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宝塚歌劇 桜嵐記 二度目の舞台感想
宝塚歌劇月組公演桜嵐記、二度目の観劇をしてきました。
残念ながら、月組公演はこれで見納め。
コロナ禍で、観劇回数が減った分、一回の観劇での集中力が増したように思います。
一回目の感想はこちら。
https://note.com/otobokedansyaku/n/n28256acdc780
備忘録をかねての完全、ネタバレ舞台感想ですので、未見で知りたくない方にはお勧めしません。ご了承ください。
前回は、ウエクミさんが拍手まで演出をしていて驚いたと書いたのですが、今回は客席が暗くなるとすぐに開演アナウンスがあり(拍手ありましたね)その後、老正儀が登場します。もう客席もわかっているようで、珠様登場まで拍手はありません。拍手なしで作品に集中できるというのは、お芝居では良い事だと思います。
南北朝の説明から、プロローグまでは、スピーディでかつ勇壮で華やか。
一転、高師直の好色さと、北朝は公家より武士が力を持っていることを濃い芝居で見せます。紫門さんの、好演が光ります。
そして弁内侍が襲われ、正行が助けるシーン。前回は、弁内侍が一人で行こうとする時に「女一人では犯されるのが関の山」的なセリフに心がざわついて、「乱暴されるぞ」くらいにして欲しいなあと感じたのですが、今日はまるで違和感なくセリフが入ってきて、不思議でした。なんでしょう、セリフ回しが違うのか、私が慣れたのか?だから、舞台って面白いですよね。
そして料理上手の正時のコミカルなシーンから、敵兵を助ける正行とそれを責める弁内侍。お金の為に兵士になった百姓の悲哀を訴えながらも、公家の命令なら切り捨てると言う正行に心を揺らす弁内侍。正成に恩を感じる百姓からの差し入れで、敵味方入り乱れて暖かな食事をし、弁内侍の心も解きほぐれていきます。
民歌というのでしょうか、皆で歌って踊る。この、民歌が、ここでは楽し気に、後には悲しく使われるのも上手い演出だと感心します。
家に戻った正時と百合の夫婦愛を見せてから、吉野に向かう道中。
正行と弁内侍の心が愛情へと変化していくさまを、コミカルに描いています。
一方、尊氏側は、高師直が正行をねじ伏せると意気込んでいます。
この時尊氏の付き従っている花一揆という美少年グループが娘役さんで、その美しさにどきっとしちゃいます。
そして、吉野。
正行達武士を見下す公家たちの前で、北朝と和睦したいと言う正行。公家たちの身勝手な反対に、後村上の気持ちを聞く正行。
後村上は、もう、誰も死なせたくないと思っているのですが……
後醍醐天皇の亡霊とも思える存在と共に、無念の中で亡くなった死者たちが現れます。北朝に復讐し、我が手に政権を取り戻したいという死者たちの思いに、死者とつながりを持つ者達は引きずられていく。愛あるがゆえに、父や息子を裏切れない人の心の葛藤を描いていくので、公家の命令に従って戦いに進む正行の行動が納得できるのです。
やはりこういう、登場人物の行動の理由というのが明確だと、共感でき見ていて感動できます。
そして、正行と正儀の葛藤。父は北朝ではなく、南朝に殺されたのではないかという正儀。何のため戦うのかと問う正儀。幼い日の思い出をはさみながら、大人になった正行、正儀は戦う意義をみつけられたのか……
桜にはまだ早い庭で、弁内侍を正行にめとらせようとする後村上。
命の保証のない自分と一緒になることで弁内侍を悲しませたくない正行は、和歌にのせて断ります。なんと、雅な……
悲しみを一人歌う、弁内侍に涙。さくらちゃん、心に響く歌を歌うようになったなあ……
そして楠木の家には、尊氏が正行に北朝への寝返りを勧めに来る。百合の父が寝返ったことで、正時の心もゆれる……
この命、大きなものの為に使うという正行。
「流れ」と表現されるものは、何なのだろう?
平和に向かう歴史の中の一つの出来事として、彼の死が、平和のきっかけとなるのなら、その流れに身をまかせるということか?
自己犠牲の愛、悲しい結末へ向かおうとする正行の姿、そして自由にするように言われた弟たちが兄に従う姿に、涙が零れます。
そして桜嵐の中、別れをつげる正行と弁内侍。
おばちゃん、号泣中です。
そして四条畷の戦い。勇壮な戦いのシーン。正時の心の迷いとならない為に自害した百合の話を持ち出し、正時の剣を鈍らせようとする卑怯な舅。戦いの合間にも、”心”を見せる演出。憎いなあ……
正時が逝き、正行も息絶えようとする時、正行が命を助けた雑兵たちがかけつける。号泣中のおばちゃん、マスクの下で呼吸困難中です。
正儀に生きろと命じ、残りの命は一人の女に捧げるという正行。
40年後、その最後の言葉を老正儀が老弁内侍に告げ、出陣式の日に思いをはせる……
まさにフィナーレと言う感じの華やかな出陣式。
悲しい話の最後を盛り上げて、ビジュアル的にも本当に美しい最後です。
「お別れを、皆さま」
珠様のご卒業と正行の出陣を重ねる言葉に、号泣し、幕が下ります。
なんという、名作!
久しぶりに、宝塚歌劇としての名作が現れたと感じました。
最近のウエクミさんの作品、サパは消化しきれていない感じがし、fffは、素晴らしいけれど謎めいていて、のぞ様まあやの歌唱力、表現力、演技力があってこその作品だったと思っていたのです。
この桜嵐記は、作品そのものが完成されていて、珠様のご卒業にあわせている部分も見られますが、将来、違う組、違う演者での桜嵐記も観てみたいと感じました。
それにしても、続けざまに、毛色の違う多彩な作品を発表するウエクミさんの才能たるや凄まじい!
次回作が楽しみだなあ~ いつかな~いつかな~
それにしても、今回の月組の皆さんの集中力の素晴らしさ。
トップから下級生に至るまで、作品にのめりこんでいたように感じました。
丁度、すーさんのnoteの記事で、「作品の声」について書かれていましたが、それか!と思いました。
最初に台本を読んだときに聞こえる「作品の声」があるのだそうです。
作者の思い、エネルギーを最初の一読で感じ、共感する大切さがあると書かれていました。なるほど、今回の素晴らしい作品の出来は、月組組子の皆さんの心が、物語に恋した結果の集中力ではないかと感じました。
すーさんの「作品の声」の記事はこちら
https://note.com/tokayurino2000/n/n00008f910d0a
ショー、Dream Chaserは、あっというまに終わってしまう楽しいショーで、一回目の感想はこちらです。
https://note.com/otobokedansyaku/n/n509bf268417c
ほぼ、印象は変わらないのですが、追記するとすれば、スパニッシュの時の、娘役さん達の群舞がよかった。
それとK-POPのところのれいこさんのラップ。あまりに、楽々と歌われるので、一回目の時には印象に残らなかったのだけど、まあ、素敵!
それと、黒燕尾。数人の男役さんとお別れのダンスをした後、珠様一人で踊る黒燕尾の動きが丁寧で、一振り一振りを大切そうに踊られるのに、ぐっときましたね。
最後にもう一つ。
やはり、オーケストラのある素晴らしさ。オケの皆様にも感謝です。
楽しい公演をありがとうございました。