大組織で働くということ
前回の記事からだいぶ期間が空いてしましました。
作業療法士という仕事の最後のテーマ、「大組織で働くということ」について書いてみようと思います。
前回、前々回の記事はこちらから
大学病院は働いている職員の数も多く、当院には看護師が約1500人、医師が非常勤を含め800人ほどいると言われています。全職員を合わせると3000人ほど在籍しています。また、病院の規模として病床数は約1000床、1日平均外来患者数2000人、約40の診療科数となっています。
リハビリテーション部で見てみると、ざっくりですがPTが40人、OTは20人、STが10人程度です。他にリハ医、リハビリ看護師、助手さんなど合わせると100人弱くらいの組織となっています。
大組織で働くことの良い点、働きにくい点について考えてみました。
福利厚生が充実している
年休はもちろん、夏休みや年末年始休暇がとれます。3日以上の連休ではシフト制で休日出勤をすることがありますが、年1〜2回程度なのでそんなに負担ではないです。他にも産休・育児休暇制度、時間休(1時間単位で1日4時間まで)や介護・看護休暇など休暇制度は充実しています。当院は学校法人のため私学共済に加入することになります。そのため私学共済の各種割引サービスが利用できます。映画館やテーマパーク、水族館の割引サービスなどがあります。医師や看護師は院内の託児所や保育所を利用できるみたいです。院内には24時間のコンビニが2箇所あったり、カフェや本屋、花屋なども利用できます。大学病院のため大学施設を利用することもできます。一番利用頻度が高いのは図書館でしょうか。院内であれば各種ジャーナルへのアクセスも自由にできます。
優秀なスタッフが多く在籍している
大組織というよりは、大学病院であることかもしれませんが、能力や向上心が高いスタッフが多く在籍しています。半数以上のセラピストが大学院を出ており、修士・博士号を取得しています(僕は出ていませんが…)。
単純に学力レベルが高いです。
勉強することのハードルが低く、勉強会や研究に関するリサーチミーティングなども積極的に行っています。
国際的な学会で発表したり、有名なジャーナルに論文をacceptされている人もいます。とても追いつけないですが、そのようなスタッフがいる環境で働けるのはとても良い環境であると言えます。
安定した給与体系
法人が定めた給与体系で給与が支給されます。
インターネットで公表されているセラピストの平均年収より、少し高い年収は頂いてるかと思います。
多くはないですが昇給もあり、在籍が長くなればなるほど給与は上がっていきますし、役職に就くと手当もつきます。
今のところ、年2回の賞与も毎年いただけており、法人の土台が安定していることが大きいと思います。
ただこれは”今のところ”であることは強調しておきます。
では一方で、働きにくい点についてはどうでしょうか。
縦割り組織
一般企業のように、部署が細かく分かれています。
各診療科、看護部、薬剤部、臨床検査部など、その中にリハビリテーション部が存在しています。実際の臨床業務では、各診療科の医師や病棟の看護師と関わる機会が多いです。
研究など何か新しい取り組みをしようと思った時に、部署内であれば所属長、私の場合は作業療法部門の長とリハ部長の承認が基本的に必要となります。他部署との関わりであれば、各診療科の長、この場合教授や主任医師の場合が多いです。また看護部であれば関連病棟の看護師長、看護部長などの承認が必要となります。このように、各部署ごとの承認が必要となるため、手続きに時間と労力がかかります。慣れ親しんだ関係性の人であればそこまで苦労はないのかもしれませんが、普段関わることのない上の立場の医師や看護師に話を通すことは、かなりの労力が必要となります。どこか一つつまづくと、それまで順調に進んでいてもまた振り出しに戻る、なんてこともあ
るかもしれませんね。
年功序列
今では成果主義、実力主義の組織も珍しくないかもしれませんが、基本的には年功序列制が現在も多く残っていることが多いのではないでしょうか。
給与体系的にも、勤続年数が長いほど昇給も上がるため、長くいるスタッフの方が役職にもなりやすいですし、報酬も多い傾向です。
当院では役職として主任・係長・所属長・部長などがありますが、それぞれ昇任試験に合格したのちに、部長から承認を受けて昇格することができます。昇任試験の受験資格は勤続年数と役職についてからの年数で規定されており、それらを満たせば試験を受けることはできます。
しかし、試験に合格したからと言ってすぐに昇格できるとは限りません。先ほども述べたように、部長の昇任が必要なのです。
基本的には、その役職に欠員がでなければ新たに役職に就くことはないです。定年であったり、退職しない限り、そのポストが空かなければ上の役職にはなれないということになります。
良くも悪くも、在籍期間が長いスタッフも多く、役職の後任争いは今後も続くのかなと思います。勤続年数だけでなく、その人の能力や実績が評価されて役職者にふさわしい人が上の立場になっていってほしいと思ってます。
将来の不安
”大組織は安定している”と思われがちですが、長期的にはどんな大企業も今の社会で安定できると断言できることはできないと思います。
病院の場合、社会に必要なインフラとしてすぐに倒産することはないかもしれませんが、超高齢化社会による医療費の増加などで年々診療報酬は下がっていますし、人口分布の変化などで地域ごとの患者数は変動があると思います。病院経営もどんどん厳しくなっていくことが予想されるのです。
それこそ先ほど書いた年功序列制がゆえに勤続年数が長いスタッフの割合が増えるほど、人件費が増加しますし、その中で経営が悪化してきた場合は医療業界でもリストラが現実的になるかもしれません。セラピストの数は年々増えてきており、一部ではもう余剰になっているとも言われています。日本はまだ高齢化社会が一定期間続くため、リハビリの需要はまだまだあると思っていますが、今よりさらに結果や質が求められていくのは確実です。セラピストとして、医療機関にせよ地域・福祉領域にせよ、今後のキャリアをどう考えるかが重要な時期にきていると思います。個人的には、セラピストとして生き残っていくためにはスペシャリストとしてのスキルを磨くか、セラピスト以外のスキルを身につけてマルチに活動していくか、どちらかを追求していく必要があると思っています。今の、安定していると思われる大組織でのんびりとしているだけでは、10年後20年後の時代の変化に追いつけずに苦しい思いをすると自戒を込めて、もっともっと精進していきたいと思っています。
以上、大組織で働くということについて述べてみました。
OT_aku