![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/83914429/rectangle_large_type_2_e728497d3d1d7cc97505e91978aec6ad.png?width=1200)
魔法少女の系譜、その134~『未来からの挑戦』と原作小説~
今回も、前回に続き、『未来からの挑戦』を取り上げます。
魔法少女の系譜からすれば、『未来からの挑戦』は、「悪の超能力少女」高見沢みちるが登場した作品として、重要です。
しかし、本作品の主人公は誰かと言えば、間違いなく、関耕児です。中盤以降は、耕児のクラスメイトの飛鳥清明が、サブ主人公というべき立ち位置になります。
以前に書きましたとおり、清明の正体は、西暦二四九六年から来た未来人です。彼は、最初は、英光塾に通う高見沢みちるの側でした。未来の自分の時代を良くするために、過去を改変しようとしていました。
そのため、清明は、高見沢みちるに逆らう耕児を、敵視していました。ところが、耕児は、光化学スモッグにやられて―環境汚染の話が出るところが、一九七〇年代ですね―倒れた清明を、助けてくれます。そのことから、清明は、耕児が悪いやつではないと気づき、耕児の言うことも、少しは聴こうという態度になります。
決定的だったのは、耕児と清明とが、一緒に、第二次世界大戦中にタイムリープしたことでした。清明は、ファシズムの行く先の悲惨さに、目が覚めます。
この後、清明は、耕児や他のクラスメイトともに、英光塾グループと戦う側になります。
このように、飛鳥清明は、『未来からの挑戦』に欠かせない、重要な登場人物です。
じつは、原作小説の『ねらわれた学園』には、飛鳥清明は登場しません。ドラマの『未来からの挑戦』のオリジナルキャラクターです。
飛鳥清明を登場させたことは、大成功でした。ドラマで、大人気のキャラクターとなりました。話自体も、より面白くなりました(^^)
『未来からの挑戦』が、NHK少年ドラマシリーズ史上、最高傑作と言われることがあるのは、この改変によるところが大きいと思います。高見沢みちるの憎々しさと並んで、飛鳥清明の神秘性および劇的な転向は、ドラマを大いに盛り上げました。
主人公の関耕児は、原作小説でも、ドラマでも、ほぼ、変わりません。正義感が旺盛で、あまり関係が良くないクラスメイトでも助ける情があり、行動力もあります。少年少女向け作品の主人公としては、「かくあるべし」の正統派です(^^)
どちらかと言えば熱血漢の耕児と、冷静な清明とは、良いコンビでした。飛鳥清明というオリジナルキャラクターを登場させたことは、本当に英断でしたね。
この英断を促したのは、同じNHK少年ドラマシリーズの『明日への追跡』だったかも知れません。確証はありませんが。
『明日への追跡』の主人公は、男子中学生の落合基【おちあい もとい】ですね。彼のクラスに転入してきた竹下清治は、テレパシーを使う怪しい少年でした。
最初は、思いきり怪しむ基ですが、話すうちに、清治は悪いやつではないと気づいて、親しくなります。最終的に、清治は、基の味方となり、対立する宇宙人と戦って、基を救ってくれます。清治の正体は、地球を調査に来た宇宙人でした。
普通の男子中学生の主人公と、彼を助ける謎の多いクラスメイト(宇宙人あるいは未来人)という組み合わせが、『明日への追跡』と、『未来からの挑戦』とで、そっくりです。
『明日への追跡』が人気を呼んだので、『ねらわれた学園』をドラマ化する際に、同じような主人公コンビを作らせたのかも知れません。
NHK少年ドラマシリーズでは、他にも、『なぞの転校生』や『幕末未来人』、『その町を消せ!』などで、思春期の男子同士がコンビを組んで、困難に立ち向かう様子が描かれます。
『なぞの転校生』では、『未来からの挑戦』と同じく、コンビの片方が普通の現代人ではなく、異次元人です。『幕末未来人』と「その町を消せ!」とでは、コンビの二人は、両方とも、同じ立場の現代人でした。
『幕末未来人』と『その町を消せ!』とは、『未来からの挑戦』よりも、後に放映されました。
『なぞの転校生』や『明日への追跡』が先行例として存在したため、『未来からの挑戦』が放映された時点で、男子同士のバディものという路線が、すでに、根付いていたと言えます。親から離れて、友人との関係を大切にする思春期向けのフィクションとしては、定番の一つですね(^^)
定番の男子バディものに、一ひねりを加えて、「悪の超能力少女」高見沢みちるをからませたあたりが、上手いなあと思います。
圧倒的な悪の存在感を見せつけた高見沢みちるですが、じつは、彼女は、下っ端なのですよね。みちるの上位に、英光塾の講師の田中レイ子がいます。レイ子こそが、未来から来て、過去―物語中の現在―を変えようとしている張本人です。
レイ子は、超能力を使える未来人です。成人している点を除けば、魔法少女と言えます。
彼女については、語られないことが多いです。彼女個人の意志で過去へ来ているのか、何らかの組織に属していて、その組織の力で過去へ来ているのかといったことは、わかりません。最後に、溶けるように消えてしまったのも、なぜなのか、作中には、説明がありません。
レイ子と清明は、同じように超能力を使えますが、彼らと同時代の未来人なら、誰でも超能力が使えるのかどうかも、わかりません。
面白いのは、レイ子や清明の超能力は、地球の状態と関係するらしいことです。地震が起こる前後には、彼らの超能力が使えなくなるという弱点があります。
地震が起こった直後に、レイ子の超能力が使えなくなったことを利用して、耕児と清明が、レイ子を制圧します。
田中レイ子も、原作小説の『ねらわれた学園』には、登場しません。ドラマのオリジナルキャラクターです。
ただし、小説の『ねらわれた学園』には、レイ子とそっくりな立ち位置のキャラクターが登場します。京極という名の男性です。
「京極」は、おそらく、偽名です。本名は、わかりません。年齢も、わかりません。外見からは、耕児たちよりは年上ですが、「少年」と書かれています。耕児たちが中学生ですから、高校生くらいということでしょう。
京極も、過去を改変するために、未来から来た人です。英光塾を根城にして、高見沢みちるなどの生徒たちを洗脳し、歴史を変えようとします。彼も、超能力を持っていて、その能力で、他人を洗脳し、操ることができます。
ドラマの『未来からの挑戦』では、田中レイ子が、高見沢みちるを洗脳し、操っていました。小説の『ねらわれた学園』では、京極が高見沢みちるを洗脳し、操ります。
どちらにしても、高見沢みちるは、下っ端の操り人形です。ドラマ中盤の威圧感からは、信じがたいですが。
残念なことに、『未来からの挑戦』では、高見沢みちるが最終的にどうなったのかが、描かれません。田中レイ子が消えてしまった後には、みちるの出番がないのです。
ヒントはあります。楠本和美が語るには、中学一年生の頃のみちるは、目立たない、おとなしい生徒だったといいます。強権的になったのは、レイ子の洗脳ゆえでしょう。洗脳が解けたなら、元の、目立たない、おとなしい生徒になったと考えられます。
原作小説の『ねらわれた学園』では、みちるの最後が、はっきり書かれています。
京極は、最後に耕児たちに負けて、耕児たちの時代から去ることにします。その時、みちるは、自分も連れて行ってくれと京極に頼み、京極は、それを聞き入れます。
京極の洗脳があろうがなかろうが、みちるは、京極個人に心酔していました。このために、現代での生活をすべて捨てて、京極と一緒に行くことを望みます。
今回は、ここまでとします。
次回も、『未来からの挑戦』を取り上げます。