生命力の重み 『上虚下実』とは
初めていらっしゃった時には、心の不安定さや他者に対する恐怖心を語っていた方が、そういった内容のことを言わなくなってきました。
施術をしている側も、嬉しい限りです。
その方のお身体を拝見すると、足裏がとても窮屈そうに縮まっていました。
冷たい氷の上を裸足で歩いてきたかのように、バレリーナの靴をずっと履いてきたかのように緊張した足でした。
『上虚下実』
と整体ではよくお伝えしますが、上半身は脱力して、下半身はどっしりと重みがあり安定している状態が良い身体の状態といえます。
『上実下虚』だと、いわゆるエネルギーのバランスが逆三角形になるので、身体も心もグラグラと倒れやすい状態になります。
「地に足がついていない。」
と、フワフワした人のことを比喩する言葉がありますが、言葉が出来たよりも先に、古くから人間の感覚として、足が地面を感じていないと心も不安定になる。というのは当たり前の知恵としてあったのだと思います。
その方も仰向けの状態で脚を持ってみると、以前はとても軽かったのです。
が、
今はしっかりと重みがあります。
「足が大地を踏んでいる感覚があります」
と、ご本人も嬉しそうにお話してくださいました。
これも、自身の足しか知らないと、この足の状態がスタンダードだと思ってしまいますが、他の人の足を実際に持って比べたりすると、よく分かります。
同じ60kgの人で、同じような筋肉量の人でも、足が軽い人と重い人がいます。
足を触りあってみると、
足指もしっかり開き、大地を捉えられる足と
縮こまって緊張しきった足と
全然違う感触なのです。
足と同様に腕もそうです。
腕をもってみると、腕にも重い、軽いがあります。
『上虚下実』を目指すために、具体的にはどうしたらいいのか。
上虚と下実を分けて行います。
上虚(上半身を脱力させる)ためには
○頭や目を休める
○肩甲骨の可動域を広げ脱力できる氣功や体操
○腹圧の調整
下実(下半身を充実させる) ためには
○歩いている時に、足裏が大地を踏みしめている感覚を意識する
○足指が丸まっていたら伸ばす
○足の水掻きを調整する
○骨盤の中にボーリングの球が入っているような重みを感じ、丹田を意識する
○站椿功(たんとうこう)
などなど。
それぞれの手当てには、多少コツがありますが、お教えすればご自身で出来ることばかりです。まずはとにかくやることです。
実験の積み重ねだと思って、1ヶ月後の自分の身体の変化の結果を楽しみに続けられるかが鍵です。
地に足がついただけでなく、
気がついたら、
お顔の表情がやわらかくなっていたり、
汗がかけるようになったり、
呼吸が深くなっていたりと、
主訴とは関係なかったところで変化も訪れます。
「私って、そもそもどこが調子悪かったんだっけ?」
と忘れるくらいになった時には、手元に自分で自分を調整できるような知識と技術が備わっています。
そうなった時には、「治してもらう人」から
「自身で治せる人、元氣を与えられる人」になっています。
この方もとても自分の感覚に丁寧に向き合っている方だからこそ、施術を通してご自身で変わって来れたのだと思います。とても謙虚な方で、アドバイスした呼吸法や手当てなど、出来ることを真面目にコツコツやってくださいました。
お客さんから元氣をもらい、私も稽古にはげみます。
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