新茶の季節到来!川根の茶羊羹を全5種食べ比べ
4月中旬には先駆けてお茶のセリが行われ、八十八夜を迎えるゴールデンウィークに入ると新茶の季節の訪れを感じる。
静岡県民の多くが口に出さずとも「もう新茶が出たかな」などと、ふわりと頭に浮かんでしまうものだ。
それほど静岡は茶処で、県内にはお茶の産地が点在する。
その中の一つが川根茶で知られる川根本町。
今回は川根でしか味わえない川根茶を使った羊羹をご紹介したい。
日本茶の産地・川根の茶羊羹
新茶の時期になると、川根出身の方から茶羊羹をいただくことがあった。
茶羊羹というとまず抹茶羊羹が思い浮かぶだろうが、いただいた羊羹はまさに緑茶の羊羹。
つまり「静岡と言えば?」と聞かれたら先ず思い浮かべる、あのお茶の味なのだ。
甘さの中に、煎茶の爽やかな風味を感じ、とても気に入ってしまった。
それから調べてみると、どうやら川根には茶羊羹を作っている和菓子屋さんがいくつかあるようだった。
食べ比べのサイトも発見。
いつか自分も食べ比べて、好みの味を見つけたいと思っていたところ、今回、その念願が叶い食べ比べをしてみようと思う。
川根の茶羊羹5種を食べ比べ
まずは購入できる店舗をピックアップ。
異なる茶羊羹を販売しているお店は、全部で5店舗だった。
川根本町は縦に長いので、北から順に紹介していく。
また、3つほど友人にも食べてもらい感想をいただいたので、友人評として簡単に記載する。
①杉本屋の茶羊羹
杉本屋は大井川鐵道の千頭駅前にある。
こちらの茶羊羹は、緑茶ではなく抹茶を使用。
かなり柔らかめで、商品の受け取ると同時にその柔らかさが分かるほどだ。
千頭駅から南下したところにある澤本園でも購入可能。富士川SAでも販売しているとのこと。
抹茶らしい濃い風味。色もまんべんなく全体が深い緑。柔らかさゆえか、なめらかで口溶けが良い。
友人評「お茶の風味がほど良い」
②光林堂の銘茶羊羹
最寄り駅は田野口駅。
お店の方曰く、茶羊羹の元祖で、大井川鐵道の開通時から製造販売しているとのこと。2代目が若い時に、大鉄の名物にと発案したのが、この茶羊羹なのだそう。
1925年(大正14年)に開業した大井川鐵道の全線開通は、1931年(昭和6年)だ。
現在は4代目が引き継ぎ、茶羊羹の誕生からもうすぐ100年に手が届く。
こちらの茶羊羹が、以前いただいたことのある茶羊羹だ。
昔はすごく甘かったとも聞く。
新茶の時期には、川根本町で栽培している新茶を使用しているのも嬉しい。
確かに甘さはしっかりあるが、くどくない。緑茶らしい風味がしっかり感じられて非常においしい。
こちらの羊羹が他店と違うところは、原材料で砂糖より白餡の方が多い点だ。くどさがないのは、ここに由来するのだろうか。
友人評「食べやすい」
お店の方のおすすめは「冷やして食べる」こと。
冷凍して食べるのも良いのだとか。
日によって異なるそうだが、平日の16時頃に行った際は完売していたので予約したほうが確実だ。
バラ売りもしているし、10個から箱入りがあり発送も可能(送料はお客負担)。
委託販売は行っていないので、お店に行くか、取り寄せにて購入して欲しい。
③甘栄堂の栗茶羊羹
光林堂から徒歩5分のところにある。
のぼりもなく目立たないため、通り過ぎてしまうので注意が必要だ。
シンプルな茶羊羹はなく、栗入りの茶羊羹のみの販売。
おそらく、栗入りで他店と差別化しているのかも。
食感は羊羹の粘度の強いものというよりかは、どちらかというと寒天のツルン?プリン?とした食感に近い気がする。
栗の素朴な甘さは程よいが、羊羹自体の甘さが強く感じられた。
④昇陽堂の茶郷
地名駅の近くで、茶畑の中にポツンとある和菓子屋。
愛嬌のあるおじいちゃんが自信を持って作っていた。
こちらの茶羊羹の特徴を伺うと「うちのは硬いよ。よそは柔らかい羊羹を作っているが、羊羹は硬いものだから」と硬さにこだわっている様子。
その言葉通り、しっかりとした硬さがフォークに伝わってくる。
生地にもお茶の粉末が見え、緑茶を使用いているのがわかるが、残念なことに後味に青臭さが残った。
後味が気になり、後日改めて食べてみた。
こちらの茶羊羹を最初に食べると、以前の嫌な風味は感じられず、おいしくいただくことができた。ただ、ほかの羊羹を食べた後、再度試食すると、やはり草っぽい青い風味を強く感じてしまった。
友人評「深蒸し茶?お茶の癖が強い」
店舗以外に茶銘館や四季の里でも購入可能とのこと。
⑤三浦製菓のお茶羊羹
唯一、島田市で営業している店舗で最寄り駅は家山駅。
筒状で、下から押し出すことで手を汚すことなく食べられるのが特徴だ。
焼き芋や柚子など、さまざまな味の羊羹も取り揃えている。
静岡駅のキヨスクや、清水区にあるドリームプラザなどのお土産売り場でも購入でき、来静歴のある方は一度は見かけたことがあるかもしれない。
鼻から緑茶の香りが抜け、しっかりとした甘さがある羊羹だ。
お茶の風味は抹茶並みに強く感じる。
こちらの店舗のみ原材料に緑茶粉末と記載されているが、粉状のお茶を使うことでこの強い風味を生み出しているのかもしれない。
(他店舗がどのようにお茶を使用しているかは未確認)
栗入りの茶羊羹は、栗の甘露煮が入っている。
甘露煮の風味も羊羹に混じっているのか、お茶羊羹とは風味も食感も異なる気がした。
【総評】 川根の茶羊羹を食べ比べて
川根のお茶を使って、抹茶味にしたり、栗入りにしたり、昔ながらの硬めの羊羹にしたりと、店舗ごとの創意工夫を感じられ、違いがあったのは面白かった。
個人的な好みは②の光林堂の茶羊羹。
緑茶の香りがしっかり感じられる、おいしい羊羹だと思う。
川根の茶羊羹は、どの店も一年を通して製造、販売しているそうだ。
光林堂しか確認できていないが、この時期は新茶で作っているそうなので、季節の味を羊羹でも味わうこともできる。
緑あふれる山あいを南下しながら、茶羊羹を求める旅も爽やかで心地よい。大鉄沿いをドライブがてら茶羊羹めぐりもおすすめだ。
ぜひ、一度食べ比べをして、好みの味を見つけてみて欲しい。
最後に、勝手ながら川根本町の方へ一つご提案。
浜松の味噌まんじゅうのように、茶羊羹のアソートを作って、大井川鐵道や道の駅などで販売してはどうだろうか。
特に新茶の季節、銘菓として売り出せば、県内外の人たちが川根に来る一つの理由になると思う。
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