Teal×B Corpオシンテックの働き方って?~B Corp Dialogue(ワーカー編)~書き起こし
小田一枝と申します。私の肩書は「番頭」※です。お風呂屋さんの番台ではないですよ(笑) ※肩書の理由は後述
会社がやっている事業は大きく2つあって、1つが環境や人権の問題に関する国際データのウェブツールRuleWatcherの運営、もう一つは、そういう世界動向の読み解きを企業活動などに活かしてもらうための社会人向け教育です。
ユネスコの人工知能の研究機関から世界の倫理的な人工知能の使い方として、グローバルトップ100に選んでもらったりとか、ついこないだ発表になったんですが、国連の「情報社会世界サミットアワード」というのもいただいて、来月チリの授賞式に出席してきます。
と、こんなことを言うとすごそうですけど、そうでもないです(笑)
変わった会社の変わった組織図
うちはすごく変わった働き方でこれがうちの組織図です。
丸いんですよ。普通は社長をトップにした三角じゃないですか。
つまり、ヒエラルキーがないんですね。
あるのは「役割(ロール)」なんです。例えば私はルールウォッチャーの運営もやるし、それから講座の講師もやるし、営業的なものもやるし、会計もやります。私にはいくつもの役割があるんですよ。
そんなふうにして他のスタッフもいくつもの役割を持っているんですね。例えば、このブランドと言う丸印の中には私の名前が入っていて、オペレーションのところにも私の名前が入っています。
うちの会社はすごくたくさんメンバーがいるわけじゃないんですが、それぞれの役割を持っていて、この丸印の中にも複数の人がいるみたいな「多対多」の関係の変わった構造で運営しています。
これの何が良いかと言うと、例えば「このセクションって、もう役目が終わったんじゃない?」となれば、簡単に潰せるんですね。でもこれって普通の会社でやろうと思ったら、ただのリストラになるじゃないですか。人も配置転換しなきゃいけなくなるでしょう?でも、それぞれ複数のロールを持っているとそういうことが簡単にできるんですね。
指示命令関係がないんですね。仕事の「お願い」はしますし、タスクの管理はチームでやってますが。それと、評価制度がないんです。誰かを評価してコントロールする事はしないし、私自身もされない。それでもうまく回ってます。
バーチャルオフィスならではの工夫
コロナの前からバーチャルで仕事をしていて、見た通りの有様で、私のバーチャル背景の向こう側は台所です(笑)。
右側の写真はバーチャルオフィスなんですけれども、バーチャル上のすぐ近くで誰かが働いている事は認識しているし、用事があればここで声をかけることができます。このオフィスツール自体がタイムキーパーになっていて、ログインすると勝手に打刻が始まります。誰が何の仕事についているのか何分間従事していたのか、後から調べることもできます。
うちの会社のルールはそんなにいっぱいないんですが、「雑談してからじゃないとミーティングを始めない」というのが数少ないルールのうちの1つです。
どんな雑談かというと、さっき食べたものみたいな簡単な話だったり、結構深い家族の話だったり、そのとき思い浮かんでいることを短くしゃべって次の人に回すんですね。ミーティングの半分が雑談で終わると言うのこともあります。でもこれがいいんですよ。ほんとに仲良くなるし、その人となりがわかる安心感がある。「こういう話をしていいんだ」という空気感が結構大事。
コロナになって、みんながバーチャルで働き始めた後、直に顔を合わせないことの問題点で「雑談が大事だった」というのがよく出てきましたけど、私たちは創業時からこのスタイルで仕事をしているので、このことはもともとわかっていたことでもありました。
履歴書を取ったことがない
あと特徴的なところはもう一つ。オシンテックでは、履歴書を取ったことがないんです。だから誰の履歴書も見たことがない。
雇用関係で何らかの書類を出さなければいけない事はあるんですが、履歴書自体は取ったことがないので、何年にどこそこ大学卒、と言うような書類は1つも取ったことがありません。
やらなくて本当に良かったなぁ、と思っているのは、履歴書ってみんないいことを書くんですよ。採用されたいから。そういうことを書いて出しちゃうと、履歴書を読んだ相手をがっかりさせられないので120%の自分から出発しちゃう。でも、人間なんだから80%とか60%の日だってあるじゃないですか。それなのに、なるべく100近辺で行かなきゃ、というふうになる。これが社会の苦痛の根っこなんじゃないかな、と言う仮説を立てています。
勝手に生まれる「へんな仕事」の面白さ
変な仕事が勝手に生まれるというのもあって、例えば「うちのサービスを使ったディベート大会をやりたい」と言うメンバーが居て、だったら留学を目指す高校生が海外でちゃんと自分の意見を言えるようになろう!という目的にしてやってみようっていうのがもうすぐ実行に移るんですけどね。こういう自然発生の企画がいっぱいあるんです。
去年実現したものでも面白いのがありました。「社会人講座の受講生の人たちと一緒に山の上に行ってお焚き上げをやりたい」っていう発案なんですね。「お焚き上げ」ってなんやねん、って思うでしょ。
自分のこだわりを紙に書いて、神社なんかのお焚き上げみたいに火にくべるっていう企画なんですね。これがなかなかに深くて、「人々の規制概念にはどんなものがあるのか」「私たちはそれをどう突き崩していけるのか」「社会はどうあるべきなのか」なんていうことがいろんなことが出てくる。
なにそれ?と言うような出発点なのに、結構いいところに着地したりするんですね。
もうすぐ最終回を迎えますが、毎月発行のうちのメルマガの1番下まで読むとちっちゃい小説がついてるんです。「あいうえお小説」って言う。
「あれは或る昼下がりのことであった。」「いまさっき食べた定食の名前が思い出せず・・・」って、連載の冒頭が五十音順になってるんですね。
これも突然「あいうえお小説」を書くって言うことを広報が言い始めて、あれは或る昼下がりのことであった、って続きも決めないままいきなり書いちゃった。あ、い、う、えまでなんとなく進んでしまい「お」まできたときに、オシンテックの会社のキャラクター「オシンちゃん」を登場させる連載小説にしよう、っとなって、どんどんいろんな登場人物が出てきて「インテリジェンスのことが分かるサスペンス風の小説」になっていきました。
そういう仕事だかなんだかわからないとこから始まっても、イイカンジにまとまったりするんですね。
みんなの「納得解」と意思決定
オシンテックの経営のやり方の独特な部分はまだあって、「衆知を集めて一人で決める」っていうのがあるんです。これって民主主義の基本に似てるなって思います。
民主主義って多数決と誤解している人がすごく多いんですけど、そんなわけない。それだと多数派の意見しか通らないですもんね。
それよりも、責任を持って決めた「その人の解」というのがあって、そこに対して周りの「納得が集まってくる」というのがすごく大事だと思います。世の中だって誰かが決めながら進んでいってるわけですけど、そこに納得感が足りないからいろんな問題がでちゃう。「説得」じゃなくて「納得」です。だから、納得感が出てくるまでちゃんと対話がなされているかどうか、とか、その対話の場が存在していたのかどうかとか、対話の場に参加できていたのかどうか、みたいなことが大事なんだろうと思うんですね。
アドバイザリーボードというの持っていて、それで起案者が起案する。そこで受けるのはアドバイスだけなんです。そこで反対されようがなんだろうが、ただのアドバイスだから無視できる。でも衆知は集める。最後は直感に従って、よし行こうと決める。誰かが「山の上でお焚き上げイベントをやる」と言ったらば、まずそれを起案するわけです。
で、このやり方について創業当時に「そんなやり方してたら会社が潰れるよ」って言われたんです。そうですよね、決済権限を全員が持っているなんてクレイジーに聞こえますから。
安心して失敗できる場が少ないから
いろんな発案には失敗もある。だけどいいじゃないですかそれで。失敗の経験を安心してできる場所が足りない。それをすごく思います。これは評価制度がないということと密接です。
例えば個人でなくてもチーム単位の評価制度が入っていたとすると、チーム単位でボーナスがそこで決まったりして、自分が誰かの足を引っ張ってはいけないという気持ちになりますよね。恨みを買いたくないと言う心理があるじゃないですか。そうするとチャレンジできないんですよ。
「いいじゃないか。失敗しても」と仮に社長が言ったって、なかなか日本人のメンタリティーはそんなに簡単じゃない。
ただいろんな向き不向きがあって、組織の中できっちりと役割が決まっていて指示・命令がはっきりしていて、自分の範囲をこなして報告をして評価をされる方が落ち着くっていう人もいっぱいいるはずなんです。だけど、うちはこういうやり方を入れたのは、そうじゃ嫌だって言う人たちが集まって欲しいっていうのもあって。そういう人たちの居場所みたいな。だから責任が明確で上下なってないのはおかしいと言って辞めていた人もいます。
カルチャーフィットが大事
こういう文化でやってるので、一番大事なのはカルチャーフィット。
このことをわかっていただくためにも、オシンテックは会社の文化に関するガイドブックを公開しています。
この内容も固定ではなくて、メンバーで点検しながら運用しています。
※ 冒頭の肩書の理由
CEO(夫)を若旦那、自分を番頭とギャグで言っているうちに肩書になりました。めずらしい肩書なので、名刺を見せると一発で覚えていただけるというメリットがあります(笑)。
※B Corpとは?
主に「社会的・環境的活動」「説明責任」「透明性」の観点から企業に与えられる米国発の国際的な認証制度で、24年3月現在、世界中で8000社以上が取得している。日本では40社。
※B Corp Dialogueとは?
3月はB Corpを推進する月間として定められており、各地・オンラインでイベントが開かれています。オシンテックも、B Corpな働き方をテーマにオンラインでお話しさせていただきました。その文字起こしが今回のnoteです✍