魔法少女の系譜、その74~『続 タイム・トラベラー』~


 今回も、前回に続き、実写テレビドラマの『続 タイム・トラベラー』を取り上げます。
 八つの視点で、『続 タイム・トラベラー』を分析します。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

の、八つの視点ですね。


[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 ヒロイン、芳山和子の超能力は、ケン・ソゴルの薬によって得られました。後天的で、人工的です。前作『タイム・トラベラー』の設定を、そのまま引き継いでいます。
 ということで、『タイム・トラベラー』を考察した時に書いたとおり、和子は、「授与型」の魔法少女です。

 前作『タイム・トラベラー』では、和子の超能力が、今後どうなるのか、ぼかされていました。それは、次回作の『続 タイム・トラベラー』につなげるためだったのですね。和子の超能力がなくなってしまったら、この続編が成り立ちません。


[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 これについては、わかりません。
 原作小説の『時をかける少女』では、ケン・ソゴルの薬の効果は、時間が経てばなくなる、とされていました。ですから、原作小説『時をかける少女』の和子は、普通の大人の女性になったはずです。

 ところが、『続 タイム・トラベラー』の和子は、時間が経っているのに、超能力がなくなっていません。もっと時間が経てばなくなるのか、一生変わらないのか、まったく描写がありません。
 このために、和子が、普通の女性として成人するのか、超能力者として成人するのかは、わからないとしか、言いようがありません。


[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 『続 タイム・トラベラー』でも、和子は、変身しません。


[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 『続 タイム・トラベラー』でも、和子は、魔法の道具は持ちません。

 ただし、二十七世紀の人間が持つ、エネルギー・スクリーン装置というものが、登場します。これを使うと、局所的に、時間の流れを変えることができます。一種のタイムマシンですね。

 和子は、これを使いません。自分の超能力だけで、タイム・トラベルします。
 エネルギー・スクリーン装置は、二十七世紀の人間だけが使うものです。二十世紀の人間でも、使うだけなら使えますが、正しく使うことはできません。原理がわからないからです。


[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 『続 タイム・トラベラー』でも、和子は、マスコットを連れていません。


[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 『続 タイム・トラベラー』でも、和子は、呪文を唱えません。


[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 和子の超能力を知るのは、基本的に、ケン・ソゴルだけです。
 けれども、『続 タイム・トラベラー』では、ケン・ソゴルの仲間である二十七世紀人が、複数、登場します。彼らは、みな、和子の超能力について、知っています。二十七世紀では、タイム・トラベルその他の超能力が、普通に実用化されているためです。

 和子が暮らす二十世紀(一九七〇年代の日本)では、和子以外、彼女の超能力を知る者は、いません。基本的に、秘密にされています。
 このため、視点は、ほぼ、和子の視点に固定されています。タイム・トラベルの能力を使いながらも、和子自身、その能力について、よく理解していません。ケン・ソゴルの説明があって、初めて、和子が知ることが多いです。


[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

 タイム・トラベルの超能力を持つ「少女」は、和子と、もう一人います。ジュンという名で、二十七世紀人です。
 ジュンは、和子が二十世紀から姿を消している間、替え玉として、二十七世紀から送り込まれました。和子がいなくなって、騒ぎにならないためにです。

 ジュンは、和子の身代わりですから、和子と入れ替わりに、二十世紀にとどまります。このため、和子と一緒にいる場面は、ほとんどありません。替え玉としての役割しかありません。
 それでも、複数の「魔法少女」が登場するのは、この時代には、先進的です。

 他に、超能力を持つのは、みな、二十七世紀人の「男性」です。ケン・ソゴルも、そこに入ります。
 男女ともに、複数の人間が超常的能力を持つ物語は、この時代には、珍しいです。

 複数の人間がタイム・トラベル能力を持ち、かつ、エネルギー・スクリーン装置という「魔法道具」が登場することで、『続 タイム・トラベラー』は、前作の『タイム・トラベラー』より、ふくらみのある話になっています。超常的能力が登場する物語―魔法少女が登場する物語は、その一種ですね―が、今後、どのように発展するのかを、暗示するようです。


 こうして見ると、『続 タイム・トラベラー』は、『タイム・トラベラー』の設定を引き継ぎながらも、物語として、進歩していることがわかります。魔法少女アニメがたどったように、「魔法道具」が登場したり、「魔法少女」が複数になったりしています。のちの魔法少女アニメの発展を、予告するかのようです。

 もし、『続 タイム・トラベラー』の続編が、どんどん作られていたら、のちの魔法少女アニメを、先取りする作品群になっていたかも知れません。

 もっとも、皆さんが御存知のとおり、原作小説の『時をかける少女』は、二〇一七年現在に至るまで、何度も映像化されています。五十年前の作品なのに、時代ごとに、新しい息吹を得て、復活しています。それだけ、原作が優れている証拠ですね。

 『タイム・トラベラー』を初作とした、NHKの『少年ドラマシリーズ』は、この後も、あまたの傑作を、世に送り出します。その中には、「魔法少女もの」も含まれます。

 『続 タイム・トラベラー』については、ここまでとします。
 次回は、別の作品を取り上げます。



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