魔法少女の系譜、その16~『好き!すき!!魔女先生』~
今回も、前回(魔法少女の系譜、その15)からの続きで、『好き!すき!!魔女先生』を取り上げます。
ヒロインの使う「呪文」について、考えてみましょう。
『魔女先生』のヒロイン月ひかるは、呪文に相当するものを使います。
ただし、それは、呪文というより、掛け声に近いものです。
仮面ライダーなどの変身ヒーローが、技の名前を叫びますよね? あれと同じです。
後年の「戦う魔法少女」たちでは、それは、当たり前になりました。「ティロ・フィナーレ!」とかですね(笑)
『魔女先生』は、このような「技名を叫ぶヒロイン」の先駆けです。
前回の日記で、『魔女先生』は、前半と後半とで、違った作風になると書きましたね。
これにしたがい、呪文、というか、掛け声も、変わります。
前半では、魔法道具のムーンライトリングをかざして、「ムーンライトパワー」と叫びます。これで、いろいろな魔法が使えます。
後半では、魔法道具の変身コンパクトをかかげて、「アンドロ仮面、ローッ」と叫びます。これで、月ひかるは、アンドロ仮面に変身します。
「呪文」が「掛け声」に変わった点でも、『魔女先生』は、画期的でした。変身ヒーローものの要素を、ばっちり取り入れているのが、わかりますね。
後半、アンドロ仮面に変身すると、魔法は使いたい放題です。仮面で顔が見えないので、正体がばれないで済むわけです。
その代わり、月ひかるからアンドロ仮面に変身するところは、誰にも見せられません。「魔法の秘密性」を維持する苦労は、変わりません。
マスコットの点でも、『魔女先生』には、見るべきものがあります。
『魔女先生』には、バルという名のマスコットが登場します。マスコットといっても、小さくありません。等身大です。人間が着ぐるみで演じています。でっかいウサギの姿です。
ウサギ型なのは、やはり、月からのイメージでしょうね。
バルの場合、マスコットというより、お目付け役です。月ひかるより、立場が上です。彼女の地球での活動を見守っています。
普通に、人間の言葉で会話することができます。けっこう、口うるさいです(笑)
普段は、月ひかるの部屋の奥にある隠し部屋にいます。
バルも、魔法を使えます。「ぱいちょ」や「すぽちょ」という呪文を唱えて、魔法を使います。こちらは、掛け声ではなくて、伝統的な呪文です。
魔法でもって、月ひかるを手助けしたり、時には、騒動を起こしたりします。
バル以前のマスコットたちと比べてみると、面白いことに気づきます。『コメットさん』のベータン、『さるとびエッちゃん』のブクと、比べてみましょう。
ベータンは、完全に、コメットさんより、立場が下でした。一方的に、ヒロインに使われる立場です。
ブクは、エッちゃんと同等です。エッちゃんとブクとは、人間の友達同士のように付き合っています。
バルは、月ひかるより「偉い人」です。ヒロインを「姫」と呼んで、尊重してはいますが、忠告めいたことを言ったり、お説教めいたことをしたりします。
だんだん、マスコットの立場が、高くなっていますね。
これが究極まで行き着くと、『魔法少女まどか☆マギカ』―二〇一一年に放映されたテレビアニメ―のように、マスコットが、ヒロインたちを一方的に搾取するようになります(^^;
とはいえ、昭和四十年代後半(一九七〇年代前半)では、『まどマギ』までの道のりは、はるかに遠いです。この時代は、まだ、マスコットという存在そのものが、定着していません。
ある程度、定着してからも、マスコットは、ヒロインと同等か、それ以下の立場というのが、長く続きます。
「ヒロインよりも偉いマスコット」を出した点で、『魔女先生』は、時代に先駆けていました。
今回は、ここまでとします。
次回も、『魔女先生』を取り上げる予定です。