


集英社『りぼん』2020年1月号より

 2019年の終わりには「アニメ化にあたって条件はございません!担当編集までお気軽にTEL!!」とまで書いてありました。


 ただ、『アクロトリップ』初代編集の金岡氏は過剰な表現を選んではアオリに入れる傾向のある人なので、あんまり本気にすべきではないような気もします。

 「なんらかの受賞を担当確信」って何なのでしょうか。


そんなこんなで、『アクロトリップ』アニメ化

 原作は基本1話につき8ページで1話完結という、非常に短い漫画です。おそらくアニメはショート番組になるのではないかと私は思いました。しかし、実際には30分枠でテレビ放送1クールという大台で、原作からして売る商品が少ないのに、一体どれだけ作画を犠牲にしてしまうのかと戦慄してしまいました。

 特に引っかかるのが、アニメ版の瞳の描き方です。キャラデザの人の描き下ろしを見ると、原作を踏襲しているのがわかるのですが、アニメ本編では描き込みの作業量が追いつかないのか中途半端に簡略化してしまい、何か変な瞳になってしまいました。


Trip 32(りぼん 2019年10月号掲載分)

 アニメ11話の自転車で登場するシーンにしても、原作の「おわりだあ~」の画を無くし省エネしてしまったので、この箇所は原作から印象が大分離れてしまうでしょう。


 製作を担当した「Voil」という会社はまだ新しく規模もそこそこなようで、アニメの仕上がりもそりゃこれぐらいになるだろうなあという感じです。

 どうも「Voil」にとっては『アクロトリップ』が初めての新規事業立ち上げみたいな扱いになっているのか、「引き続き本作をよろしくお願いします!」という言葉と共に放送は締められています。


全体的に微妙な原作改変やアニメオリジナル

 SNSでアニメの感想を見てたら、第11話でベリーブロッサムがダンテを男性だと思ってるんじゃないかという感想がいくつかあって、「へえーあれだけの情報だけでそれを思いつくなんてすごいなあ」と私は素直に感心してしまったのですが、そもそもそこのあたりはアニメ版で採用されていない原作部分だとより強調されていました。


Trip 28「テルミーお手紙」より
(りぼん 2019年6月号掲載分)

 まあ、このあたりの設定は連載後半になると消えたネタになってはいるのですが。


Trip 47 「メメントぬくもり」より
(りぼん 2021年1月号掲載分)

 そもそもアニメ版は複数エピソードを無理に1話分の話として合成させるために、季節感のあるものすべてを排除しているのが感心できません。原作では大雪だった描写がアニメ11話では寒空の雨になっておりました。

 これでは、もし仮に奇跡が起きて2期があったとしても、マシロウが「お父さんは心配症」化して乃苺佳寿を追いかけて行こうする回が、「友達とプールなんていかにも夏だからダメダメ!」となってしまい、アニメ化できないではないですか。

 そういったわけで、アニメ版は原作の扱い方に疑問が生じるところがけっこうありました。何より、原作が1話8ページ完結で戦っていた漫画なので、それをつなぎ合わせて1話にしてしまうテンポの悪さが実に否めません。


Trip 34 (りぼん 2019年12月号掲載分)

 アニメ版最終話は「何かよくわからんけどオールメンバーで草津温泉行って楽しむだけで帰ってきた」という感じになってましたが、アニオリでかなり肉付けしたにもかかわらず、上記の大溝芭隆の「ぬけがけ」という意味深セリフは入っていませんでした。おそらく、この部分を入れておけば、クリフハンガー形式の最終回として視聴者の納得感も出せた可能性があった気もするのですが、どうしてああいう形にしたのか、ちと理解しかねます。


 不満どうこう以前に、アニメ版『アクロトリップ』はよくわからない部分がいろいろあり、原作第22話で初登場の英雄くんが出てきません。また、原作ではちょくちょく出てくる上にキャラとしても使いやすい余湖正宗が主要キャラクター扱いではなく、なおかつ授業のシーンでは別の先生らしき人が数学を教えていたりと、かなり謎でした。特に余湖正宗というキャラクターの扱いに関しては、製作の統括が上手くいかなかったような気がしてなりません。代わりにモブ女子のセリフを無理に増やしたのもよくわかりません。


グダグダ書いたけど、楽しんだし嬉しかったアニメ版『アクロトリップ』

 そんな感じでグダグダブチブチ書いてしまいましたが、リピートするぐらいには楽しんだのは事実です。

アニメ『アクロトリップ』OPより

 特に、このシーン、もう涙が流れそうでした。まさか、テレビアニメで「原作 集英社 りぼんマスコットコミックス刊」とか、見られる日が来るとは思わないじゃないですか、普通。

 その上、間髪入れずに、りぼん大本命のハニレモが1月にやってくるじゃないですか。というか、ハニレモが放送終わったら、次のアニメ化があるとは思えませんわ…。もう実写はイヤだ…。


 アニメ版の公式アカウントは最後にアニメ版未登場の原作キャラを描いたりして、考えていることがよくわからなかったりするのですが、とりあえず本作は良い思い出になりました。



※本記事では引用画像において「佐和田米:著『アクロトリップ』」の表記を便宜上省いています。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集