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【コラム】性被害を受けている時に被害者の脳で何が起こっているのか? 抵抗できない理由は医学的に証明できる!

性犯罪に関して「被害者は抵抗できなかったのか?」と被害者の落ち度を責めたり、「被害者の言っていることは一貫性がないから被害にあったのは嘘だ」といった加害者の肩を持つ風習が日本では強い。では実際、性犯罪にあうと人間の身体はどのような反応を起こすのかを医学的視点を持って解説していきます。

性被害にあうと副交感神経が優位になる

交感神経と副交感神経という2種類の自律神経がバランスを取り合っていくことで、私たち人間は生命活動を保つことができています。2つの神経は真逆の作用がります。

一見すると性被害に遭っている時、被害者は交感神経が働き、加害者に抵抗しようとするイメージがあるかもしれませんが、実は副交感神経が優位に働いているのです。

被害者が抵抗するのはそもそも不可能

サバンナの弱肉強食の世界で、肉食動物に今にもトドメを刺されそうな草食動物が凍り付いて動けなくなっている場面を見たことがある人は多いのではないでしょうか?

副交換神経には大きく分けて腹側迷走神経系と背側迷走神経系に分けられます。
一般的にリラックスなどの代表的な副交感神経の働きとしてよく知られているのは腹側迷走神経系の方になりますが、強すぎる恐怖を感じる時は背側迷走神経系が優位に働きます。

この背側迷走神経系が働くと自分の意思とは無関係に意識を現実から遠のかせようとする凍結(フリーズ)や解離といった状態となり、身体を思うように動かせなくなります。肉食動物に食べられる寸前の草食動物がまさにその状況です。

被害者は本当に怖くて嫌だからこそ抵抗できないことは医学的にちゃんと証明がつきます。「本当に嫌で怖かったら抵抗できるでしょ」という世間の意見は被害者に対する無理解な言動にしかすぎないのです。

被害者が一貫性のない話をするのは生理的なこと

性暴力被害者支援の現場にいると、スタッフがこんなことをよく言っています。「なんか被害にあったとか言いながら毎回話すこと違うし、嘘なんじゃないの?!」
そして性犯罪をめぐる裁判でも「被害に関する一貫性のない供述」であることを弁護人に指摘され、多くの裁判で無罪判決となってしまっているのが現実です。

知り合いの検察官から聞いた話、刑事裁判では弁護士たちは加害者の弁護につきたがる傾向があるとか、、、刑事弁護のジャーナルに載っている無罪判決を勝ち取った事例の半数近くが性犯罪だそうです。

しかし、被害者が一貫性のない話をしてしまうのは人間の脳の構造上、仕方のないことです。

アメリカのFBIはトラウマが脳に及ぼす影響を熟知しているため、性犯罪のヒアリングを被害者に行う際は精神医学に精通した医療職者と一緒に行うのが普通のようです。

トラウマ体験が脳に記憶化される過程


災害や犯罪など、強すぎるストレスを与える体験をトラウマ体験と言い、性犯罪はトラウマ体験に当たります。

日常の物事が記憶として残る時、脳の中にある海馬が時系列に何が起こったか正しく記憶化されるように働いてくれます。この海馬はとてもストレスに弱く、トラウマ体験が生じるとシステムダウンし、上手く機能しなくなってしまうという弱点もあるのです。

そして、トラウマ体験が生じると逆に賦活化してしまうのが扁桃体になります。扁桃体は恐怖や怒りなどの強い情動を記憶する働きがあり、性犯罪にあうと大暴走します。

そのため、被害者は断片的な場面とその時抱いた恐怖や怒りの感情は覚えているのに、時系列に何が起こったのかわからず、説明ができない状況に陥ってしまうのです。被害にあった事実を信じてもらえず、泣き寝入りしている辛い現状があります。


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