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【読了】 #6 『ヤンキーと地元』

『ヤンキーと地元』

著:打越正行


社会学者がヤンキーのパシリになり、沖縄の若者の現実をとなりから描いた本。

この本はテレビ「激レアさんを連れてきた」で最初に知った。
社会学の参与観察として20年間、沖縄の暴走族のパシリをしていた人として紹介されていて、そんな人の本を読んでみたいと思い続けていたら、最近その人の本が文庫本になっていたので、つい買ってしまった。

この本には実際に足を運び、一緒に生活したからこそわかる沖縄の社会の構造が書かれている。
そこにはしーじゃ(先輩)とうっとぅ(後輩)という強固な縦の人間関係が存在する。それによって若者が暴走族にならざるを得ない環境があり、それをベースにした世間に出てからも続く人間関係がある。沖縄の若者達がその人間関係を駆使しつつ、それに翻弄されている現実が鮮明に描かれている。

本文では、主人公となる人物ごとに章が立てられていて、実際の著者と若者の会話も多く引用されている。友達とのやり取りのような実際の方言の会話が書かれており、ただの解説や研究ではない温度のある記録としての若者の生活を読むことができる。

個人的に面白かったのはあとがきで、著者が一般的な社会学の視点も踏まえて、あらためて自身の参与観察を振り返っている。
その中で、「使える」「使えない」の軸と、「内部関係者」「部外者」の軸の2軸で関わり方を分析していた。通説では「使える部外者」が観察の立場としては理想的とされてきたが、著者は自身の「パシリ」の立ち位置を「使えない内部関係者」として位置付けている。

「使えないにも関わらず内部関係者である」という状態は一見成り立たないものだが、沖縄の社会にはそう言った人間が確かに存在し、重宝されているということを調査の過程で発見していた。「価値を提供し、その代わりに教えてもらう」というその場の貸し借りでは終わらない、長期的で相互的な利害関係に巻き込まれる「使えない内部関係者」になっていく過程を記録し、記述することが「魅力的なエスノグラフィー」には必要なはずだと述べている。

「一つの社会学の調査報告が、どうしてここまで本として読んで面白いのか」という事の種明かしをされた気分になり、本文を読んで感じる面白さとは別の、一種のスッキリ感と興奮を覚えた。

いわゆる「社会学の本」以上にリアリティの詰まった、濃い一冊だと思いました。

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おせとん
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