理想の寝相。
あまりに寝相が悪いものだから、布団が掛け布団カバーの内側で、洗い→すすぎ→脱水後の洗濯物状態となる。全洗濯物一丸の洗い上がりとなって、綺麗さっぱり角が取れ、ほぐすのに困難を極める絡まり団子。ほぐすにほぐれないしつこい肩凝りのように、あるいは追い払っても戻ってくる頑固な汚れを身に纏った図々しい野良のふて猫のように、ちょっとやそっとの努力は「そんなの無駄だよ」と言わんばかりにはね返す。
あまりの寝相の悪さは、掛け布団との間に設けたクッションーー毛布をベッドの場外に叩き出したりもする。
おかげで冬場は毎朝、寒さに震えて目覚めることになる。
ぶるっ。
おお、寒っ。
今朝もやっちまったぜ。
蹴散らした毛布と丸めた掛け布団を団子状態のままがさつに掛けて、眠りへの再突入に強行突破。
あまりの寝相の悪さは、枕にとっても驚異だった。せっかく、何事にも動じないような巨大枕に替えたのに、しかも肩下に潜り込ませ重しをかけるタイプで万全の対策したはずなのに、あまりの寝相の悪さは手強かった。毎日のことではないにせよ、幾日かに一度、なぜか中途半端な回転技を決めている。たまにベッドから抜け出すこともある。
こんなだから、朝のベッドメイキングは人さまより余分な労力を強いられる。
目覚めた際にベッドセットが原形をとどめていないのならば、いっそのこと布団なんて掛けなきゃいい。そう思ったこと数知れず。
ところが布団に代わる『暖』がない。裸の王様じゃあるまいし、着た気になって寒さ忘れる体質も持ち合わせてはいない。エアコンの温度設定を++とプッシュして最大化、代わりに布団をミニマム化したことがあったけど、寝相の悪さがパワーアップしただけだった。
寝相が人様と比べて異様に悪い。困ったことに、同時に諦めも極めて悪いタチである。
ああ、素直で綺麗に礼儀正しく眠ってみたい。布団によけいな負荷をかけることなく、目覚めたあと、ベッドメイキングに多大な労力をかけることのない眠りに就いてみたい。
葛藤はこれからもずっと続く。寝相が悪あがきをしなくなるその日まで。