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提灯記事で不発扱いされた「つくたべドラマ」

国内のドラマ業界では、『おっさんずラブ』シリーズ(テレビ朝日系)を皮切りに、ボーイズラブ作品のブームが続いている。それに対してガールズラブ作品も散発的に作られてはいたが、大きなヒット作は生まれていなかった印象だ。

そんな状況を一変させたのが、今年1月から放送された『チェイサーゲームW パワハラ上司は私の元カノ』(テレビ東京系)だった。同作は元櫻坂46の菅井友香と中村ゆりかがW主演を務める作品で、ゲーム会社で働く春本樹(菅井)のもとに、クライアント先の責任者として元恋人の林冬雨(中村)が現れる……というストーリー。オフィスラブに元恋人との愛憎劇のエッセンスを加えた設定なのだが、キスシーンなどの踏み込んだ描写も多く、爆発的に話題を呼んだ。

『あやひろ』加藤史帆と森カンナの恋模様にキュン…ドラマ界を席巻する“大人のガールズラブ”人気 | ENTAME next - アイドル情報総合ニュースサイト

 「つくたべドラマ」が「散発的に作られてはいたが、大きなヒット作は生まれていなかった」の内のひとつになっていて笑ってしまいました。

 まあ、『作りたい女と食べたい女』なんて原作でもドラマでも「レズビアン展開とかいらねえ~~~~~」などと言われてた作品なんで、印象に残らないならそれはそうで結構であります。


国内だけでなく海外でも人気が広まり、世界的LGBTQ+コンテンツ専門プラットフォーム「GagaOOLala」の視聴ランキングにて、GL/LESBIANジャンルの全世界1位を記録しているほか、TikTokでも「#ChaserGameW」の動画総再生数が1,000万回を突破している。

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 とはいえ、「つくたべドラマ」が他作品と比べると不公平な部分はあるにはあって、民放ドラマが海外へ積極的に輸出しているのに対し、「つくたべドラマ」の権利を有するNHKはそこまでのやる気がありません。ビデオ販売されたシーズン1が一部の国で正式に見られるようになったらしいのですが、米国なんかは未だにどこの会社も放映権を取得しないとかなんとか。


 本記事のリンク先の提灯記事ではヒットの理由がどうだのああだの書いてありますが、現状ではまだまだ空き地状態というジャンルなので盛り上がりやすかっただけであり、仮にGLドラマが飽和化した状態で近い勢いを保てるのかどうかは極めて不透明です。

第1弾から世界観が大きく変わり登場人物も一新された本作は、ゲーム会社に務めるレズビアンの上司と部下2人の”恋愛模様”を軸に、元恋人への未練から生まれる屈折した感情の葛藤を描いた”復讐愛憎劇”という、テレ東ドラマでは初となる“レズビアン”を主役にした作品で、実際にレズビアンの監修のもと脚本を一から制作しました。また、昨今注目を集める「LGBTQ+」「労働問題」「セクハラ」など、社会課題にも鋭く切り込んだ【恋愛×仕事】ドラマの新境地に挑んでいます。

イントロ | チェイサーゲームW パワハラ上司は私の元カノ | テレ東・BSテレ東 7ch(公式)

 上記のように、『チェイサーゲームW』とはひたすら話題要素をかき集めたという信念のないドラマであり、もっぱら視聴者の話題はきれいな女性タレント2人のラブロマンスのことばかりで、「労働問題」「セクハラ」などはちっとも関心を集めなかった実に出来の悪い作品であります。そして、そのいずれの要素も作り込み、ドラマ性、共に甘く、ヒットの理由は手を付けたジャンルがたまたまブルーオーシャンだったから以外に考えられません。


 さて、今回の提灯記事が取り上げているドラマ『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』は、何気に同性愛に関する監修者が不在だったりします。その割に「お話作りに当事者を参加させました!」と威張る「つくたべドラマ」や『チェイサーゲームW』よりも当事者性がバリバリに高いのが不思議でもあるのですが、担当プロデューサーの人が「BLドラマがあるならGLもやりたい!」というスタンスで企画が始まったのは確かに『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』のドラマで表現されているように感じます。(もっとも、同性愛者であるのを隠している弘子先輩の演出といったところなどで、監督はあんまり原作を理解しているようには見えなかったりするのが残念なところですが。)

 ただ、『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』に関しては、当事者および百合漫画を日頃から読んでる人なら特に困らないのですが、そうでない人が見るとわかりにくい描写を含む作品であるのが最大のネックです。例えば、「ノンケ」は「同性に関心のない異性愛者」という俗語ですが、俗語ゆえに知らなくても文句が言えませんし、実際知らなくて検索した人がけっこういたそうです。百合漫画の認識が『ゆるゆり』なんかになってる人とかには絶対に理解が追いつかないでしょう。

 そういった当事者性が高すぎるがゆえに起こってしまう問題にも各界の人たちはきちんと向き合っていくべきではないかと私は思います。




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