「美術館女子」について思うこと
カメラ女子、歴女など…今まで「〇〇女子」というフレーズが度々メディアで使われてきた。
消費や観光の落ち込みが堅調になる中、集客は大きな問題だ。美術館も例外ではないのは明らか。人を呼ぶために「美術館女子」の企画を立て、今までとは違う層を取り込みたいというのも理解できる。
が、私はこの企画に嫌悪感を覚える。
https://www.yomiuri.co.jp/team8/art/20200612-SYT8T1271142/amp/?__twitter_impression=true
美術史を学んできた人間として、美術館が中学生の時から好きな人間として、1人の女性として、この企画に抗議したい。
理由は
1.美術館は「映え」のための施設ではない
2.様々な差別による問題、事件が報道されている中での「〇〇女子」を使用したこと
3.添付された写真について
この3つだ。
まず1について。
当たり前だが美術館は「写真を撮る」所ではなく「観賞」するところだ。たしかに美術館は建物自体が文化財に指定されていることもあるし、何より計算されて設計してあるから撮りたくなる気持ちは分かる。
だがこの記事を読んで「展示物の前でも写真を撮っても良い」と勘違いした人が増えたら?フラッシュを使われたら?著作権は?
実際、展示室に配置されているスタッフの目を掻い潜って撮影している人を見たことが私にもある。それも1回だけではない。展示物の近くに寄って撮る人もいた。それで万が一の事が起きたら、誰が責任を取るのだろうか。
2については言うまでもない。なぜ「女子」に限定するのか。使い易い単語だから?というか、「美術館が好きな人」ではダメなのか疑問だ。キャッチーさが足りない?そんなこと言うなら自分で新しい表現を考えればよい。
たまに「女性がアートを理解できる訳がない」と思っている人がいる。私も屋外展示を見に行った際、ある人に永遠と作品について解説されたことがある。性別で判断しないで欲しい。
そもそも解説は要らない。解説されるくらいなら文献を読むし、教授に質問する。「逃げれば良いじゃん」という意見を聞くが、田舎の屋外展示は助けを求められる程人が居ない。人が居たとしても、その人も観賞してるから邪魔したくない。
簡単に「自衛すれば?」なんて言わないでほしい。
最後の3について。
美術館にはマナーがある。
・音の鳴るヒールやアクセサリーを着けない(スニーカー推奨)
・リュックを含む大きい荷物はロッカーに預ける
・会話は最低限、小さな声で
・ボールペンやシャーペンを使わず、鉛筆を使う
・人気の展示物の前で長居しない
・撮影を許可されている展示物を撮る時は順番を守る
・飲食をしない、する場合は許可された場所で
など。
例の写真を見るとヒールを履いているし、撮影のために長時間展示物の前に居たことも予想できる。
もし「アイドルと同じ構図で撮りたい!」という方が殺到したら…と考えると複雑な気持ちになる。
最後に大きなカメラを持ちながら展示物を見る人について。
邪魔!!!
ロッカーに預けろ。ロッカー代を惜しむな。その大きなバックのせいで、楽しみにしてた展示物を見れないんだよ。
モデルと話すならロビーに行け。とにかく邪魔。
美術館に身近になってほしい。
その思いはこの企画を立てた人達も私も同じだ。
ただ方向性が違うだけで。
美術館は楽しい
この記事を読んで「美術館ってハードルが高いな…」と思う人も居るかもしれない。
でも、一歩踏み出してみてほしい。絵画や彫刻が分からなくてもいい。最初は美術館に行って空気感を楽しむだけで十分だと私は思う。特に学生の方は安く入れるし。学校によっては入館料が無料のところもある。
画面で手軽に見ることもできるけど、やっぱり実際に見ると違う。カメラのフィルターごしじゃなくて、目で見てほしい。