見出し画像

純文学最先端。

山田詠美氏が選評で「(その作品の少女だけが)生きていた」と表した。

なるほどね。

羊をめぐる冒険に旅立っても、「ユリイカ!」と叫んでしまいたくなる開眼の瞬間に立ちあっても、嗅覚は地球の裏側の見えないところで「所詮そいつはファンタジーなんだよ」と聞こえないように囁いていた。

今回の芥川賞候補作は力作ぞろいだったという。候補作5編のうち、少女を主人公に据えた作品4作。
小説とは創作であり、突き詰めればどれもファンタジーであり、その中にあって『推し、燃ゆ』は、格好をつけるでもなく、理想像を具現化しようとしたわけでもなく、出来の良くない主人公から滲み出てくるものを類まれな抱擁的かつ示唆的比喩表現の才能を駆使して浮き立たせ(たとえやメタファーは一見でたらめな羅列に見える)、少女にナマの息をさせた。
ということなのだろうか。

選評の深みを理解するには知恵と時間が足りないけれど、読み終えるころには新たな気づきがあるやもしれぬ。
ただいま『推し、燃ゆ』進行中。

ーーーーーー

現時点での感想。

文字の連なりの妙。
編み方次第で、いかようにでも変化する。丸を重ねただけの絵でも選ぶ面を違(たが)えれば、当初の思惑とは違ったものを生み出せるのと同じように。


いいなと思ったら応援しよう!