小説 砂の女

安部公房著

砂や汗の描写が生々しく、自分の身体にまで砂が纏わりついてくるようや気がした。
この小説の凄さはその見事なまでの情景描写だけではない。狂った世界に飲み込まれ、足掻き、犯されていく男の精神構造を恐いくらい現実的なものとして描いている。
理不尽で、無秩序な世界に自分も足を踏み入れてしまったかのような錯覚に陥る。
粘り気のある文章でじんわり不快になるが、まさに砂に飲まれるようでもページをめくる手が止まらなかった。

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