第12回(最終回)「あなたの意見は何ですか」
クリティカルリーダーのかずえもんです。前回のクリティカル・リーディングは「記事に反論してみる」ということを行いました。今回は、記事をもとに意見を述べてみることでこのシリーズの最終回とします。
共感・違和感・事例をあげてみよう
取りあげる題材は、「"男らしさ"がもたらす苦しさ」です。
ジェンダーに関する意見は多くの人が持っていらっしゃるのではないでしょうか。ぜひ読みながら「共感できるところ」「違和感をおぼえるところ」「あたまに浮かんでくる事例」を書き出してみてください。
引用元:西日本新聞(2022/11/27)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1020128/
共感と違和感、そして事例は浮かびましたか?
意見を言うなら、まず共感から
相手に意見を言う場合のひとつのコツは、「共感できる部分から言う」ことです(とくに反論の場合)。
私がこの社説で共感できる部分を挙げてみます。
日本社会には「男らしさ」を求める意識が根強くある。
固定観念に生きづらさを感じる人たちがいることに、ジェンダー(社会的性差)の問題として目が向けられるようになった。
性別を問わずその人らしさを重視するジェンダー平等は国際社会の共通認識である。男性が抱える問題にも向き合うべきだ。
さまざまな調査で、愚痴を聞いてくれる人がいない、孤独だと感じる、と答える男性は女性より多い。
性別にとらわれることによる弊害をなくし、寛容な社会をつくりたい。
事例を加えてみよう
上記の共感にまつわる事例があったら、それを書き出してみます。
私の場合だと次のようなものが思い浮かびます。
中学生の息子に「結婚したら専業主夫になるイメージある?」ときいたら「ない」と答えた。パートナーが家庭にいることはイメージできるが、自分が職業を持たずに家庭にいるイメージはないのだそうだ。
違和感と理由を整理してみよう
次に、違和感を覚えた箇所を抜き出し、その理由を記述してみます。この違和感こそが主張の核となります。
この引用の中には、①高い自殺率、②パートナーによる暴力加害者の大半が男性、③介護に従事する男性の増加の三つが挙げられています。
このうち、①③については、ジェンダーとの関りのある記述ですが、②については、必ずしも男らしさというプレッシャーによるものと言えるのでしょうか。
この社説は、次のように締めくくられています。
意識の変革を進めるべきだとするこの社説。仮に、パートナーに対する暴力の件と、「男らしさ」についての根拠がなかったとしたなら、認知のバイアスにつながるのではないでしょうか。
文章にまとめてみよう
共感する部分、事例、違和感、その理由をひとつながりの「意見」の形にしてまとめてみます。
時代は、性別を問わずその人らしさを重視する、というジェンダー平等のステージに入っています。その流れで日本でも「男らしさ」「女らしさ」を明言する人は減ってきましたが、言外には男らしさを求める風潮がいまだに残っていると感じます。
中学二年生になる次男に「結婚したら専業主夫になるイメージある?」ときいてみますと、「ない」と即答しました。パートナーが家庭にいることはイメージできるが、自分が職業を持たずに家庭にいるイメージはないと。2008年生まれの彼ですら、そうした役割を認識していることに、その風潮の根強さを感じます。
さて、この社説では、①高い自殺率、②パートナーによる暴力加害者の大半が男性、③介護に従事する男性の増加の三つが挙げて男性の生きづらさを説明しています。①③については、ジェンダーとの関りのある記述ですが、②については、必ずしも男らしさからくるプレッシャーと言えるのでしょうか。
根拠が明示されていないので何とも言えませんが、仮に、パートナーに対する暴力の件と、「男らしさ」についての関連を根拠づけるものがなかったとしたなら、認知のバイアスにつながるのではないでしょうか。
「意識の変革を進めるべきだ」という結論部はとても大切だと思っています。暗黙のプレッシャーから弱音を吐けずに苦しんでいる男性を救うためにも、安易な認知バイアスに繋がる表現は謹んで行く必要があると考えます。
意見と人格の切り離し
日本人が意見を言うにあたって最も難しいのが「意見と人格と切り離すこと」だと言われています。
ついやってしまいがちなことを下に列挙してみましょう。
議論の相手の人格についてとやかく言う
相手の主張がよこしまな動機に基づくものだと否定する
本人の行動と主張の整合がとれていない(言っていることとやっていることが違う)と否定する
本人の過去の発言と今回の主張がズレたと否定する
これらの話を意見に混ぜてしまうと、本来言いたかったことを見失いがち。建設的な展開にならないので注意しましょう。
「クリティカル・リーディング」は、「批判的に読む」ことです。これは非難することではなく、できるだけ客観的に、そしてあなた自身の軸で文章を読むことを指しています。こうした姿勢は議論などにも共通し、建設的に他者と物事をすすめる上での基礎になります。
日本人に苦手とされる「意見をいうこと」。お相手を目の前にして緊張するならば、まずは文字上で客観的に、自分軸で意見をまとめる訓練をしてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
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