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魔法少女の系譜、その75~『暁はただ銀色』~


 今回は、新しい作品を取り上げます。アニメではなく、実写のテレビドラマです。『タイム・トラベラー』や『続 タイム・トラベラー』と同じ、NHKの少年ドラマシリーズで放映された作品です。
 その作品とは、『暁はただ銀色』です。昭和四十八年(一九七三年)の四月に、全六回が放映されました。光瀬龍【みつせ りゅう】さんの原作小説があります。

 光瀬龍さんは、日本の代表的なSF作家の一人ですね。少年ドラマシリーズでは、このように、著名なSF作家の原作つきドラマが放映されることが、よくありました。『タイム・トラベラー』も、原作は、筒井康隆さんの『時をかける少女』ですものね。

 『暁はただ銀色』も、少年少女向けのSFです。主人公は、ケンという中学生です。
 ある日、ケンのクラスに、宮野リカという美少女が転入してきます。彼女がヒロインです。
 リカは、明るくてスポーツ万能で、それでいて謎めいたところがあります。このあたりは、のちにお約束となる「謎の転校生」の典型です。

 ある時、リカが、火事を予告するような言葉を吐き、本当に火事が起こります。そのうえ、彼女は火事の焼け跡へ行って、そこで爆発事故(?)に巻き込まれます。焼け跡にいた消防士もろとも、リカは意識を失ってしまいます。
 ところが、リカを含め、意識を失っていた人々が、夢遊病者のように起き上がり、壁を通り抜けて消えてゆくという怪事件が起こります。ケンは、その様子を目撃していました。
 時を同じくして、日本の各地で、奇妙な蒸発事件(人が突然いなくなる事件)が続発しました。

 結論を先に書くと、リカは、宇宙人でした。リカの保護者の及川善吉も、同じ星から来た宇宙人でした。
 二人の故郷の星は、地球の反射光をエネルギー源にしています。もし、地球の人類が、このまま地球を汚染し続けると、地球の反射光がなくなり、リカたちの星では、暮らせなくなってしまいます。それを防ぐために、故郷の星から派遣されてきたのでした。

 リカたちには、対立する敵がいました。NN83マイナス星という、リカたちとは別の星から来た宇宙人たちです。
 NN83マイナス星人たちは、リカたちの星を侵略しようとしていました。そのために、地球からのエネルギーを断とうとしていました。ですから、NN83マイナス星人にとっては、地球の人類が、地球を汚染し続けてくれたほうが、都合がいいわけです。

 NN83マイナス星人たちは、どんなに環境が汚染されようと文句を言わない、従順な性質に、地球人たちを作り変えようとしていました。リカたちは、そうはさせじと、戦っていました。
 ケンのような普通の地球人が知らない間に、地球は、宇宙人たちの戦いの場になっていました。蒸発した人々は、その戦いに巻き込まれたのです。

 リカと及川善吉は、四次元空間で、NN83マイナス星人たちと戦っていました。蒸発した人々は、NN83マイナス星人たちによって、四次元空間にとらわれていました。リカと善吉は、力を振り絞って、とらわれた人々を解放します。善吉は力尽きて、消えてしまいます。
 リカに惹かれていたケンは、リカを助けたくて、自ら火事の焼け跡へ行き、四次元空間へ入り込みます。ケンは、四次元空間で、リカと再会します。リカは、事の次第をケンに語り、地球をこれ以上汚染しないようにと願いを託して、ケンを送り返します。リカ自身は、もう、帰る力を失っていました。

 こうして見ると、『暁はただ銀色』は、異類訪問譚の一種ですね。
 他の星という異界からやってきたヒロインが、主人公と出会います。ヒロインは、異界の人なので、超常的な力を持ちます。最後には、ヒロインは、主人公と別れ、四次元空間という異界へ消えてしまいます。元いた世界へ帰らないところが、ちょっと異色ですね。

 今回の考察は、ここまでとします。
 次回も、『暁はただ銀色』を取り上げる予定です。



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