noteはじめました
押江隆です。地域臨床心理学や,グループ・アプローチ,パーソン・センタード・セラピー(PCT)の研究をしている,大学教員です。
noteには主に地域臨床心理学,特にパーソンセンタード・コミュニティアプローチ(Person-Centered Community Approach: PCCA)と僕が呼んでいるものを中心に書いてみようと思います。
これまでインターネット上ではあまり真面目な話をしないようにしてきた(ネット上ぐらいしょーもない話ばかりしてたいじゃないですか)んですが,訳あって書くことにしました。
その訳というのは,公認心理師制度が登場したことなんですね。臨床心理士の場合,その専門業務は
臨床心理査定
臨床心理面接
臨床心理的地域援助
上記1.〜3.に関する調査・研究
の4点で,地域援助が銘打たれているのですが,公認心理師の場合は
心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
の4点とされており,「地域」というトピックがすっぽり抜け落ちてしまっているのですよ。
もちろんこのうち4.はもともと地域援助のトピックですし,また3.にあるように公認心理師は他職種との連携を強調していますから,地域臨床がこれまで伝えようとしてきたエッセンスは公認心理師制度にも含まれます。しかし,「地域」という,いい意味であいまいな用語が抜けてしまったことから,公認心理師の養成カリキュラムでは地域臨床ならではのおもしろさが伝えづらくなってしまうんじゃないかなあ,という懸念を持っています。
押江はこれまで「地域臨床研究会」なるものを立ち上げて,地域の人々と一緒に支援の仕組みをつくる,ということを実践したり考えたりしてきました。そして,自分の地域臨床へのアプローチをPCCAと呼んできました。PCCAによって,不登校や発達障害の子どものための居場所づくりをしたり,学生相談のグループを立ち上げたり,働く人のための相談の場を地域につくったりしてきました。
僕にとって地域臨床は,豊かな土壌を育む大切な実践です。僕は地域の人々に育ててもらい,臨床家として成長してきたように思います。ところがこのような時代の趨勢もあり,最近ではこのような実践を授業で取り上げることはしなくなってきました。また,学生も忙しくなってしまい,自分で活動してみようという時間やゆとりが極端に減っているんですよね。それよりは,現場に就職してから役に立つような連携等に関するトピックを伝えることが増えてきたように思います。時間がないから仕方がないとはいえ,キビしい……。
ただ,地域臨床はやっぱりおもしろいです。こういう活動の話を聞きたいと言ってくださる学生さんはいまでもいますし,何より心理士/師以外の方から,このような活動についてもっと知りたいと言われることも増えてきました。
もともと自分は心理臨床のことは論文に書けばいいじゃないか,そこで議論することが大事なんだから,と思っていたところがありました。しかし,地域臨床には論文に書きようのないノウハウのようなものもたくさんあります。また,何より普段学術論文に触れない方にも,自分の考えていることを届けたいという思いがあり,noteを始めることにした次第です。
PCCAだけでなく,個人臨床(PCT)のことも書くかもしれません。というのも,僕は個人臨床も含めて,すべては地域臨床だと考えているところがあるんですね。切り離すのは難しいです。
なかなか時間が取れず,不定期更新になると思いますが,もしよければフォローしてくださいということで。次回,まずは自分の体験談をふまえて「心理臨床の本質は結局のところ人と人との出会いである」という話を書いてみたいと思います。
ではでは,押江隆のnote,はじまりはじまり。