読書感想文 阿津川辰海 入れ子細工の夜
ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル 入れ子細工の夜
作者 阿津川辰海
出版社 光文社
あらすじ
危険な賭け~私立探偵 若槻晴海~
撲殺された牧村が持つ本「まだらな雪」を探すことを依頼された私立探偵若槻晴海。牧村は喫茶店で同じ鞄を持った人物と鞄を取り違えたようだ。間違えた鞄に入っていた古本から間違えた鞄の持ち主を探す若槻だが……
殺人犯と若槻には意外なつながりが……
二〇二一年度入試という題の推理小説
K大学の入試の小論文は推理小説を読んでの犯人あてだという。世間ではめちゃくちゃな試験だと非難ゴウゴウだが、これは次期学長を狙う和田と木崎の策略か? だが、出された小説と大学が正解とする犯人は稚拙。もっと、深く考えれば他の解答も存在する。だが、大学は他の解答を導くヒントをすべて訂正し、大学の出した解答が唯一無二の正解だと言うのだが……
入れ子細工の夜
作家は新人編集者相手に、密室殺人の筋書きを実行し設定に矛盾がないかを確認したいと言う。その結果、作家の部屋には編集者の指紋の残ったナイフと編集者がダイヤルを開けた金庫が残された。
実は、新人編集者は作家の妻の不倫相手。作家は編集者にある罪を擦り付けようとするのだが……
実は、この話は舞台作品の内容なのだが……
現実と小説と舞台作品が入れ子細工のようにからんで……
六人の激昂するマスクマン
公民館で開かれた第五十回全日本学生プロレス連合の総会に集まったのは、ズルムケ・マランプ、バイオレット・ボア、ウルフ山岡、ホークアイ鷹城と俺ファントム・ザ・グレート。シェロンマスク四十九世とリングアナウンサーの坂田が合流する予定だ。
だが、シェロンマスクのマスクをかぶった坂田が現れ、シェロンマスクの中の人、羽佐間二朗が殺され、その犯人がこの中にいると言う。
坂田が皆を問いただし、それぞれの真実が明らかになる中、マスクに隠れて偽物が紛れ込んでいることがわかる。そして真犯人がわかるのだが……
感想
いやあ、この作家さんは、本当にミステリー大好きなんだなあって思います。ミステリー愛がすごい!
私は、あまり詳しくないので、読んでみなくっちゃなあって思います。
「二〇二一年度入試という題の推理小説」っていうのがかなりユニークな作品で、この作品でいいたいことが私はすべて理解できたとは思えないのですが、なんだか風刺がきいていて楽しいです。その中で、
小論文の犯人あての「出題範囲」ってのがあるんですよ。
鮎川哲也「薔薇荘殺人事件」「達也が嗤う」
高木彬光「妊婦の宿」
エラリー・クイーン「オランダ靴の秘密」
綾辻行人「鳴風荘事件」
有栖川有栖「孤島パズル」
ああっ、どれも読んでいない。
でも、きっと、これらはおすすめミステリーなんだろうなあって感じます。
どれも読んでいないわたしゃ、受験生にはなれない~
まあ、この出題範囲が出て、本がなくなって転売ヤ―から買うなんていうのも笑えます。
とにかく、様々な目線や引き出しをお持ちの作家さんで、ユニークです。
それと、「トリック」をすごく考えておられるなと思います。
私は、じっくり読まずに流し読みするタイプなので、「叙述トリック」苦手なのですが、謎が解かれるとそうか~ってなりますね。
「入れ子細工の夜」は、本当に物語が入れ子のようになっていて、この方の頭の中はどんなふうになっているのかしら?って感じます。
こういう若い作家さんは、これからどんな名作を生みだされるのか楽しみです。この作家さんの作品は、「透明人間は密室に潜む」を初めて読みました。これは、どれも発想が面白くて、それぞれにつっこみどころはあるけれど楽しく読めたのですね。
殺人して密室に潜む透明人間、たまたまオタクだけで構成された裁判員、やたら耳の良い探偵助手、船を舞台にした脱出ゲーム。様々にトリックを考えてあって楽しかったです。
で、次に読んだのは長編、蒼海館の殺人です。感想はこちら
今回は、三冊目。
こちらもミステリーを色々よんで、ミステリーマニアになってから読むと
もっと、ムフフって思えるのだろうなあ……
ユニークな作品でした。
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