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夕暮れが不安でなくなる方法を紹介しないで。



僕がもし
「夕暮れが不安だ」って言っても
夕暮れが不安でなくなる方法を紹介しないで

「大丈夫」も言わないで

不安をなくそうとしないで
夕暮れがどれほど美しいかも言わないで

僕は夕暮れの何が不安なのか
説明できない

「説明できないことは不安に思わなくていいんだよ」とか
「不安と戦ってるあなたは頑張っているね」とか
そんな正しいこと言わないで

僕は間違っているし
僕は自分が間違っていることについて
ずっと考えている



形のない不安は
空気中の水分みたいに
絶えず 理由もなく湧き続けていて
身の周りに渦をまいている

それらは風が樹氷を作るみたいに
何かの対象を見つけては
取り憑いて 形を成して 目の前を塞ぐ

ただそういう現象があるという
僕はそれだけのことを
認めてもらいたくて喚いてる

不安があるって
僕はずっと
ただそれを伝えたいだけの馬鹿なんだ

どうしようもなく不安を感じ続ける器官があって
不安と手を繋いで生きていくしかないということを

なくす前提でなく話して
僕が 生きていく前提で
ただ雪が止むのを待つみたいに



別の日に「夕暮れは不安ですか?」って訊かれたら
僕は「今日の夕暮れは不安じゃない」って言うかもしれない

その時は謝るよ
きっと謝る


#詩 #のようなもの