グリードたちと映司の欲望の先にあったもの
※注意 この記事には「仮面ライダーooo」の本編最終話までのネタバレが存分に含まれています
※特撮新参のオタクが勢いで書いたため、セリフの誤りや齟齬があるかと思います。 お気づきの場合はコメント欄にて教えて頂けるとありがたいです
先日仮面ライダーoooをアマプラにて全48話初完走した所感と個人的解釈です…… 拙文ですが、オーズ踏襲済の方に片手間に読んで貰えると嬉しいです。
物語の構成について
「使えるバカ」「使えるグリード」として互いの利益になるための結託から始まって、そのスタンスが最後まで揺るがなかった故に終盤で「人間対グリード」として決着をつけることになるという展開、見てて辛かったけど物語としては満点なんだよなぁ……。
よくある「対立してた2人が仲良くなってラスボスと戦う」筋書きも見せ方によっては面白くなるだろうけど、上記のように「人間対グリード」の構図を最初から最後まで一貫させたのが、終盤になるにつれ複雑になっていく対立構造を不必要に難化させることを防いでくれたのだと思う。
子どもにも伝わる「わかりやすさ」
「わかりやすさ」という点において、キャラのビジュアル(衣装)も大変良く機能していた。具体的にはメダルとグリード勢の人間態の際の衣装の色を一致させていたり……。アンクの赤くて細身のズボン、カザリのルーズな大学生っぽい黄色いジャケット、ウヴァの明るい黄緑の革ジャン、ガメルの灰色のシャツ(ニット…?)、メズールの青いブラウスとか。
グリードの人間態は個性があってとても好きだ。アンクが高いとこに登りがちだったりして所作に人外感が滲んでるところは勿論、私は勝手な思い込みでカザリは初登場時には生意気少年枠かな〜…と思ってたら飄々としたストリート系の兄ちゃんだったし、メズールは妖艶なお姉様かと思いきやJC!?!みたいな、「そう来たか!」みたいなとこも良い。
後者のメズールに関しては終盤で完全態として復活を果たしたにも関わらず、「愛を知りたい(母でありたい)」という欲望を暴走させてしまったところを見て「一人前の女性になりきれない人外」を恋に恋するような女子らしいルックスで表現してたのかなー…と。
知りたくなかった「人間未満」
終盤のグリードたちは見てて辛かった……。望まない形で復活させられてしまって運命としてオーズとは対立せざるを得ず、今度は欲深い王ではなく無欲(なようで貪欲)な青年が器になったのでより一筋縄ではいかず巡っているうちに「自分たちは貪欲なメダルの塊であり、人間のように五感を感じる術もない」ということを人の身体で得た経験の内で「劣っている」ように感じてしまうようになってしまった。特に誰よりも人間と長く接していたアンクは……。
グリードたちは皆他のどのメンツよりも自分のコアメダルを揃えて完全復活することを望みとしてせっせと人間の欲からセルメダルを生み力をつけていた。けれど「完全復活した後」に何を望むのかは誰もきっと考えていなかったんじゃないか、と思う。
欲望の先に何を求めたか
メズールが望んでいたものが「愛」で、完全復活した彼女は「人間未満のグリード」であるガメルでは自分の愛の対象にはならないと切り捨ててしまうが、ガメルにはきっとメズールしかいなかった。
物語の序盤から純真無垢だったガメルは自分の気の向くままに行動し、それがウヴァの気を立てたら凹んだし、メズールに褒められたら嬉しくて、いつだって自分を認めてくれるのがメズールだった。その恋慕が利用されようと切り捨てられようと最期まで唯一の確かな欲望として存在したのだろう。
カザリとウヴァの欲望の先に求めたものに関しては前者2人のように明確ではないが、アンクも含めグリードたちは「自分の存在を確かにするもの」が欲しかったんじゃないかと思える。
なぜならグリードたちの身体はメダルの結晶であり、自在に変位させることができる。だがそれを支える「確かなもの」がなかった。
カザリは自分がいち早く完全態になるために仲間をも裏切って行動しそれがグレーゾーンの立場にあった真木の「終末を迎える」欲望を増幅させてしまい、彼の目的に添えずに「消滅」させられて初めて自分が「都合の良いグリード」でしかなかったのだと思い知ったが、本当は「信頼」をどこかで求めていたのではないだろうか。オーズと手を組むアンクを憎む気持ちの内に、映司とアンクの間に生まれたような「信頼」に対する憧れが少なからずあったのではないか……と私は踏んでいる。
映司とアンクが欲しかったもの
アンクの欲望について考える前に映司の欲望について触れておこうと思う。
映司は「明日のパンツと少しの小銭」があれば良いというセリフに象徴されるように一見無欲な青年だがのほほんとした出で立ちとは裏腹に、物心ついた頃から実家で目にしてきた私利私欲に塗れた政治の内情にうんざりしてしまい、放浪していた先の国で内戦に巻き込まれた子どもを助けられず自分だけ家のバックアップで助かった、その出来事が映司の欲望に蓋をしてしまった……のが大筋だと思うのだが、物語本編を一周したばかりではまだそのあたりの理解が不鮮明だ。
映司の本来の欲望は「(誰かを救うための)力が欲しい」というスケールの大きいものだったが、それをトラウマになった一件以降は「自分の手の届く範囲で人を助けたい」(後で死ぬほど後悔するから)という方向に縮小させてしまい、その空いた隙がオーズの器に選ばれてしまったのと、その縮小の仕方故に自分に対する欲を喪失してしまった(自己犠牲という方に進んでしまった)……という考え方で良いのだろうか。 解釈に正解も不正解もないけれど、ここの捉え方で作品の解像度が違ってくるように思えるから不安……。
映司はアンクと出会いオーズの力を手にした、この場面で映司が現実味のない物事に巻き込まれているにも関わらずどこか嬉しそうなのは本来求めていた「力」が図らずも手に入ったからなのでは、と今になってみると思う。
先に述べた「互いの利益になるための結託」の大元は映司にとっては「刑事さんを助けるため」、アンクにとっては「自分が完全復活するためのメダルを集めるため」だった。
その欲望の先にあったのが「力を得るため」「命を得るため」で、映司はその「力を得るため」にグリードに近づきすぎた結果一時的にグリードになってしまったし、アンクは「命を得たい」という欲望を持ってしまったがために結果的に真木を裏切りオーズに寝返るという形になり、メダルを削がれグリードとしては瀕死の状態で最終決戦に臨んで、最後の力をオーズにコアメダルは砕けてしまう……。
浜辺で映司とアンクが人間態でもグリード態でも殴りぶつかり合いをする場面が脳裏に熱く焼き付いているが、この取っ組み合いを始める最初にアンクが右腕で攻撃し、それを映司がグリード態に変化させた左腕で受け流す時点でもう胸にせまるものがある。
この戦闘中に上記の「力を得る」という欲望がアンクとの出会いの中で満たされてたということに映司が気付いて「ありがとう」と伝える、その言葉がアンクの中で映司にとどめを刺す際のストッパーとなった。
それに対して映司との本心をぶつけ合った戦いの後に自身の「命を得たい」という欲望は、泉信吾の身体を借りて映司、比奈たちと過ごした日常の中で満たされていたということにアンクは気づき、駆けつけた比奈にグリード本体としては衰弱しきっているのにも関わらず、信吾が比奈に向けるのと同じ柔らかな笑みを向けていた……(泣いちゃうでしょこんなの)
そして映司からアンクへの「ありがとう」に対する言葉が、完全にグリードと化した真木との戦いの後に告げた「(お前と出会ったことは俺にとって)得だった」……というのが個人の見解だ。
映司とアンクは出会わなければ相対する存在として衝突することもなかったけれど、出会わなければ映司は自分の真の欲望に蓋をしたまま人間として空虚な人生を送り、アンクはグリードとして完全復活できたとしてもその先に自身の本当に求めるものを見つけられない、気づけないまま力を持て余し暴走していたかもしれない。
「要らない持たない夢も見ない フリーな状態…それもいいけど」これはオープニングのAnything Goes!の歌い出しだが、このことを形容しているのではないかと思う。
私は2010年にリアルタイムで見れたわけではないけれど、毎週オープニングを聞いていた視聴者にとってはより響きのある歌で、最終話の中盤でアレンジされたこの曲を聞いたらもう号泣必至なのではないんじゃないか…と思うなどした。
以上がグリードたちと映司の欲望の先にあったものに関する個人の見解と感想でした。 大分長くなってしまいましたがここまで読んでくださった方がいたらありがとうございます。
https://mobile.twitter.com/yomo_nitiasa (弊アカウント)
https://www.kamen-rider-official.com/riders/12 (「仮面ライダーooo」公式サイト)
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