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魔法少女の系譜、その20~『魔女はホットなお年頃』~


 今回も、前回からの続きで、『魔女はホットなお年頃』を取り上げます。

 本作品は、日本の伝統的な「化けキツネ」の話を、テレビでやったことに意味があります。化けキツネを出したのに、妖怪話にはせずに、「魔(法少)女」という、新しい概念を使いました。
 その結果、日本の「魔法少女もの」の歴史に、目立たずとも、重要な一歩を刻みました。のちに登場して、定着する「魔女っ子」や「魔法少女」の下地を用意したのです。

 ここで、六つの視点、改め、七つの視点で、『魔女はホットな~』を分析してみましょう。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

の、七つの視点ですね。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 『魔女はホットな~』のヒロイン、こん子は、化けキツネです。ヒトとは違う異類ですね。魔力を持つのは、化けキツネであるがゆえの、生まれつきです。
 ただし、その魔力を使うには、ペンダントという魔法の道具が必要です。

[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 こん子は、最初から、大人の女性です。ですから、この問題は、ありません。

[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 日本の伝統では、化けキツネは、ヒトをはじめ、さまざまなものに化けるとされます。こん子は、この伝統を受け継いで、キツネからヒトに化けています。

 けれども、のちの魔法少女ものとは違い、「変身」が重要な要素になってはいません。最初にヒトに化けた後は、ずっとヒトの姿で通します。事実上、変身しないも同じです。

 『魔女はホットな~』の段階では、「変身」というよりも、「化ける」のほうが、ふさわしいですね。日本古来の「妖怪もの」の要素を引きずっています。

 『魔女はホットな~』の一年後、『好き!すき!!魔女先生』が、魔(法少)女として、初めて、変身して戦いを始めます。『魔女先生』の変身は、当時流行中の変身ヒーローに、直接、影響を受けたものでした。
 しかし、『魔女はホットな~』を『魔女先生』の前段階の作品としてとらえると、魔法少女の変身のルーツには、日本の妖怪ものもからんでいると言えそうです。

[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 こん子は、母親の形見だという魔法のペンダントを持ちます。化けキツネに、魔法の道具を持たせたのは、新しいですね。

 厳密には、日本古来の化けキツネでも、魔法の道具を持つことはありました。ただし、それは、ヒトのしゃれこうべとか、呪文が書かれた巻物といった、純和風で、おどろおどろしい物でした。
 ペンダントという、洋風のおしゃれな物を持たせたところが、昭和四十年代の「今風」でしょう。

[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 『魔女はホットな~』には、マスコットは登場しません。

[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 こん子は、呪文を唱えません。魔力を使う時には、ペンダントに口づけをします。その動作が、呪文の代わりですね。

[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 こん子の正体が化けキツネであることは、秘密にされています。ゆえに、視点は、内在的です。

 『魔女はホットな~』が面白いのは、この秘密がばれそうになる「弱点」が用意されていることです。
 こん子は、「イヌに弱い」という弱点を持ちます。「化けキツネは、イヌに弱い」という日本の伝統を受け継いでいるからです。
 イヌに吠えかかられたりしたら、こん子の正体がばれてしまう危険性があります。それを避けるために、こん子は、イヌから逃げ回ります。

 この点は、『魔女はホットな~』の独創的な点です。並みいる魔法少女ものの中で、独特の面白さを出していました。
 これを受け継ぐ魔法少女ものが、非常に少ないのが、残念ですね。


 さて、『魔女はホットな~』が放映された時期には、同時に、『魔法のマコちゃん』も放映されていました。昭和四十五年(一九七〇年)十月から、昭和四十六年(一九七一年)三月までの期間です。
 この期間、日本のテレビ史上で、初めて、日本製の「魔法少女もの」が、複数、登場しました。同時期に複数の作品が並び立ったということは、それだけ人気があった(=ブームになった)ということですね。
 
 昭和四十六年(一九七一年)の三月に、『魔女はホットな~』が終わった後も、『魔法のマコちゃん』の放映は、続いていました。『マコちゃん』の放映は、昭和四十六年の九月に終わります。
 その後、昭和四十六年(一九七一年)の十月からは、魔法少女ものが、なんと、一挙に三作も登場します。こうなったら、もう、完全にブームですね。

 そのうちの二作は、すでに、この日記で取り上げました。
 『さるとびエッちゃん』と、『好き!すき!!魔女先生』です。

 残る一作を、次回に取り上げる予定です。




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