ハッピー?ハロウィン。
知ってる? ゲゲゲの女房の旦那さま。水木しげるっていうんだよ。
漫画を描き続けて⚪︎十年。現役時代にお墓なんか建てちゃって、生前からあの世に居所つくってた。
今ではすっかり向こうの住人となっちゃって、たまにしか帰省しなくなったみたい。
その水木しげる先生がこの世に残していった妖怪たちは数知れず、今じゃ夏が終わってもそこかしこから出てくるわ出てくるわ。貞子さんに先がけて次から次へとテレビから這い出させていたんだよ。それはもううじゃうじゃと。
彼がこの世に顕した妖怪世界には日本の妖怪と世界の妖怪がいて、両者はよくいがみ合っていたっけな。お化けの世界には、言語の壁も性差別も無い。平和の条件そろっているのに争い事とは、漫画の展開上、選ばざるをえない筋立てだったわけなのねん。
誰が決めたか、外来種は日本に定住し、10月31日の夜はハロウィン・フィーバー。仮装したお化けや魔女がお菓子を求め、とにかく明るいゾンビたちが街や町や村を練り歩く。いや子供たちばかりが浮かれるのではない。渋谷あたりで暴動を起こした成人ゾンビの暴動は、まだ記憶に新しく、今年になっても生乾きだ。
ハロウィンという行事は定着し、若人はその夜集結し、上向きかけた経済循環の加速装置みたいに社会にめぐるお金を活気づける。
ああ、恐ろしや。目論んだ人たちのしたたかなビジネス・センスに舌を巻き、担ぐ人にあふれる神輿に乗れない我が身を遠目から呆れてみせる。鬼太郎では「お化けの世界にゃ試験も何にもない」と、天国よいとこ一度はおいで、みたいなノリで手招きの歌を披露してたけど、あたしにゃ現代的西洋妖怪記念日の手招き謳い文句には、乗る気も踊らされる気も、何にもない。
10月30日が終わればやってくる10月末日ってだけ。食っちゃ眠り、繰り返される平穏な毎日を享受する猫とおんなじ。