大島薫初の小説『不道徳』 #32/32
抜けるように青く晴れた空に、入道雲が浮いている。あれからまた、数ヵ月のときが経った。
「え! じゃあ、あんときの舞ちゃんの相手って、陸だったの?」
待機室のベランダの欄干に背中をもたれかからせ、携帯に向かって拓海が素っ頓狂な声を上げる。
「うん、私は陸くんが男性が好きなの、本人から教えられてたんだ……だから、あのとき拓海さんに事情はいえなくて……」
「で、あいつ、本当に会社にも来てないの?」
「ちょうど、拓海さんが陸くんに最後に会った日からだよ。もう会社では辞職扱いになっ