お笑いネタの「ブリッジ」考
以前投稿した「旨味概念について」という記事は、自信作であったがそこまで読者を獲得できなかったようだ。悔しいので別角度からもう一度攻めてみる。「旨味」とはこういうことなのだと知らしめたい。
小島よしおの「そんなの関係ねぇ!はい、オッパッピー!」は誰もが知る名作ギャグだろう。だがその直後の「チントンシャンテントン、チントンシャンテントン」というフレーズを記憶されている方はどれくらいいるだろうか。これがいわゆるネタとネタのつなぎ、「ブリッジ」と呼ばれるものであり、私が今回見出したい旨味でもある。
ここはつなぎであるため、積極的に笑いをとりにいく箇所ではないのだが、しかしここで明らかに笑いの量が減ってしまうのもよくないので、「適度な」ものにしなければいけない。小島自身ここをだいぶ考えたようで、「なんの意味もない」のネタや「ダイジョブダイジョブ〜」のネタではブリッジを確か違うふうに言っていたように記憶している(動画が見つけられなかったため、記憶だけではその文言を書けるほど残念ながら記憶に残っていない)。ともあれ私ほどのひねくれスイッチ(?)の持ち主だと、小島よしおのネタで一番「キターー!」な部分は「チントンシャンテントン」なのである。この感覚を少し身につけてもらえたら、「旨味」概念を理解してもらえたことになる。
三四郎の小宮浩信はさすがプロというべきか、ラジオで永井佑一郎(別名アクセルホッパー)のネタの中の「ナイツナイツ、オールナイツ」ではなく「んっは、んっんはや」というブリッジ部にフォーカスして取り上げていた。やはり芸人というものは旨味概念がプリセットされているのだろう。千原ジュニアを見ていてもそれは感じる。彼は自身のYouTubeチャンネルで後輩芸人とトークするとき、スカちゃんならみやを(あのヤジマリー。ではなく!)、シシガシラなら濱中を(あの脇田ではなく!)をより集中的に掘るのである。旨味という言葉こそ用いはしないが、ものごとの人とは違った面白がり方を見つけるのが芸人の仕事なので、むしろ私などが言うほうが釈迦に説法というか、いずれの方々も旨味道の遥か先を歩む大先輩である。
最後に、ブリッジとは少し違うが、ずっと心に引っかかり続けている旨味を紹介しよう。藤崎マーケットが一世を風靡した「ラララライ体操」の、ネタの終わり方だ。彼らは「うーん、ガシーン(あるいはガキーン?)!」と言って勢いよくネタを締めるが、よくよく考えるとこのガシーンがなんなのか、よくわからないのである。もちろんギャグであるから、意味を求めたいわけではないというのは前提だが、このガシーンがいつの間にかツボになってしまっている自分がいた。今動画で見返したら「うーん、ガシーンどうもありがとうございましたー」のように、ガシーンに被さるようにしてお礼を言っているところからして、本人たちもこのガシーン、これで大丈夫なのかと思った瞬間がおそらくはあるはずである。「旨味」というのは、感覚的に言えばなにかの軋みというか、なにかが十全に機能していないのだけど、そこに屹立しているようなそんな状態を言うのかもしれない。これをきっかけにして、ぜひ「旨味」の元記事も遡って見ていただけるとありがたい。