おばあちゃんへの最後の報告。
「生きてるといいこともあるんやなぁ」
病室のベッドで横たわるおばあちゃんはそう言った。
涙をこぼしながらくしゃくしゃの笑顔で。
少し寂しげにも見えたのは、私だけだろうか。
それとも、人は嬉しい時、少し寂しげな表情も見せるんだろうか。
そんなことを思いながら、おばあちゃんに
「ありがとう。でもまだまだこれからもたくさんあるよ・・」
そう返すのが精一杯だった。
おばあちゃんに会えたのは、結婚を報告したその日が最後だった。
三週間後におばあちゃんは息を引き取った。
* * * * * * * *
母から「次こっち帰ってくる時、おばあちゃんの病院に行こう」と連絡が入り、久しく会いに行けてなかったおばあちゃんが入院する病院へ向かった。
おばあちゃんはもう先は長くないらしいということを病院へ向かう車の中で聞いた。
どんな顔して会ったらいいんだろう何を話そうって考えていたけど、いつもと何も変わらない感じでいいんじゃないかと思って、病室へ入った私たちは「今日は何を食べたの?」だとか「最近はこんな仕事をしているんだよ」とかそういう他愛もない話をした。
母から「ほら、あのこと、話したら?」と振られ
「おばあちゃん。私ね、結婚するんだ」
と言った。
そうすると、今までシワシワの顔でニコニコ話していたおばあちゃんは
「おめでとう。そうかそうかぁ・・・」
「・・・生きてるといいこともあるんやなぁ」
涙をこぼしながらくしゃくしゃの笑顔でそう言った。
少し寂しげにも見えたのは、私だけだろうか。
それとも、人は嬉しい時、少し寂しげな表情も見せるんだろうか。
いや、違う。
おばあちゃんは自分に残された時間があと僅かなことを悟っていたんだろう。
いつも自分のことは後回しで家族や孫である私たちの心配をしてくれたおばあちゃん。
生きてる間に、泣けるくらい嬉しくて幸せな報告もっといっぱいできてたらよかったのにな。
今でもおばあちゃんの味が恋しいよ。