魔法少女の系譜、その97~『タイムボカン』~
今回も、前回に続き、『タイムボカン』を取り上げます。
今回は、八つの視点で、『タイムボカン』を分析してみます。
[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?
の、八つの視点ですね。
[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
『タイムボカン』には、狭義の魔法少女は、登場しません。ヒロインの淳子は、宇宙人でも超能力者でもなく、魔法も使えません。肉体的にも精神的にも、普通の小学五年生の女の子です。
敵役のマージョも、魔法は使えません。宇宙人でも、超能力者でもありません。やたら偉そうですが、肉体的・精神的には、普通の成人女性です。
広義では、淳子もマージョも、魔法少女と言えなくもありません。マージョは、成人女性ですが。
淳子もマージョも、タイムマシンという、超科学的なマシンに乗ります。タイムマシンを操る点が、唯一の、魔法少女らしい点です。タイムマシンがなければ、ただのヒトです。
二〇一九年現在でも、タイムマシンは、実用化されていません。超科学的な代物です。ですが、一応、「科学の力」で、時間の旅ができるという説明が付いています。
淳子とマージョとは、広義の「人工的な」魔法少女と言えます。タイムマシンという魔法道具を使う魔法少女です。
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
タイムマシンに乗らなければ、淳子は、普通の少女です。普通の女性として、成長するでしょう。
最終回で問題が解決したので、淳子は、もう、タイムマシンに乗る必要はないはずです。乗らなければ、普通の成人女性になるはずです。
真面目に、タイムマシンによる時間旅行のことを考えると、淳子(と丹平)には、何らかの悪影響が出ても、不思議ではありません。
とはいえ、『タイムボカン』は、コメディです。そんなところを、真剣に描写することはないでしょう。
淳子のそばには、タイムマシンの発明者の木江田博士と、その助手の丹平がいます。この二人は、何かとトラブルメーカーです(^^; 成長後も、淳子は、必要に迫られて、タイムマシンに乗ることになるかも知れません。
たとえ、そうなったとしても、『タイムボカン』の世界は、明るく楽しいコメディ世界です。丹平と一緒に、賑やかに、楽しい生活を送りそうです(^^)
マージョは、最初から、成人女性として登場します。
最終回で、ダイナモンドを入手できないことが確定し、ひどい衝撃を受けます。失意のまま、失踪してしまいます。
案外、普通の女性として、どこかで平凡な生活を送るのかも知れません。
あるいは、性懲りもなくタイムマシンを作って、悪だくみ生活を続けるのかも知れません。
マージョがどちらを選ぶことも、ありそうです。
どのみち、『タイムボカン』のコメディ世界では、マージョも、あまり不幸なことには、ならないでしょう(^^)
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
淳子もマージョも、変身はしません。
マージョは着替えることがありますが、淳子は、ずっと同じ服を着たままです。一九七〇年代のアニメとしては、これは普通です。
日本のテレビアニメで、登場人物たちが、「普通に着替える」ようになったのは、おそらく、一九八〇年代後半です。
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
上記のとおり、淳子とマージョとは、タイムマシンという、「大きな魔法道具」を持ちます。人が何人も乗れるほど、大きなものです。
どちらのタイムマシンも、付属する小さなマシンが、何種類もあります。これらのマシンで、周囲を探索したり、敵と戦ったりできます。
『タイムボカン』においては、これらのマシン(メカニック)の楽しさが、強調されています。メカこそ、『タイムボカン』の大きな魅力です。
そもそも、題名が、それを表わしていますよね? 『タイムボカン』です。タイムマシンの名前が、題名になっています。
主人公は、丹平と淳子ということになっていますが、じつは、本作の主役は、奇想天外なメカたちです(^^) 魔法道具が主役と言えます。
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
本作には、マスコット役が、複数登場します。
その一は、ロボットのチョロ坊です。丹平が作ったヒト型ロボットで、幼稚園児並みの知能があり、ヒトと会話できます。
二〇一九年現在でも、こんなロボットは作れません。タイムマシンがなくても、チョロ坊を作れただけで、丹平が天才なのは、確定です(笑)
その二は、オウムのペラ助です。オウムなので、ヒトの言葉をしゃべれるという設定です。木江田博士の行方を知っているはずですが、その証言は、非常に心もとないです(^^;
後半になると、ペラ助の妻のオタケさん―もちろん、オウムです―も登場して、マスコット役が増えます。
こんなにマスコットが多いのは、『タイムボカン』がコメディだからでしょう。コメディならば、場を和ませるマスコット役は、多くても、まとまります。
多くの魔法少女ものでは、マスコットは、助手、または、お目付役を果たしますね。
『タイムボカン』では、チョロ坊が主に助手役で、ペラ助がお目付役(というより、助言役?)という棲み分けがあります。
ただし、どちらも、証言があやふやだったり、エネルギー切れになったりして、よく、トラブルのもとになります(^^; マスコットであるとともに、トリックスターと言えます。
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
淳子もマージョも、呪文は唱えません。
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
これについては、はっきりしません。
毎度、けっこう派手な立ち回りがあり、マージョたちのメカが、盛大に破壊されます。これだけのことをしていれば、秘密になんてできないはずですが……一応、丹平と淳子は、時間旅行先の人々に気を使って、秘密にしているようです。
この部分は、「コメディだから」で、すべて許されている気がします。コメディだから、細かいことは、気にしちゃいけないんですね(笑)
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?
広義の魔法少女は、淳子とマージョ、二人が登場します。淳子が善玉、マージョが悪玉と、はっきり、役割が分かれています。
だから、いいんですね(^^) このわかりやすさも、『タイムボカン』が受けた理由の一つでしょう。
今回は、ここまでとします。
次回、もう少しだけ、『タイムボカン』が続きます。
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