ショッキングピンクに染まった歯のはなし。
私は小学校のとき、
健康診断の歯科検診が
楽しみで仕方なかった。
その理由は
父親が歯医者で、
小学校の歯科検診を
手伝いに来ていたからだ。
検診のときには、
だいたい4~5人の
歯医者さんが来るから、
父になるかは運次第。
待っている間ソワソワする。
だが、父に当たれ!
と祈っているわけではなく、
むしろ父じゃない先生に当たれ!
と思っていた。
なぜなら、
毎晩父に仕上げ磨きをしてもらっている
自慢の歯をお披露目できる
せっかくのチャンスだからだ。
父じゃないときこそ、
どうぞご覧あれ、
と誰よりも口を大きく開けていた。
中学校にあがってから、
検診に父が来ることはなくなったけど、
ずいぶんと大きくなるまで
仕上げ磨きをしてもらってたから、
毎回自信満々だった。
大学生になったら、
歯の検診がなくなった。
と同時に仕上げ磨きもなくなった。
だが、今の私の歯磨きには余念が無い。
スキンケアには1時間かけます
と言う美容系YouTuberがいるけど、
だったらこっちは歯磨き系YouTuberだ
と言えるほどに、
こだわりをもって時間をかけている。
私の歯磨き方法をここで紹介しよう。
①1つの歯間も飛ばさず丁寧にフロスをしていく。
②やわらかめの、ブラシ部分が少し大きめの歯ブラシで、歯の表面を磨く。
③普通の固さの、ブラシ部分が小さめの歯ブラシで、奥歯や歯の裏側を磨く。
④赤ちゃんの歯を磨く用の、
細い歯ブラシで歯の溝や、歯の間を磨く。
ちょっと磨きが足りないなと思った時は
電動歯ブラシを追加する。
これをしっかりやっていれば
30分はかかる。
これを毎晩。
そんなある日、父が
「歯の汚れチェックする?」
と聞いてきた。
いやいや、
私にはそんなもの必要ない
と思いつつも、
まぁ私の技術を見せる時だろう
と、やってみることにした。
ピンクのような、紫のような、
若干毒々しい液体でうがいをすると、
磨き残しがある歯が染まるという。
特に味はしないその液体でうがいをして、鏡の前で"いー"としてみる。
え。
鮮やかなショッキングピンクの前歯が
お目見え。
え。
今度は"あー"と口を開けると、
前から奥の歯にいくにつれ、
ピンクから白にグラデーション。
つまり、前歯が磨けていなくて、
奥歯が磨けているということ。
え。
普通、
前歯がキレイで
奥歯が磨けていないんじゃないの??
「あー、
よく磨く人って前歯磨き残すんだよねー」
と父。
え。
私、典型的なキレイに磨けてる
と"思ってる"人になってる??
あんなに時間かけてるのに?
あんなに手塩にかけてるのに??
たしかに思い返せば、
わざわざ小さい歯ブラシを使って
奥の歯はケアしてるけど、
前歯は大きめの歯ブラシで
撫でているだけだった。
幸い、虫歯はなかったものの、
ショッキングピンクに染った歯は
文字通りショッキングだった。
さて、私が小学生ながらに立てた
人生の目標は
死ぬまで歯を1本も失わないこと。
できれば虫歯も1本も無し。
だが、その前に、小さな目標ができた。
もう二度とあのショッキングピンクを
出現させないこと。
久しぶりに
父に仕上げ磨きを頼んでみようか。