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魔法少女の系譜、その44~『ラ・セーヌの星』~


 今回も、前回に続いて、『ラ・セーヌの星』を取り上げます。
 七つの視点、改め、八つの視点で、この作品を、分析してみます。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

の、八つですね。


[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 ヒロインのシモーヌは、魔法を使いません。魔法の代わりにふるうのは、剣術です。
 普通の剣術ですので、練習によって、身につけます。

[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 物語の後半では、シモーヌは成人しています。物語の中で、ヒロインの成長が、きちんと描かれます。成人してからのヒロインも、剣をふるって、戦っています。

 普通の「魔法少女もの」とは、ここが、大きく異なりますね。
 これは、やはり、魔法という、超常的なものを出していないからでしょう。普通の成長物語として、描きやすいわけです。

 ただし、物語の最後では、シモーヌが剣を捨てて、普通の女性として生きることが暗示されています。

[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 シモーヌは、魔法少女ではありませんが、ラ・セーヌの星という義賊に「変身」します。権力に対抗する立場なので、権力から身を守るために、変身して、正体を隠します。
 変身といっても、仮面を着けて、服装を変えるだけですから、「変装」というほうが、正しいです。

 シモーヌが、義賊になることを決意した時、必然的に、変身することになりました。理由は、上記のとおりです。

[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 シモーヌは、魔法少女ではないので、魔法の道具は持っていません。剣術に使う剣を持っています。

[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 シモーヌは、マスコットに当たるものを連れています。フクロウのコローと、ロバのタンタンです。どちらも、普通の動物です。

 フクロウのコローは、シモーヌがラ・セーヌの星になった時、義賊の仕事の手伝いをすることがあります。この点で、有能なマスコットです。
 ロバのタンタンのほうは、昼間、シモーヌの花屋の仕事を手伝っています。

 なお、ラ・セーヌの星になった時のシモーヌは、白馬に乗ります。この馬が、普段、どこにいて、どんな生活をしているのかは、まったく描かれません。

 マスコット的な人間として、ダントンという少年も登場します。もと、サーカス団で働いていただけあって、とても身が軽いです。よくシモーヌのお手伝いをします。キャラデザインを見ると、コミカルな感じですが、シリアスな場面にも、よく登場します。

[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 シモーヌは魔法を使わないため、呪文は登場しません。

[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 何度も書いていますとおり、シモーヌがラ・セーヌの星であることは、秘密です。知っているのは、黒いチューリップこと、青年貴族のロベールだけです。
 このために、物語は、基本的に、シモーヌ自身の視点で描かれます。時おり、ロベールの視点になることもあります。
 宮廷が舞台になる時には、マリー・アントワネットの視点になることが多いです。

[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

 『ラ・セーヌの星』には、戦闘少女が一人、登場するだけです。魔法少女は、登場しません。


 『ラ・セーヌの星』は、魔法が登場しない作品でありながら、のちの魔法少女ものに通じる、重要な類型を示した作品でした。
 重厚な歴史ものとしても、評価されていい作品だと思います。
 戦闘少女の形としても、鮮烈な印象を残しました。

 『ラ・セーヌの星』の分析は、ここまでとします。
 次回は、別の作品を取り上げる予定です。




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