魔法少女の系譜、その67~『はるかなるレムリアより』~
今回も、前回に続き、『はるかなるレムリアより』を取り上げます。八つの視点で、『はるかなるレムリアより』を分析してみます。
[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?
の、八つの視点ですね。
[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
これは、ヒロインの涙【るい】が、「人類の女王」アムリタデヴィの生まれ変わりだからです。
転生して、前世からの能力を受け継ぐという、転生型の魔法少女の、最初期の例ですね。
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
物語の最後で、涙は、アムリタデヴィとしての記憶と能力とを、完全に取り戻します。ナーガラージャとともに、宿敵ガアリイを封印するものの、それとは別に、人類全体が危機に陥ります。
涙とナーガラージャ、スカラベ、サンダーバードは、生き残った人々を、地球内部の空洞世界―地球空洞説ですね―に導き、そこで、再び、人類の女王として、君臨することになります。
涙の能力は、普通の女子高校生として暮らすには、明白にオーバースペックですね。そのまま、平穏に暮らせたとは思えません。平穏に暮らしたいなら、能力を封じるしか、なかったはずです。
ところが、そういう結末にしないのが、高階良子さんのすごいところです。地球全体を危機にしてしまって、彼女の能力が生かされる新世界へと、人類全体を連れて行ってしまうわけですから。
「異世界から来た魔法少女が、異世界へ帰る」結末は、一九七〇年代の魔法少女ものとして、普通でした。
それを、「異世界(前世)から来た魔法少女が、人類全体を道連れにして、新たな異世界(地球内部の空洞世界)で暮らす」結末にしてしまいました。
強引ですが、素晴らしいです(^^) ここまでスケールの大きな魔法少女ものは、二〇一〇年代の現在でも、少ないですね。
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
ヒロインの涙【るい】は、変身しません。
かわりに、ヒロインの配下たちが、変身します。スカラベ、サンダーバード、ナーガラージャの三人ですね。
三人の配下は、普段は、普通の人間の男性の姿をしています。いざとなると、本体を現わします。スカラベは甲虫人、サンダーバードは鳥人、ナーガラージャは龍です。
ヒロインではなく、配下だけが変身するのは、面白いですね(^^) むろん、彼らが変身するのは、超常的な能力を使うためです。のちの魔法少女と、同じ理屈です。
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
ヒロインは、ナーガラージャの姿を彫った、小さな石像を持っています。この石像は、ヒロインがまだ小さい頃に、幼馴染みの紀彦―ナーガラージャの生まれ変わり―に、もらったものです。
この石像は、普段は、何の役にも立ちません。しかし、宿敵ガアリイに対しては、強力な武器になります。ガアリイは、これを持つヒロインには、手出しできません。
この魔法道具は、ユニークですね(^^)
石像の由来については、語られません。おそらく、前世のレムリア帝国から、引き継がれた物なのでしょう。
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
マスコットに当たるものは、登場しません。
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
この作品には、呪文に当たるものも、登場しません。
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
秘密も何も、ヒロインの能力は、かなり後になるまで、明らかになりません。ヒロイン自身が、何も知らない状態です。
事情を知っているのは、配下の三人と、敵のガアリイだけです。彼らは、全員、アムリタデヴィの秘密を守っています。
このような状態なので、ヒロイン視点以外に、配下たちの視点や、ガアリイの視点で、物語が紡がれる部分も、多いです。
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?
敵役のガアリイを入れれば、ヒロインと、二人です。一九七〇年代には、二人の魔法少女が登場するだけで、珍しいです。
三人の配下たちは、男性ですが、超常的な力を持ちます。「魔法少女もの」に、超常的な能力を持つ男性キャラが、複数、登場するのは、たいへん珍しいです。一九七〇年代には。
この点でも、『はるかなるレムリアより』は、非常にユニークな作品と言えます(^^)
こうして分析すると、『はるかなるレムリアより』の先進性が、わかっていただけるでしょう。
今回は、ここまでとします。
次回は、「一九七五年のまとめ」をする予定です。