
舞台感想 宝塚歌劇 星組公演 1789
7/2更新
初日の開演時間が、変更されるというドキリとするニュースがHPに発表され、ああ、まだコロナ禍は終わっていないと思いつつ、台風のニュースにも耳を傾けていたのは数日前のこと。
初日のチケットを手に入れることができ、楽しみで楽しみで仕方なくってワクワクしていました。
JRが運休になるかもしれないということで、実家に泊まる段取りをしてムラに向かいました。
観劇前にフェリエでお友達とランチをする約束をしていたので、お喋りする楽しみもあって、行きのJRの中ではワクワク、ソワソワ。
ムラに到着したのは11時ころでしたが、台風の影響で結構の雨でした。
でも、すでに劇場には大勢のファンがおられて、星担の皆様のワクワク感がはんぱないなあと感じました。
でも、何が起こるかわからないと心の片隅に「覚悟」を隠しつつ、開演までの時間を、おしゃべりに費やして楽しい時間を過ごしました。
そうそう、私は知らなかったのですが、「初日に」フェリエで食事をする場合は「公演にちなんだヴィオレランチ」をお選びください。
きっと、いいことがあります!
そして、開場の時間となりました。
よかった!
代役の表示もなく、初日の幕が上がる。ワクワク!
そして、大感激の内に終演となりました。
全員そろって初日の幕が下ろせたことにことちゃんもホッとしたように挨拶をされていて、ファンの拍手も熱い、熱いものでした。
だって、素晴らしかったのだもの。
これは、語り継がれると確信できる作品に仕上がっていました。
初日なのに、この仕上がり。
体調不良者がでたというこの不安な状況の中で、よくぞ、これほど仕上がった素晴らしい舞台を見せて頂けるとは……
作品に対する感動と共に、星組組子の凄まじい努力の結果を見せて頂けたことがダブルで胸にきて、目頭が熱くなりました。
素晴らしかった、凄かった、全員良かった!
演出の変更点も良かった。
お稽古時間も制限され、新演出に小池先生の厳しい檄も飛んだだろうに、こんなに仕上げてきたなんて、奇跡のようだ!
そんなことを友と語りながら帰路につき、うっとりしながら実家に行くと、施設にいる母が「コロナ感染した」と聞きました。
以前、一度感染したのだけれど、その時は二類だから診察もありましたが、今回は五類ということで、対症療法として解熱剤を飲んで休んでいるだけのようです。5日間は隔離されるとのことですが、高齢だから心配です。
ああ、やはりコロナ禍は終わっていない。
不安に思いながら眠って翌朝……
ライン通知の音と、宝塚歌劇という文字にビクリ!
ああ、なんてこと……
こころの片隅で「ああ、初日を観ることができてラッキーだったわ」という気持ちもあるけど、なによりも体調不良者の体調が心配です。
夕方には8日までの中止が発表になったけれど、体調不良者に無理がかからないように、そしてその人数がふえないように祈るばかりです。
でも、初日を見た感動は別物。備忘録も兼ねて感想を書いてみます。
ネタバレありの舞台感想です。
月組公演ではロナンがバスティーユの門の鎖を切って門を開けるというシーンから始まったと思うのですが、今回は農村で働く農民たちのシーンから始まります。税の不払いで逮捕されるロナンの父親とペイロール伯爵に抵抗するロナン。
大柄な輝月ゆうまさんが、一層大きく見えて貴族の横暴さの象徴のように見えました。
何故、ロナンがパリへ行こうとするのか。
時系列になったので、それがよりわかりやすく感じられました。
パリで、デムーラン、ロベスピエールと出会うロナン。月組版では、ロナンがお腹ペコペコでふらふらしていたと思うけれど、今回は食べるに困っている人の存在としては乞食がいて、ロナンはデムーランやロベスピエールに対して農民だけど自分の意見を持った若者だということが強調されています。
その後印刷所で三人の絆が深まります。
農民だったロナンがデムーランやロベスピエールの影響を受けながら、革命に参加していく。三人の歌はすっごく良かったです。
そして、マリーアントワネットのお衣装が印象的な、宮廷のシーン。
もう、絶対に素晴らしいだろうと予測していたとおり、くらっちのアントワネットは、少女のような愚かさと純粋さと、母としての愛情深さと、女としての切なさを兼ね備えたなんとも魅力的なアントワネットです。(もちろん、それがわかるのは最後まで見てだけれどね。でも、この華やかな登場シーンからそれを予測させる空気をまとっているのですよ)
そして、せおっちのアルトワ伯。お化粧から他の人とは違って一瞬、せおっちとわからない程。魔王感もあるのだけれど、中身は人そのもの。人を支配することが自分の権利だと信じ込んでいる傲慢な貴族そのものです。
そして、ラマールたち三人は、この作品の道化としての役割を見事に果たしていて、こういうクスっとできる笑いは好きですねえ。
そして、オランプ。
仕事に対する真摯さと、王妃様に対する忠実。
うわべだけの忠実を見せるポリニャック夫人との対比も感じられます。
まあ、なこちゃんがかわいい!
ま、こんな調子で感想を書いているときりがないので、はしょりますが、今回は前回と違い、トップコンビが愛しあい、身分違いの愛に悩むという設定なのが良いですよね。宝塚らしい王道ラブストーリーになったって感じです。月組版では、二人が恋に落ちるのが急で、説得力に欠けたと思うのですが、今回はオランプが心境を歌うシーンなどがあって、二人が愛し合う流れが自然に思えました。
ほぼ前作を踏襲しながら、ロナンとオランプの感情や、ロナンとデムーラン、ロベスピエールとの絆や反発をより強く感じられるようになっていて、良い演出だなって感じました。
小池先生、グッジョブ!(って偉そうに……)
007をボロクソに言ってごめんなさい。
ありちゃんは、赤と黒の時に何かスイッチが入った感じがしたのですけれど、今回は一層頼もしく感じられました。
ことちゃんの歌は役の感情がストレートに伝わってくる上に、声が良い。
芝居するように歌う、芝居の中で歌う。
あまりにも自然で、ことちゃんの歌を聞いていると「ミュージカルって急に歌いだすでしょう」って言うミュージカル嫌いでも、絶対納得するんじゃないかと思います。
そして、そういうトップスターを見ている組子たちの歌が、全員良くなっているのが凄い!
ありちゃんも、きわみも、とにかく歌が良くなっていて、感情を感じて、聞いていて心地よいです。
ことちゃんの姿を見て、歌を聞いて、盗んでいるのか?
ことちゃんから具体的に教わっているのか?
きっと、その両方なのだろうけれど、皆さんの素晴らしい歌声とそのチームワークの良さに、時間を忘れて作品に見入ってしまいます。
もちろん、くらっちのアントワネット、ほのかさんのソレーヌの美しい歌声も最高。
そしてステラヴォイスで存在感を増したぴーすけの表情の豊かさが素晴らしいです。ダントンという人間はこんな人間なんだろうなって思わせる存在感や目を奪う華は一層強くなっているように思いました。
そしてせおっちの歌唱指導。
魔王っぽい凄みのある美しさのアルトワ伯から、ピンクのお衣装で微笑む歌唱指導への変貌に、変な声が出そうになりましたわ。
ああ、美しい……
そして、真ん中に立つことちゃんの姿。
劇場で組子を率いて作品を作り上げる現実世界のトップスターとしての熱い思いが、舞台の上のフランス革命のパリに生きる架空の青年の熱い思いに重なるように力強く見える。
絵空事であるはずの舞台だけれど、ことちゃんのロナンは観客をフランス革命のパリに引きずり込んでしまう。
そんな奇跡のような作品を見せてもらった気がします。
ま、とにかくね。
作品良し。
音楽良し。
主役良し。
主役を支える周りの演者良し。
下級生の誰一人として手を抜かないパワーみなぎる演者の姿。
一人一人の役が、舞台の上で時空を超えて生きている感じ。
小池先生のご指導が、役としての一人一人の汗の中に見えた気がしました。
最初から最後まで、何一つひっかかるところを感じずに、ああ、面白かった、楽しかった、良かった!と思って見終える作品は久しぶりだなって感じます。
まあね、これが輸入ミュージカルでなくて、オリジナルだったらもう大絶賛なのだけれど……
どうして、海外ミュージカルの方が作品の作りが上手いのか?
そこだけが、今後の宝塚の課題かなって感じました。
ということで、初日を見て感じたことを書いてみました。
二度目、三度目の観劇が叶ったなら、その時の感想を追記してみたいと思います。
とにかく今は、体調不良のジェンヌさんが回復され、心身ともに健康な状態で公演が再開されることを祈るばかりです。
二度目の観劇感想を追記します。
18日から公演が再開されました。
幸い二度目の観劇が叶い、これがマイ楽となりました。
初日以上の熱さを感じる舞台で、ジェンヌさんたちが休止期間も、気持ちを保ち、いや、高めて再開に備えておられたことがひしひしと感じられ、それだけで胸が熱くなりました。
今回のお席は上手花道近く。逃亡するロナンがオランプと降りて来る階段そばだ!って観る前からちょっと興奮気味でした。
でもね、見始めるとそういうファン心理すらすっとんでしまう程、物語に没頭してしまいました。
物語も素晴らしいですが、作品と演者全員の相性が良いです。
どの役柄もぴったりとはまっていて、役名のない人々の生きざままで感じられました。衣装や動き、くやしい表情。すべての演者を観ることはできないけれど、全員が「その時代に生きている登場人物」に見えて、その集中力は素晴らしいなって思いました。
休演期間があったからこその団結力のようなものを感じました。
民衆のパワーがどんどん大きく、強くなっていく様子に本物の「人の悔しい思い」というものが感じられ、強い歌声に「舞台で歌える喜び」のようなものを感じました。
休演も一つの経験として感情の奥行きを一層深く演じておられるように感じられて、タカラジェンヌって本当にすごい人たちだなあって感動を覚えました。
星組生であるせおっちを見るのはこれで最後か、くらっちの歌声を生で聞くのはこれで最後か、なんて思ってしまうと淋しくなって、物語への涙とは別の涙がこぼれて感情が忙しいです。
でも、若手や下級生がフィナーレで煽ってくるのを見るとなんとも将来が楽しみで、宝塚の新陳代謝そのものを私は愛しているのだなあって感じます。
もう、最初から最後まで一秒の無駄もなく楽しめ、感動できる大、大、大満足の作品でした。
これで生の舞台は最後なので、あとは、配信で楽しむことにします。
見終わってふと思いました。
この物語では、ロベスピエール、ダントン、デムーランの仲の良さがとっても素敵で見ていて思わず微笑んでしまいました。
でも、考えて見れば史実としての側面もあって、彼らがこのあと「ひかりふる路」の物語へと変貌していくんだよなあ……なんて思ってしまうと、歴史の残酷さを感じてしまいます。
今現在、ウクライナで繰り広げられている戦争も、権力者の無謀と民衆の抵抗なのだと考えれば、わかっていても戦争を繰り返してしまうによる人間の不条理さを感じます。そして崇高な目標で人々を率いていた人間が、権力を手にすると変貌してしまう歴史的事実も繰り返されているように感じます。
日本という平和な国で、舞台を楽しめる幸せをひしひしと感じています。だからこそ、永遠に日本が平和な国であることを望まずにはいられません。
コロナ禍はまだ終わっていないけれど、今年はタカラヅカスペシャルも開催されると発表されましたね。
友会さんがお友達になってくれるといいけど……
星組が千秋楽まで無事走り抜けられますように。
そして、素晴らしい公演をありがとう。
千秋楽配信を観て、追記です。
本当に、最初から最後まで堪能できる作品でした。
中止にも見舞われたけれど、客席降りや声出しが解禁になった喜びや、組子のモチベーションの高さが凄くて、また、それを引っ張っていたことちゃんのパワーが凄くて、今の星組は本当にパッション溢れる組だなと感じます。
それにやっぱり、曲がいいよね~
そして、上手く歌詞がのっかっていて、説明臭くならないのに感情や状況がよくわかって本当によかった。
オランプの「許されぬ愛」を一幕10場に入れたのは、本当に説得力があってよい演出だったなあ~って今日も改めて感じました。
フランス革命という大きな時代のうねりを描きながら、ラブストーリーとしても説得力があって、本当にこれは良い作品に仕上がっているなあって今回も感心しました。
それと、まゆぽんとことちゃんの同期の信頼関係の素晴らしさも実感。
配信だからまゆぽんがことちゃんの顔すれすれを蹴っ飛ばしているシーンがはっきり見えて、ヒヤリとするくらいなんだけれど、ことちゃんが逃げないのは信頼関係があるんだなって思うと、いやあ、もう宝塚のそういうところすっごい好きだなって改めて感じました。
そして千秋楽だから、ご卒業される方のキラキラの美しさに目がくらむ。
特にみほちゃんのアントワネットの素晴らしさは伝説になりそうなくらいだと私は思うので、本当に見事なご卒業だと思いました。
ハードな公演だから、星組組子の皆さんが、体を休めて東京公演を無事に走り抜けられることを心からお祈りして、1789の舞台感想とします。
文句のつけようのない、本当に素晴らしい舞台でした。
過去の舞台感想はこちら
宝塚歌劇 舞台感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)
宝塚以外の舞台感想はこちら
宝塚歌劇以外の舞台、映画感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)