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魔法少女の系譜、その73~『続 タイム・トラベラー』と口承文芸~


 今回は、実写テレビドラマの『続 タイム・トラベラー』を取り上げます。
 前回まで取り上げた、テレビドラマの『タイム・トラベラー』の続編です。同じNHKの『少年ドラマシリーズ』で、放映されました。『タイム・トラベラー』と同じ、昭和四十七年(一九七二年)のことです。

 『少年ドラマシリーズ』のドラマは、一つの物語を、五~六話くらいでやることが、多かったです。一クールもないんですね。『タイム・トラベラー』は、全六回で、『続 タイム・トラベラー』は、全五回でした。

 『続 タイム・トラベラー』でも、主役は、芳山和子です。ケン・ソゴルも登場します。

 前作の和子は、中学三年生でした。『続 タイム・トラベラー』では、進学して、高校一年生になっています。
 和子は、ケン・ソゴルに、記憶の一部を消されています。このために、タイム・トラベルのことも、ケン・ソゴルのことも忘れて、平凡な高校生活を送っています。
 ところが、二十七世紀の世界へ帰ったケン・ソゴルから、和子にテレパシーが送られてきます。未来のケン・ソゴルの世界で、不測の事態が起こり、ケン・ソゴルは、どうしても、和子に連絡を取らなければならなくなりました。

 ケン・ソゴルの二十七世紀の世界では、タイム・トラベルの技術が確立しています。二十七世紀の人々は、二十一世紀の世界に基地を築いて、そこを、時間旅行の基点にしていました。
 もちろん、『続 タイム・トラベラー』の舞台は、基本的には、二十世紀です。ヒロインの和子が生きているのは、一九七〇年代の日本です。

 ケン・ソゴルは、二十七世紀から、二十一世紀の時間旅行基地へ来ていました。そこから、和子に呼びかけたのです。和子は、テレパシーに導かれて、二十一世紀で、ケン・ソゴルとの再会を果たしました。
 ケン・ソゴルが言うには、二十七世紀の人間が、安全に、確実に、タイム・トラベルできるのは、二十一世紀までです。なぜか、二十一世紀と二十世紀との間に、厚い時間の壁があり、そこを通り抜けるには、大量のエネルギーが必要だと言います。
 二十一世紀の世界に、二十七世紀人の時間旅行基地が築かれたのは、このためでした。

 しかし、二十世紀人の和子などが、二十一世紀へ行くぶんには、「厚い時間の壁」が、存在しません。簡単に、往来できます。この能力を見込んで、ケン・ソゴルは、和子に頼みごとをします。

 二十七世紀の時間研究者三人が、二十世紀の世界へ行き、行方不明になりました。この三人を探して欲しいと、ケン・ソゴルが頼みます。二十七世紀の人間を、二十世紀に放置することは、決してできないのでした。歴史の改変を防ぐためです。
 戸惑いながらも、和子は、その頼みを受けます。二十世紀と二十一世紀(ケン・ソゴルの基地)を何度も往復しながら、和子は、三人の研究者を探します。

 ネタばれは、なるべくしたくないので、和子の探査結果がどうなったかは、書きません。
 物語の結末だけを書くと、ケン・ソゴルは、再び、二十七世紀へ帰ります。和子は、二十世紀の日常へ戻ります。和子の記憶は、またもや、ケン・ソゴルによって操作され、タイム・トラベルや、ケン・ソゴルのことは、すっかり忘れられます。

 こうして見ると、『続 タイム・トラベラー』は、前作の『タイム・トラベラー』や、小説の『時をかける少女』と、まったく同じ構造なのが、わかりますね。
 異世界からやってきた少年が、普通の世界の少女と出会います。その少年によって、少女の超能力が覚醒させられ、冒険に出ることになります。少年と少女との間には、淡い恋が生まれます。けれども、最後には、少年は異世界へ帰り、少女は、日常へ戻ります。典型的な異類訪問譚ですね。

 『続 タイム・トラベラー』が放映された昭和四十七年(一九七二年)には、タイム・トラベルやテレパシーといった言葉が、まだ、とても新鮮でした。こういった言葉が登場するだけで、画期的でしたし、視聴者を惹きつけることができました。
 そういった要素があれば、何も、複雑な構造の話にする必要は、ありません。それでなくとも、タイム・トラベルのために、ドラマでは、ひんぱんに舞台が入れ替わります。視聴者の混乱を防ぐためにも、話の構造は、単純で、典型的なほうがいいでしょう。

 こうして、『続 タイム・トラベラー』は、口承文芸の伝統を引き継いだ、わかりやすい構造となりました。甘酸っぱい青春の味わいも、前作と同じです。

 今回は、ここまでとします。
 次回も、『続 タイム・トラベラー』を取り上げる予定です。



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